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19話 初宣言

 すみれさんは俺の目の前で立って、息もしている。だけど彼女の――目は死んでいた。

 目は開いている。だけど目に俺たちは映ってないだろう。

「氷原さんはね――人の心を読めるのよ」

 彼女は少し冷静になりながらも、楽しいお話をする時のように、陽気に喋り始める。

「彼女は簡単に言えば、私の能力の亜種みたいなものね。彼女は周りにいる人の思い、考えがわかるの。彼女の頭に自然に入っていくって情報。人はそれを心話しんわと呼んでるわ」

 彼女はすみれさんがいままで語ってくれなかった事をすらすら語り続ける。そう彼女は子供に昔話を聞かせるようにとある少女の物語を語る。

                      

 十年前のとある日、一人の小学生の少女は力を手に入れた。

 その少女はAWの事なんて知らない。だから彼女は純粋にその力は神からの贈り物からだと純粋に思いました。

 その力は周りの人の思ってる事や考えてる事が何でも分かる力でした。

 彼女は昔から嘘が大嫌いだったので、彼女は周りの人にも嘘をつくのはよくないと、教えるために貰ったと彼女は心で確信します。

 その日から彼女はその力を使って役立つ事をするようになります。友達にいたずらをされて、物を隠された時、その隠した子と話して、場所を聞き出す。

 人間は本心と表に出す言葉を別々に使いこなすことができる動物である。だからその子も口では嘘を言う。

 だけど彼女は言葉と会話してませんでした。そう彼女は――心と会話してたのだから。

 言葉で嘘をつけても、心では本当の事を考えている。だから彼女に嘘をついても無駄だったのです。

 そんな方法で心から隠した場所を聞き出して、物を取り返す。そしていたずらをした子に説教をする。

 こんな事を学校で何度もやってるうちに、彼女は正義の味方として、友達の中で有名になりました。

 そんなある日の朝、一人のお友達から少女にこんな事を頼まれます。

「好きな男の子がいるんだけど、その子が私のことどう思ってるか調べて欲しい」

 彼女は友達のために、その男の子と心話して、彼女は知ってしまいます。特に友達には興味なく、彼は自分の事が好きだと言うことに。

 彼女はとても困惑しました。友達が好きな男の子が自分に好意を持ってるいう現実に。

 悩みに悩んで、彼女は友達にこう言いました。

「○○君はね、あなたの事いい友達だって言ってたよ」

 彼女は彼女自身が大嫌いだった嘘を使ったのです。それを聞いた友達は大喜びします。

(嘘をついても、いいのかもしれない。人を幸せにするなら)

 彼女は友達の笑顔を見ながら、そんな感覚を覚えてしまいます。だけどこんな考えは放課後ですぐに消えました。

「嘘だったじゃない!」

 朝に相談してきた友達が、放課後彼女の元に駆け寄ってきて、泣き狂いながら叫んできます。

「○○君私の事、どうも思ってなかったじゃない」

 小学生の考えは未知数であり、とても簡単です。そう彼女の発言で、友達は○○君は自分の事を好きではないかと勘違いしてしまったのです。

「さらに○○君ってあなたの事好きだって……絶対許さない」

 そんな風言われた事に彼女はショックでした。その時彼女はやっぱり嘘はよくないと再認識します。

                           

「なんて瀬戸さんがそんな……すみれさんの昔に詳しいんだ」

 俺を盾にしてお話を続ける瀬戸さんに質問した。

「んぅ~? 調べのが得意な子がいるのよ。雫~、起きたらどうなの?」

 戦場の端で倒れて、動いていなかった雫さんは、ロボットに電源入れた時のように立ちあがった。

「あの子はね、忍者のように情報を仕入れるのが得意なのよ。やり方は知らないけど」

 噂の彼女はこっちに歩いて来ながら、クナイを投げた。

 ――パリンッ。

 一枚のお皿が割れる音がする。だけど俺の皿が割れた音ではなかった。

「――すみれさん?」 

 そう俺の目の前にいるすみれさんの後ろから、粉々になったお皿の破片が落ちたのが見える。背中のどこかにお皿を巻いてたのだろう。俺が驚いたのはそこではなかった。

(何で避けなかったんだ!?)

