4.創意工夫
ただ今、順番に改稿中です。すみません。
「ギャルルオオオオオ──ッ!」
「グルルルウゥゥゥ……ッ」
「キエエエェェ──!」
うわあぁ…
呼応してくれたのは、愛らしい赤ん坊なわたしに対してずいぶんと大人げない対応の強面ばかりだった。
下腹に響く威嚇は凄まじい地響きを伴い、大気が震える。
あ~…うん。お父様がドラゴンに変身した時は仰天したけども。これはないでしょう…。
わたし達を取り巻く沢山のドラゴン達。彼らは、ついさっきまで人だった者達だ。
お父様の変身を皮切りに、わらわらと半数ほどがドラゴン化したのだ。
いやまあ…凄みが増したのはわかるけども。少しお手軽過ぎませんかね?
雄壮な姿の巨体がいくつも空を舞うのは、確かに迫力満点だった。直前まで自分のアホさ加減に気持ちがささくれていたこともあり、ちょっと感動もした。
でも、今の喧しい咆哮で我に返ったよ。
怖さはそれほど感じない。そもそも夢なのだから、わたしが慣れるのは当たり前なのだろう。
わたしはつくづくと、ドラゴンになったお父様を眺めた。
お父様の空を駆る速度は、とにかく速い。全く他のドラゴンの追随を許さなかった。
明らかに、格が違う。
へぇ~、攻撃は当たらないと意味がない。ってやつだよね?スピードが大事って本当みたい。
何やら、自分のことみたいに鼻が高くなってくる。なんというか…これは多分、創意工夫がされているように思うんだよ。
他のドラゴン達は、纏った逆巻く風を翼でコントロールし、体を押し上げているように見える。
でも、お父様はそれだけじゃないんだよね…。
ちらっと見ただけでも分かる、できるだけ薄く意識して伸ばされた体。
身に纏った気流には方向性があるようで、且つ、大きな翼で風を掴み勢いよく押し出すことで、体を滑るように疾空させている。
方向転換だってそう。
お父様が体を捻り滑らかに曲がっても、それはつるりと抵抗なく、速度は一切落ちない。
対して追ってくるドラゴン達は、いちいち翼で体を傾けたり風を弱めたり。極端な場合、一度スピードを緩めないとバランスが取れないらしいあらさまなのだ。
その滞空する瞬間は、はっきり言って隙だらけ。お父様が、それを見逃すはずもない。
〈若僧が…私を相手取るには1000年早いぞ…!〉
ドシャアアアァァァ!!
吼えながら吐き出されたのは、広範囲におよぶ猛烈な嵐。
確かこれは、真空刃嵐魔法と言っていたと思う。
大きな体を揺さぶられ翼の自由を奪われ、暴風に気を取られるドラゴン達は、表情はよくわからないが必死さが滲んでいた。
「ギャアアァァァ!」
わっ、血が吹き出した!?
驚くわたしの目の前で、嵐に捕まっていたドラゴン達がいきなり血をまき散らした。
驚愕しながらよくよく見れば、いつの間にか柔らかそうな腹部や脇がザックリ裂けている。
…うわあ…あれは痛い。お父様も意外と容赦ないわぁ…。
わたしの目にも深手に見える。何体かはきりもみしながら、たまらず落下して行った。
──いずれも、ほんの些細なことなのだと思う。
飛ぶにもちょっとした工夫をするとか。気をそらせて弱いところを狙うとか。
そうした微妙なことが、戦場ではとても大きいのだろう。
…ふうん…センスというか。頭は使いようなのは、何事に関しても同じということなのね…。
意識のあり方か経験か、単純に生きてきた年月なのか。
わたしにはわからない。
ただ、実際どれほどの差があるのかは、歴然だ。
創意工夫を得意とする日本人としては、そんなお父様がとても誇らしかった。
ふと、お父様の頭が、座るわたしごとツイと下げられる。
おや?と様子をうかがえば、大きな口元へ向かって、何かがすごい勢いで集まってくる気配が。
──え?え?なに…?
