28話 普通の高校life?
その後も粛々と、委員会を決めていった。時々、楽な委員会と見える委員会には、多くの人が挙手していた。ちなみにさっきの俺の挙手していた保健委員会でも、多くの手が挙がっていた。さすが人間、楽できるなら楽したいよね。そして授業内で、全ての委員会が決定された。教室の端にいた先生が教卓に戻ってきて。
「お疲れさん。二人は席に戻って。このデータは保存して、明日印刷みんなに渡すから」
先生は電子黒板に書かれているデータを保存して、帰りのHRの画面に変えた。
「明日は放課後に、早速委員会活動らしいわー頑張って。まぁ明日まで、午前中授業だってことに幸運に思いなさいよ」
先生は教師もらしくもない、この教室で一番のテンションの高さで連絡事項を伝えていく。まぁ午前中授業は、生徒も早く帰れるが先生も早く帰宅できるから、あんなに元気いいのだろう。
だが決して普通の先生なら、それを表には出さない。だがこの人は例外だった。この人は生徒よりも高く、この午前中授業であることを喜んでいる。そんな中で授業の終わりを知らせる鐘が鳴り響く。
「お、授業終わった! 帰りのHRも終わったし、今日は終わり~。代表~よろしく」
どうやって先生になったか知りたくないような気の抜けた先生の声で、指示されたすみれさんは、少しため息を混ぜながら。
「起立! 気をつけ! 礼!」
まるで軍隊の教官みたいな迫力ある(やっぱり女の子だからか迫力が少し落ちるけど)号令をかけて、授業と同時に我が一年E組の一日は終了した。
***
俺は走っていた。肺に溜まっている酸素が全て無くなるような勢いで、ひたすら走っていた。訳はたった三分前にさかのぼる。
実は今日、お昼ご飯を写真部の人達と食べる約束をメールでしていたのだ。だから今日は珍しく、早起きしてお弁当を作って鞄の中に入れていた。要はものすごく、前準備をしていたのだ。だが、問題が起きた。
「少し時間あるかしら?」
教室から出ようとした所を、背中からすみれさんの声に呼び止められた。ものすごく嫌な予感しかしなかった。
「いえ、これから用事があるんですけど……」
「それでも時間を作りなさい」
えぇー! 俺の意見を華麗に無視したよ。だが俺は挫けず。
「いえ、もう行かないと間に」
「なんとかしなさい」
今度は最後まで反論させてくれなかったよ、ひどすぎる。なんとしてもすみれさん、俺に嫌な事をさせようとしている。この短い間に出来た<すみれさん専用危険探知機ver1>がそう反応している。
なんとかして、部活の食事会に行かなくては。だが、後ろから感じる大きな力が俺を金縛りにしている。どうする……短時間に俺の脳みそをフル回転させて、一つの答えが出た。俺は今できる最大限の笑顔で振り返って、すみれさんを見る。
「?」
突然の笑顔ですみれさんが、少し困惑している間に、綺麗なお辞儀をして――逃げた。そう逃げたのだ、全力で。
「あのく……待ちなさい」
やはり追いかけてきたか、すみれさん。だが俺には勝算があるのだ。廊下には帰宅しようとする多くの生徒たちがいて、彼らは同時に大きな壁となっている。それらを俺はわずかな隙間を見つけては避けるを繰り返す。
ここに入学するまでは、時々記憶にない野郎たちに呼び止められては、訳もわからない理由で、街中を追いかけられていた毎日。そのおかげか、人を避けるというスキルが異常に高いのだ。
一方そのスキルがやはり低かったすみれさんは人混みに飲みこまれている。
「ちょ、ちょっといいかしら――ホントどきなさい!」
少し怒鳴りっぽく言っているが、その声は人混みの中に虚しく消えていった。
だが、あのすみれさんの事だ。だから最後まで油断せず走ることにした。
そんな感じで今も走り続けているのだ。目的地は前回と同じ屋上の庭。屋上に続く階段を休まず駆け上る。そして屋上の扉にたどり着いた。そこには写真部のメンバーがそろってご飯を食べ始めていた。 そこにはまだ見た事のない人も何人かいた。そんな中、部長が俺に気付いた。
「お、刀破君。遅いよー。先食べ始めちゃってるよ―」
それに続いて雲雀も気づいた様子で、手を振ってくれた。
「刀破君~遅かったねぇ。なんかったの?」
「まぁ、いろいろね」
本当に一言で表せないぐらいのドラマがあったんだ。二人しか知らないドラマが繰り広げられていた。
俺たち以外にも、他のクラスの男子が入部していたらしく雲雀の周りにいた。しかしやはり女子はいない。これならいっそ<男子写真部>に改名すべきなのでは。そんなこと思いつつも、とりあえず俺は自己紹介する事にした。
「遅れてすいません。E組の成川刀破です。よろしくです」
「「「よろしくお願いします」」」
こんな感じで他の人の自己紹介をしてくれて、その後からは弁当を食べつつ、何となく笑い会話などしながら写真部の昼食会は終了した。
帰宅してから思ったのだが、この高校に入って初めて、普通の高校生生活っぽい事をしたなと感じたのだった。
こんにちは、りょーすけです。
ホント久々の更新ですね。最近レポートやら、ゼミ関係などで、忙しくて……。まぁいい訳ですね。すいません。
そして密かに新作を執筆中と言う……大賞に出す用に。
そんな感じで少しずつですが、書いていこうと考えてますので、よろしくお願いします。
次回はまた彼女が護衛執事巻き込む絶好調な問題発言!? 護衛執事はどうなるか…また次回でお会いしましょう。