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小樽殺人事件  作者: 健司
6/7

発見2

 フロントでのチェックインを済ませて、一樹とこずえは部屋へ案内された。こずえが言った。

 「景色が最高。すごい眺めだわ。」

 一樹は、荷物をクローゼットに押し込めながら言った。

 「気に入ったかい?良かった。」

 こずえが窓際の椅子にかけ、窓の外を見ながら言った。

 「ええ、本当にすばらしいわ。」

 一樹の方に向き直りながら続けた。

 「沼倉支局長ってどういう人なの?」

 「沼倉先輩は僕の先生なんだよ。」

 「先生?」

 「そう。僕が新聞社に入って、最初に釧路支社に配属になったのは話したよね?」

 「ええ、釧路支社の社会部が一樹さんのスタートでしょ。」

 「そう、で僕についてくれたのが当時釧路の社会部デスクだった沼倉先輩。僕に記者のイロハを教えてくれた大恩人だよ。」

 「そうだったの。」

 「仕事が終わると、いつも僕を食事に、酒に誘ってくれた。」

 「どうせご馳走になりっぱなしだったんでしょう?」

 「えっ、いや、まあ。」

 一樹が頭を掻いた。

 「でも先輩はいつも言っていたよ。書くのが好きだって。一生現場で記者として生きて行きたいって。」

 「でも今は小樽支局長なのね。」

 「ああ。でも小樽は記者が何人かいる支局だ。わざわざ先輩が出てくるほどの事件なのかな?」

 「どうかしら。それより一樹さんこのホテル地下に海のみえる大浴場があるって。ちょっと行ってみましょう。」

 「そうだね、そうしようか。」

 地下1階の大浴場は、日本海を真正面に見るすばらしいロケーションであった。一樹は、ぼんやりと湯船に浸かりながら、考えていた。

 「なぜ先輩が・・・。何があるんだこの事件。」

 大浴場をでて、すぐ前にあるマッサージチェアに腰掛けてこずえを待つ間も一樹の頭にはさっきの疑問が消えずに残っていた。気がつくとこずえの声がすぐ耳元で響いた。

 「一樹さん。」

 びっくりしてこずえを見上げると、こずえが言った。

 「やっと気づいてくれた。4回目よ。一樹さんって。」

 「ごめん、ごめん。」

 「さっきの続きまだ考えていたんでしょう。もう、せっかく休暇で来たのだから、事件のことは忘れて。楽しみましょう。」

 「そうだね。」

 二人は部屋に戻り、旅行ガイドブックを見ながら明日の計画を建てた。しばらくしてこずえが言った。

 「いけない!もう食事の時間よ。レストランに行かなくちゃ。」

 部屋の時計はまもなく7時をさすところであった。

 1階のレストランはテラス席もあるかなり大きなところであった。案内された窓際の席で、二人は星に照らし出された日本海を眺めながら、ゆっくりと食事をとった。こんなに贅沢でゆっくりと流れていく時間は一樹にとっても、こずえにとっても本当に久しぶりのことだ。食事を終えてもしばらく二人は海を眺めていたが、やがてこずえが言った。

 「ワインのせいかしら、少し酔ったみたい。」

 「じゃあ、部屋に戻ろうか。」

 「ええ。」

 二人はレストランを出てエレベーターを待った。一樹がふとロビーを見渡すと、一台のパソコンが置かれていた。インターネットにつながっているようだ。部屋に戻り、こずえを椅子に座らせると、一樹が言った。

 「ちょっと1階のお土産コーナーみてくるよ。」

 「わかったわ。なるべく早く戻ってね。」

 「うん、分かってる。じゃあ。」

 「パソコンは1台しかないんだから、あまり一人で事件のこと調べるのに熱中しちゃだめよ。」

 こずえは何もかもお見通しのようだ。

 

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