何かが起こる──そう直感した次の瞬間。
パッと意識が広がる感覚に息を飲むと同時、脳裏に〈バチン!〉と盛大な火花が散った。
──ひゃっ!
ぶわぁんぁぁあああ──ゴゴゴゴゥウウウ!
凄まじい爆発音は、そのまま猛炎に飲み込まれるよう。灼熱の息が、闇さえ焦がす勢いで放たれた。
「グギャアアァァァア!」
目に痛むその赤い絨毯は、お父様が首を傾げるだけで自在に軌道を変え、夜空を流れて行く。
行く手を阻んでいたドラゴン達が、悔しそうに雄叫びをあげ、一斉に散開した。
凄まじい熱気。
これに触れれば、ドラゴンとて大ダメージは避けられないに違いない。
──うはあ…っ!これ、ブレスだよね!?竜の吐息!…さっきのなにか集まっていく感触は、これの準備をしてたんだ!!
わたしは熱さに顔をしかめつつも、再び気分がドキワク騒ぎだした。
感じる──ほんの一瞬、気配を探ったあの時。お父様の中で、何か力強いエネルギーが動いたのを。
その力に誘われるように、辺りの何もない空間から熱が溢れだしたのは、間違いない。
これは、気?──いや。魔法があるのだから、魔力?
どう繋がったのかはわからない。だが、一度意識し出すと、その動きは手に取るように伝わって来る。
〈させん!真空刃嵐!!〉
お父様がまた魔法を放った。目標は、溜めの姿勢らしい頭を低くしたドラゴン。
あ、さっきのお父様と同じ感じ。あのドラゴンも吐息を吐くつもりなんだ!
気づいて、わたしは息を飲む。
だが、もろにお父様から魔法を喰らったそのドラゴンは、吐息をあきらめたようだ。顎から血をこぼし恨みがましい咆哮を残して、渋々高度を下げていく。
ああ…良かった。大丈夫みたい。
頭を低くするドラゴンの顎を、次々とピンポイントで狙い打ちしていくお父様。ブレスを吐く間を与えないようにしているのだろうか。
すごい…百発百中だよ。あの体勢になると、もしや回避出来なくなるのかな…。
あれだけのとてつもない威力だ。もしかしたら、溜めの時間もそれなりに必要なのかも知れない。
お父様の魔法の精度に感嘆しながら、その実、わたしの意識は巨体の中に向いていた。
だって。お父様の体の中に、何か熱いものが巡っているんだよ!気になるんだってば!
気のせいではなかった。
それが意思を持って練り上げられるように動くと、辺りの空気が化学反応を起こすかのように、脈動するのだ。
─ほら、また。
お父様の熱が渦巻くと、纏う風が震え、収縮を起こし、猛烈な勢いで解き放たれる。
もはや爆発だ。暴風が破裂し、真空の刃があり得ないスピードで飛び散る。
わたしの目では、追うことなんて到底無理。例えこれらが見えたとして、とても避けられるものではないだろう。
わたし自身の目では見えてないのに、仕様がわかるとか…。本当に、お父様となにか繋がってしまったみたい。
わたしは、お父様の頭をそっと撫でた。ひんやりして気持ち良い。
お父様が今、何を意識して、何を行おうとしているのか。そんなことまでが、いちいち理解できる。
わたしの座っているのが、お父様の頭だから?──そんなこと、あるのだろうか。
お父様は首を動かすと、離れた場所から並列して飛ぶ一体のドラゴンを、ちらと意識した。
わたしもそちらを見る。
高速で移動する視界の端で、何かが光った。
──ああ、なるほどね。
ドラゴンに股がった人が、こちらに杖を振るう姿が遠目に見える。
途端、キラキラと辺りが煌めき、突如として吹雪が荒れ狂いだした。それに覆われる前に逃げたわたし達を、鋭利すぎる氷の矢の群れが先回りして襲いかかる。
うわわわっ危なっ!ちょっと危なかったよ、今!?この氷柱、よく組み合わせ技で来るよね。氷の槍?…矢なのかな?とにかく危ないから気をつけなくちゃ。
細く視認しにくいからか、他の魔法に紛れて非常に厄介だ。しかも、凍える嵐はしつこくまとわりつく。
お父様は、飛び回りながら身を捻ってめいっぱい首を伸ばし、頭だけは嵐の外に置こうとした──ああ、わたしをかばっているのだ。
(吐息を諦め魔法に転じるとは、潔いっ!だが許さぬっ!!何よりも大切な可愛い我が子に、傷を1つでも負わせたならば、貴様らの首を1つ残らず飛ばしてやろうっ!!!この子は私が守り抜く!我が身に代えても必ずや守り抜くのだっ!!!)