 さっきの運動神経からは想像できないのだ。あんな飛んで来るクナイ一本ぐらい、すんなり避けれるはずなのに。

「すみれさん! どうしたんですか!? 俺にかまわず攻撃してください」

 俺が大声で叫んでも、すみれさんの瞳から光が失われたままである。

「氷原さんに今、こんなことしても……反応しないんじゃない?」

 彼女はポケットから鎖分銅を取り出して、そして――投げた。

 鎖分銅はそのまま彼女の左胸に直撃した、そしてそこからもお皿の破片が落ちてきた。

「何も反応しないんですか~、期待はずれですわ。そこまで考えるのをやめてしまわれると、私が楽しめないですの」

 なにされようと、何言われようと、すみれさんの瞳から光が蘇らないず、魂が抜けたの抜け殻がそこに立っていた。

「…………」

 瀬戸さんはそんな抜け殻を見て、ため息をしてまた俺に目をやる。

「――まぁいいですわ。ならさっきの続きでも話しましょうか」

 また瀬戸さんから昔話が語られ始めた。

                     

「おかえり、お父さん」

 ここは彼女の家。夜の9時を少し過ぎた頃でした。

「あなた、最近帰り遅いわね」

 彼女の母親が父に訊きます。

「……仕事が忙しくてな」

 鞄をリビングに置きながら、それらしい返事をしました。

(お父さん――嘘ついてる)

 だけど少女にはお父さんが嘘をついてるのを、彼女はすぐに見破ってしまいます。心は嘘をつけないのです。

 その時彼女はあの友達の顔がよぎった。

『嘘だったじゃない!』

 あの憎しみと絶望感が混ざり合ったあの表情。そこから彼女は嘘を前より嫌いになっていた。

 そして自分のお父さんが嘘をついている。嘘はよくないのに……。

「何で嘘つくの? お父さん」

 自然と口が動いてしまった。なんとなく小学生だった彼女でも、言ってはいけない事だとわかってるたのに。

 その後はお母さんがお父さんの鞄を調べると、キャバ嬢の名刺が出てきて、大ゲンカに発展してしまった。

「私は明日の飛行機で家に帰ります!」

 そう言い残して、お母さんは部屋に籠ってしまい、お父さんもすぐに家を出て行ってしまいました。

(なんでホントの事を言ってもいけないの)

 嘘とは一体何なのだろうか? この疑問が彼女の頭から離れないまま、時間だけが無情にも経ったのでした。

 その翌日、お母さんの姿はもうなかったので、昨日の夕飯の残りを食べて、学校に向かいました。

 学校につくと彼女の目に、信じられない光景が入ってきました。

〈○○はウソつき野郎〉 〈○○はニセモンヒーロー〉 〈○○は人の不幸を好むサディスト〉

 黒板に数々の言葉の暴力が記されていた。後から知ったのだが、あの少女が朝、学校に来た時に他の友達に昨日の一件を話した所、その友達が激怒して、行動に出た結果があの所業だったらしい。

 心が読める少女も小学生。彼女の心がこんな事をされて、無事ではありませんでした。

 彼女が教室に来た事に気がついた人が、急いで黒板の文字を消していましたが、手遅れでした。

 そして彼周りのクラスメイトの本心が、無意識に彼女の頭の中に入り込んでくる。

(何であんなひどい事を)(まじ信じられないんだけど)(最悪~)

 教室にはしばしの沈黙が流れていましたが、彼女は心の内側で戦ってました。

 だが神は、彼女にさらに追い打ちがかかります。

「○○ちゃん! 大変です、お母さんが」

 ドアが大きな音を立てて開き、先生が慌ただしく彼女を呼び出して、職員室に呼び出されます。

「どうかしたんですか?」

 傷も癒えず、状況もわからぬまま、職員室に連れ込まれた。私と先生は職員室に一台しかないテレビの前に座るように言われます。そこでは一つの速報ニュースが話題になっていた。

〈旅客機が海に原因不明の墜落。乗客157名行方不明。現在調査中〉

 彼女はこれを見せられている理由がわからなかった。

「よく聞いてね……」

 担任の先生が彼女の肩に手を乗せて、真剣な目でこう言った。

「――あなたのお母さんはあの飛行機に乗ってたらしいの。あなたのおじいさんからお電話があったの」

 この後先生の言葉は彼女の耳に入らなかった。きっと先生は慰めてくれていたのかもしれない。今後の事で話をしていたのかのしれない。

 だが彼女はの心の中では暴走が発生していた。

(私のせいだ! 私のせいだ! あの時あんなぁこといわなかったらぁ;@-!!!!!)

