その5
キンコンカンコーーン♪
授業終わりの合図が鳴る。
いよいよ放課後。
憂鬱な時間がやってきた。
周りに顔がないのは、
なんとなく慣れてきたさ。
元々、わたしって女子には嫌われキャラ
だったし、深いつながりなんてないんだから。
たわいない話して、おはようとか、さよなら、
じゃまたねー、って言葉で事足りる。
わたしが大事だったのは男・・・・
でも、それも今じゃみんな同じロボット。
正門に行くと、ロボットがひとつ立っていた。
わたしの、カレ。
あれがそう。
すぐに気づいたみたいで、
ねえ、お腹すいたんじゃない?
何か、食べにいこか。
ロボットの横に並んで歩く。
捕まったみたいにロボットに連行されていく。
さて、今日はどこに連れて行く気だよ?
隣にいるのは理想的な男性だった。
はずなのになんでこんな気分なんだ。
連行場所はファミレスだった。
カレがメニューを選んでる。
何やら音がする、ゴソゴソ・・・
下に目をやると、貧乏ゆすりかい。
顔がないとよく目立つわ、それ。
ねえ、これ美味しいよー、
と言ってわたしに食べさそうとする。
優しさ?のつもりか。
ありがとう、と言ってちゃんと食べる。
あー、美味しかったね。
んん?
カレの皿には汚く残った食べ物の残がい。
え、もういいんですか?
って聞くと・・・
もう、おれは食べ終わったけど。
えー、ぜんぜん残ってるし。
汚い食べ方するんだね、このロボットは。
カレが言う。
ねえ、まだ時間、大丈夫かなーーー。
よかったら、公園とか行ってみないー?
日も落ちてちょうどいい感じだと思うよー。
語尾を伸ばすような、だるっぽいしゃべり方。
出たっ!
これは悪魔の誘いだ。
わたしを狙ってる。
わたしがロボットの餌食になる。
ほんとに、こいつが学校一の男だったのか。
暗闇で見たら単なるうっとしいやつじゃん。
わたしは伏し目がちに、
あの、ごめんなさい。
今日はこれから習い事があるんです。
へぇ、習い事してるんだ?
ピアノとか、、、いや華道とかかな?
おいおい、そんなお嬢様じゃありませーーん。
ほんと、見た目だけで判断する甘いやつ。
あ、でもその点はわたしも同類だっけ。
ううん、小さい頃から空手してるんです。
今じゃ、黒帯なんですよ。
さあ、どんな顔に変わったのかな。
ちょっと見てみたかった。
でも、声でわかったけどね。
明らかに慌ててる。
えっ、そ、そうなんだ。
清楚な感じなのに、意外だね。
・・・でも、そのギャップに逆に惹かれるよ。
なるほど、あの顔でそう付け加えられたら
さらに高感度アップだわ。
さすが、だてに校内一じゃないね。
でも、今のわたしには通じないのよ、残念。
わたしは、カレにゆるーく手を振って、
薄暗くなってきた街中を家に向かった。