───ひゃいぃ!?
わたしはひっくり返りそうになった。
お父様の怒鳴り声が、いきなり頭の中に飛び込んで来たのだ。驚きもする。
しかもお父様は、けしてしゃべってはいないというのに。
──伝わって来たのは、ひたすらに熱い心。
真っ直ぐに叩かれた鋼のように硬い、決意にも似た想い。
静かな口調でクールな無表情の下に、こんなにもたぎる感情を隠していたとは、驚愕だ。
う…わぁぁぁああああ!お父様が熱いっ!温かい通り越して熱かったよぉぉぉ!!
なぜか聞こえたお父様の内面は、びっくりするほど熱かった。
うっかり熱にあてられ赤面した頬を、わたしは慌てて両手で隠す。他にも子供っぽいドラゴンはいないか、キョロキョロしてみた。
うん。みんなおっかない顔したゴツくて大きいのばっかり。この場にお父様の子は、わたししかいないよね。
これは…お父様の気持ちが、聞こえてる?…何よりもたた大切な、かかか可愛い我が子とか、わたしのこと!?
うひゃあぁ~後からじわじわ来る、この衝撃はなんだろうか。
わたしは悶えながら、腕でグイと顔を拭った。なのに、どんどん熱を集める顔が、ゆるゆるとゆるむのを抑えきれない。
──うれしい──そう、すごくうれしいのだ。
あうう…納得したあ。さすがのわたしも、自分の気持ちを理解出来たよ。
ニマニマする顔を両手で押さえ、わたしは観念して息を吐いた。
そうだったのか。わたしは、こんな風に家族から思われたかったんだ──。
つまり、わたしの理想の父親像がこの『お父様』ということなのだろう。
化け物みたいに強くて、どんな理由であってもわたしを守り、なりふり構わず助けてくれる存在。
こうしてまとめると、わかりやすいくらいわかる──わたし、このお父様がとんでもなく大好きすぎる!
これは、あれだ。
ファザコンとかいう──ああもう、意外と良い響きじゃないの!幼い頃の純粋な自分を取り戻した気分だよ。
「えへへ…あだぅ~」
わたしはぺちょりと倒れると、お父様の頭をぎゅうと抱き締めた。
夢って、すごいんだね。本人も気づかなかった願望を叶えるのだから、夢占いが生まれるのも道理だ。
ふと、天啓のように閃いた。
まって待って!ちょっと深呼吸……。えと、それならわたしも…もしかして?
うかつにも、ゴクリと喉が鳴ってしまう。もしかして──やりたい放題、なのだろうか?
気づいてしまうと、挑戦してみたくて堪らない。夜闇の中でキラキラと吹雪く、鋭い氷の刃の舞いを見上げた。
…なんて綺麗なのだろう。これはものすごく心惹かれる光景だ。
わたしはいそいそと座り直す。もう一度、ゆっくりと深呼吸した。
なにせわたしは、酸いも甘いもそれなりに経験してきたアラサーである。ただ守られているばかりでは、落ち着かない。
いただいたら、きちんとお返しする礼儀正しいお姉さんなのだ…お姉さんなのである!