 この瞬間彼女の心は粉々に砕かれてしまいました。その後彼女は人を信じられなくなり、そして彼女の能力も有名になり、より彼女の周りにも人が近寄らなくなりました。 

                       

「そんな話を俺に聞かせてどうするんですか?」

 全てを語り終わった彼女に尋ねる。

「うーん? あなたの目の前の人の事せっかく話していたのに」

 彼女は抜け殻になったすみれさんに目をやる。

(そんなのわかってるさ!)

 俺は内心、怒りをあらわにしていた。人の不幸を話にするのにも腹が立つし、さらに笑い話にするなんて外道にも程がある。

『ホントにあの小娘よく言うな~』

 ん? どっからか知らない声が聞こえてくるな。でも同意できるから、心でうなずいていた。

『ん? 拙者の声が聞こえるのか?』

「あぁ、一応な」

 どこからか聞こえるかわからないが、一応返答をした。

「あなた頭がおかしくなったの?」

 横から瀬戸さんに言われた様がするが無視をした。

「氷原さん」

 俺に無視された事が勘に触ったのか、氷原さんに話しかけ始めた。

「そういえばなんでこんな男を護衛執事にしたのかしら?」

「…………」

『返事がこないってわかってるのに、話しかけるなんて、あざといねぇ』

 この第三者の発言にまったくもってその通りと内心思っていると、

『お前もか、気が合うな』

 一体どこから聞こえてくるんだ!? この声はかなり近くに聞こえるような気がするけど……。

『今はそんなこと考えずに、拙者の質問にいくつか答えてくれ』

 こんな戦っているど真ん中で、何とも穏やかな声でのうのうと喋りかけてくるもんだ。だが俺も断ろうとは何故か思わなかったので、内心で承諾する。

「男なんて私たちより劣ってる人種なのに、そんなの部下にしてなんか意味でもあるんですの?」

「…………」

『あの小娘は拙者たち、男を馬鹿にしてるけど――許せるか?」

(まぁ、事実だし許せるかな)

 俺は瀬戸さんの会話を聞きながら、知らない奴の質問に応答していた。

「あ、もしかして女に友達いないから仕方なく男にした訳ですか?」

「…………」

『あの子の事少し馬鹿にされてるけど――許せるか?」

(少しイラッと来るけど、確かにすみれさん友人少なさそうだからね)

「ああ! わかりましたわ! 男は自分の存在を知らないから、話せると思っちゃいましたの!」

「…………」

『あの小娘、あの子に酷い事言ってるけど――許せるか?』

(…………)

「まさかこの男と友達になれると思っちゃいましたの!? でも残念ね~それはもう叶わなそうよ」

「……! …………」

 一瞬だが彼女の表情に変化が見られた。悲しそうな顔だった。友達から自分の大切にしていた物を目の前で壊されてしまって、もはや涙も出ないぐらいの悲しみが、あの表情から見れた。

『あの小娘、あの子の事傷つけてるけど――許せるか?』

(…………)

