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その4

朝がきた。


いつものように起きて、

顔を洗って歯磨きして

制服に着替えて家を出た。


通勤、通学の人間がせわしなく歩く。

やっぱり昨日と同じで、どれも顔なし。

顔がないせいか、足の動きだけやたら目に付く。

こうしてみると歩き方もいろいろあるんだなぁ。


バス停について、順番にならぶ。

前にはロボットの整列が数名。


待っていると急に、後ろからおはよっ、

女性の声がした。


振り向くと同じ制服。


ねえ、昨日のデートどんな感じだった?

聞かせてよー。


んっと、この声は・・・・


りょうこ、だな。


うん、楽しかったよー。


首の上あたりを見ながら笑顔を作る。


いいなぁ、うらやましいなぁ。


いいか?

この状態を教えてやろうか、と

とっさに思ったけど、ここは冷静に・・・

ニコリ。



バスの後部席に座る。

見通しは最高。

立ってる人がいてもちょうどいい高さで、

スルーして見えてしまう。


顔が見えないときって人間

相手のどこを見たらいいんだろね。


んー、男なら胸かお尻なんだろうか?


女なら・・・・

やっぱ顔以外興味なし。


いくら脚が長くても、

がっしりした体型でも

結局、顔の付属品。


あー、これから何を求めて生きていこう?


なんてことを考えてたら学校到着。



わーーーーー、すごっ!


みんな制服だらけだから

さっきまでより、ロボットの迫力満点。


その中にわたしも混じっていく。

さて、これからどうなるんだ・・・

と思ってたら、学校生活は意外と違和感なし。


声でトモダチの区別は大体、つく。

つか、そもそも友達も少ないしね。

授業にも支障はない。

これも、ほとんど寝るだけだし。


問題は男だけ。


その男の顔が見えないいま、

学校の楽しみはゼロに等しい。


はぁ、ってため息ついたとき、

友達が廊下から大声で、


カレが呼んでるよーーー、だって。


廊下に出てみると、男子が数人。

体型も似てる。

ま、同世代だし当たり前か。


わたしはどれがカレかわからない。


ねえ、どうしたの?


声が聞こえるほうを向く。

こっちがカレか・・・・


他とそんな変わらないし。

わかるわけがない。

顔だけが頼りなのにさ。


今日、一緒に帰らないかな?


嬉しいお誘い、のはずなのに・・・


は、はい、わかりました。


声はうわずってしまう。

ロボットに命令されてるみたいで、つい。


もしかして、昨日のこと怒ってる?


昨日のこと・・・・


あ、あの顔を近づけたことか。

魅力的って、言葉を使って

迫ったことよね。


ううん、そんなことないですよ。


ほんとに? 

気になって昨日、なかなか寝れなくてさ。

よかった、安心したよ。


と嬉しそうな声。


つか、謝ってるのも喜んでるのも

心、あんまこもってないんだけどねー。


なんか、わたし声に敏感になったんだろうか。

かわいた声に聞こえるんだよね、それ。


でも、周りからは見えない視線を感じる。

他の子たちにこのやり取りを見られてる。

やっぱり、二人はみんなの注目の存在、

そしてわたしはそのひとり。


ここはきっちり演じないとだめ。


とびっきりのニセ笑顔を

カレのほうに向け手を振りながら、


じゃあ、帰りに正門前で待ってますねー、

と言い残して教室に戻った。


トモダチが言う。


やっぱり、かっこいいよねー。

あの優しい笑顔にとろけそうー。


笑顔、そんなもの見えてないし。


あと、あの言葉ぜんぶがなんか、うそっぽい。


顔が見えないと人間不信になるのかよ。



でも前に、携帯が動かなくなって

コールセンターに電話したことあるけど。


言われたとおりして

直りましたって答えると、


ほんとですか! よかったですねー、


って言われてあのときはちゃんと、

電話からでもその人の笑顔みたいなの

伝わった気がしたんだけどな。


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