よし!
気合いを込めて、ひとまず目を瞑った。
五感のたった一つを遮断するだけでも、すっと集中できるんだよね。
耳は相変わらず凄まじい轟音や咆哮を集めはするが、取り敢えず気にしない。今は、自分の体内に意識を向けることが大事なのだ。
イメージは確か…昼と夜、だったかな…。
ヒントはたくさん貰った。
ちら。と、薄目でお父様を見やる。こうしている間にも、浅くはない傷を増やしていることだろう。
待ってて。なんとしても、やり遂げるから!
少ない元手でやりくりするのが、得意なわたしなのだよ!ふふ…創意工夫あるのみ、独身アラサーを舐めんなよ!?
何だかやる気が湧いてきた。わたしだって、やれば出来る子なのだ。
背筋をぴんとのばし、お腹の辺りを撫でる。以前は、何となくこんなものかな?程度でよく分からなかったものだが。
おお、何かある!ほんわり温かな何かが、手に感じられるよ!!うわ感動した~!
これはうまく行くかも知れない!
興奮気味の心を落ち着けつつ、それを手に取り出すイメージを持てば、ほのかに掌が温かくなった。
ふおお…行ける!ふははは、こんなに上手く行くとお姉さんワクワクしちゃうぞ!?
腕を前に伸ばし、意識してゆっくり左右に広げ──S字に半回転。
スイ、スイ、と良く伸びるスライムでも捏ねるように。手の平に気持ちを向けつつ、動きは淀みなく。
うん。高まってるような圧縮されてるような、そんな感じは確かにある。
──お父様から感じた渦巻く熱の動き。あれは、太極拳の気を練った時の感じに、ちょっと似ていたのだ。
あの講習会はたった数日だったけど、準拳士の称号をいただいてしまって恐縮したものだ。実はダイエットに良いからと誘われて、行ったみただけなんだよね。
いきなりお父様のように体内でやれと言われたら、厳しいと思う。でも、こうして手に取り出して捏ねてから、また体に戻したらどうだろう。
手応え十分。小さい赤ちゃんなわたしの手の上が、何やら輝いて見える気がする。
わたしは期待でドキドキしながら、それをソッとお腹に戻した。
途端。
はう…熱っ!?──何これ!お腹が…体が熱いっ!?
失敗の二文字が脳裏をよぎる。まずい──もしかしてこれは、間違えたのでは。
わたしはあわあわしながら、自分を抱き締める。どんどん熱はふくらみ、体は燃えるようだ。
ひぃぃっ、焦げる焦げるっ!早く…早く何とかしないと!!そうだよ、出しちゃえば!!!
とにかく放出してしまえば、楽になれるはず。思い至ったわたしは、焦るまま身体中の熱を掌に集め、発射準備のイメージを作った。
発射、発射って!?──大砲とか鉄砲とか!
あわあわしながら、焦りに震える指で鉄砲を型どり狙いを定める。
これは本当にキツい…っ!威力は出そうだけど、その前にわたしが燃えちゃうわ…っ!!
目標は遠い。しかも、互いに空飛ぶドラゴンに乗る同士。簡単には届かないだろうが、何もしないよりはマシだろう。
あう…も、指に力が入らないよ。早く楽になりたい…!