「この学校にも、結局はあなたの居場所なんてないんですわ! だから私がクラス代表の座をいただきますわ」

 彼女は高笑いしながら、何も動作をしないすみれさん根拠もない戯言を言いふらしている。

『許せるか?』

「――許せるわけねえだろ」

 俺は小声ながらも、質問に確かに応答した。

「はい? 何ですか?」

「瀬戸さん、俺はあんたが許せない」

 俺はいつの間にか、瀬戸さんからの質問にも答えていた。

『その言葉を待ってたでござるよ』

 どこから聞こえるかわからない声は、聞いてた中で一番元気な声になった。

 そして瀬戸さんは俺の発言に気に入らないかのような顔をしながら、俺を睨みつける。

「うるさいですわね。私は真実を言ってるだけ」

『刀破、君の体を少し借りていいかな?』

 二人一変に喋りかけられて、少し困惑しながらも時は流れていく。

「彼女の事を教えてあげたんだがら、少しは感謝してほしいものですわ」

『君が必ず望むような形を拙者が作って見せる! そして彼女も救って見せる! だから』

 彼女は俺の態度に呆れてしまったのだろうか、鎌を振りかざす。

「もうあなたは用済みだから、ここでリタイヤしてもらおうかしら。氷原さんもすぐに逝きますけど」

 瀬戸さんは、鎖鎌で俺の最後のお皿を割ろうとしていた。そこで俺は決断する。

(やれるならやってみろ! ござる野郎)

 瀬戸さんの鎖鎌が、俺のお皿を目の前で――ガキンッ!

 金属音が鳴り響いたが、お皿の割れる音ではなかった。

「何ですの? あなたは」

 彼女は俺が予想外の行動に驚きながら訊いてきた。

 俺のお皿と彼女の鎖鎌の間に――逆刃刀が割り込んでいたのだ。

 下に構えていた刀を、騎士がランスを自分の胸に持ってくる構えをするように防いだ。

 その隙に俺? は腰に差していた鞘を抜き出し、彼女の左わき腹に打撃を加える。

「クッ……」

 瀬戸さんがよろめいてる間に彼女の腕の中から抜けだし、戦闘態勢に構える。

「あなたいったい何なのですの!?」

「なにって? ただのそこらにいる男ですよ」

 俺……いや、もはや俺の体を操っている彼は、のうのうと返事をしながら、鞘の下部分をいじくり始めた。 

「これでよしっと」

 鞘を天井に向けて、振り上げると――カキンッ。

 鞘の(こじりの少し下から中央部分から、鉄部分が露わになった。蓋になっていた部分は下に落ちたように見えたが……そして鞘の下緒(さげお)を自分の左手に巻きつける。

「面白い細工ですわね」

 その光景を目にした瀬戸さんが、面白半分で言ってくる。

「そうですか~、そう言われて嬉しいですよ」

 彼は鞘が結ばれている左手で、俺の前髪を上げる。

「……前髪がホント邪魔だなぁ~。まぁ、そんなことどうでもいいさ」

 彼は瀬戸さんの正面に立って深呼吸して、話を切り出した。

「せっ……俺はあんたの事が許せない」

 彼は俺の体を使い、瀬戸さんと会話し始めた。

「事実を言ってるだけなのに……それにあなたに今更何ができるんですの?」

 瀬戸さんは鎖鎌を振りかざしながら、訊いてきた。

「――できるさ。あんたたち二人を倒すぐらいさ」

 女性>男子社会の世界では、彼の発言は桃源郷に行くような理想話を語ってるのと同じレベルである。

 だが、彼の声からは、それを笑い話を覆せるかもしれない何かを感じるのだ。

「俺の命の恩人だが、まだ彼女については何にも知らない」

 彼はただ淡々と喋る。今までの空気を変えるかのように。

「――だけど、その人は俺の大切な友人だ。男女関係なく大切な友人だ!」

 彼はこの社会では、男が絶対言わないセリフを先生・クラスメイトの前で、大声で宣言したのだ。

「だから友人を泣かす奴は、俺が許さない」

 彼は鞘を瀬戸さんに向けて構える。

「俺があんたたちのこころに――後悔と言う文字を刻んでやる」

 この宣言で――彼の戦が始まる。

 挿絵(By みてみん)




 

 

 




 


こんにちは、りょーすけです。

この前はTDLに行き、ものすごくはしゃぎましたw

心が少年に帰れる場所ですからよかったです。

今回はついに刀破目覚める!? のお話でしたかね。

とある少女の昔話が中心でしたが。

そしていやさんのイラスト! 感動感動!こんなに上手に書いてもらってる事に感謝です。

次回は彼の戦いが始まるお話。

そしてすみれさんの瞳に光が蘇るのか?

 それでは次のお話まで~では

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