〈行けぇ……っっ!!〉
パシュッパシュッ─
朦朧としながら念じた瞬間。
ほんのかすかに、震える指先に白光が灯った。次いでフワリと楽になる。
ああ…解き放たれたのだ。ちょっと間抜けな音だったけれど、この際もう結果はどうでも良い。
わたしはくったりと、お父様の頭に体を預けた。
正直、調子に乗っていたと思う。夢とはいえ、赤ん坊設定の身の上では無謀な話だったのだろう。
人間、常識から外れるというのは、空想であってもわりと難しいものなのかも知れない。
うう、むしょうに恥ずかしくなってきた…魔法を見て、愉快になっていたのは確かなのだ。
大体、夢だと気づいたところで思ったように動けなかったなんて、ざらにある話ではないか。
一生懸命走っているのに、なかなか前に進まないとか。空を飛べそうなのに、手足をばたつかせて30センチくらいしか浮いてくれないとか。
無茶するのダメ。これ絶対。
息も絶え絶えに、わたしはちょっと本気で反省した。
◇
この世のマギアは、実はあまり多くはない。
種族によっては、得意とする属性から派生した独特のものを使うこともあるが、氷結破矢などはその最たる例だ。ちなみに、ダークエルフが良く使う。
…何が起こったのだ…。
アグロィは鋭い吹雪にまかれながら、頭上の様子に戦慄していた。
自分と良く似た魔力だった。
ふいに現れた魔力の渦は、グラノアと重なり息を飲む。いつの間に敵に乗り込まれたのかと珍しく狼狽したのだ。
だが、気づいてアグロィは面食らう。
赤子が、マギアを放ってみせた──自力で立って歩くことも出来ない、まだ小さなグラノアが。
意識していたからこそ感じ取れたのは、恐ろしく丁寧に練り込まれた魔力。チラと視界を掠めたのは、小さな小さな豆粒状のなにか。
控えめな爆発と同時に勢い良く飛び出したそれは、ドラゴンの瞳にもはっきりとは捉えられなかった。
あれは──何なのだ。白い光──何をしたと言うのだ?
なにかマギアを放ったのは、わかっている。魔力が渦を巻いていたから。
けれど、理解出来なかった。微かに白光する小さな粒を、グラノアが放ったということを、理解したくなかったのだ。
アグロィに集中していたのだろう相手は、思いがけない場所からのささやかな攻撃に気づけなかったようだ。
そのまま対処が遅れ、うっかり命中。
あのサイズであれば、さして威力はなかろうとも…動揺はずいぶん大きかったのだろう。ドラゴンから落ちる影を視認。
…はからずしも、この子の初陣となったわけか…。
術者を失った氷結刃嵐のマギアは、キラキラと闇夜に霧散して行く。
「グルオオォォーン…」
闇に墜ちて行く魔術師を見ながら、アグロィは呻きとも咆哮ともつかない声を絞り出す。そのまま、ひるがえって突撃した。
残ったあのドラゴンは、逃す訳にはいかない。確実に口を封じ──仕留めておかなければならないと判断したためだ。
高速で空を滑ることで誤魔化していたが、アグロィの巨体は震えを止められなかった。
──末恐ろしいと思う。
…成長は楽しみでもあるが、今から、しかも創作のマギアを使うなど誰が想像するだろうか。
今もまだ一才に満たないが、さらに小さな頃から見よう見真似でマギアを放とうとしていたのは、知っている。どれも失敗するも、ラミレアはそれはそれは喜んでいたものだ。
単純に、親が喜ぶ姿を見たくて、小さな子が頑張ってしまうのは自然な姿ではある。
だがグラノアは、生まれた時からこの姿なのだ。だからこそ、上手く行ったと言うことかも知れない。
「ギャアアアァァ!!」
真空刃嵐で足止めされていたドラゴンが、死角をついたアグロィの爪に貫かれた。
気づけば、空は闇色から微妙に赤紫がかってほんのり明るくなっている。知らぬ間にすっかり夜が明けてしまっていたようだ。
遥か遠くの空から、ひときわ大きなダークドラゴンがこちらへ向かって飛んで来るのを視界の端に捉える。
悠々と翼をはためかせている様子に、アグロィは小さく苦笑した。
それから旋回、敵方を見回してみれば、思った通り。気づいた者から、顔色が消えて行く。
満足そうに鼻から息を吐き、次いでこっそりと頭上の無事にホッとすると、アグロィはラミレアを出迎える準備をするのだった──。