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16話 初疑問

                     ***

「いや~来てくれて嬉しいよ」

 今俺と雲雀がいるのは校舎の屋上の庭。そして写真部の部長である鏡原香佑さんと、その部の部員の数人とお昼ご飯を食べている。

「いえいえ、こちらこそ」

 俺も来る途中で購買部で買ったカレーパンを飲み込んでから、それらしい言葉で返答する。

 俺と雲雀は昨日この写真部に入部したのだ。俺は雲雀の気持ちに負けて、入部したんだけどね。だからと言って、中途半端でやろうとは思わない。昔から一度やると決めた事はトコトンやる方だ。

「まだ、一年生で入部が決まったのは君たちだけど、これからもどんどん増やしたいね」

 香佑さんが意気揚々に喋りながら、自分で持って来たらしい弁当を食べている。

「そぅですね。僕もそっちの方が嬉しいです」

 雲雀も手作り満載のお弁当を食べている。周りの部員の人のも、よくよく見ると手作りの弁当が多い。

(俺も次は弁当にしようかな)

 確かにここ最近は家庭的男子、通称カテ男と呼ばれている男子が増えていると聞いてはいたが、周りにこんなにいたとは、(周りに合わせる)日本人によくある事が俺にも発生した瞬間だった。

「先輩は今何年生なんですか?」

「僕はね、二年生でね。この部活もできてまだ二年なんだ」

「って事は先輩がこの部活を創部させたんですか!」

「先生とかを説得させるのがなかなか大変だったけど、なんとかそこは努力で勝利をもぎ取ったんだ」

 この先輩見た目以上にタフな人なのかもしれない。

「成川君と志木君たちとは、これから楽しくやっていきたいしね」

「はい。こっちこそこれからよろしくお願いします」

「――はぁ、やっぱ後輩っていいなぁ~」

 先輩は少し声を弾ませながら、ケータイを取り出した。

「君たちのメルアド教えてくれる?」

「はい、今準備します」

 俺と雲雀はお互いケータイを取り出して、先輩と赤外線でプロフィールを送信した。

「そういえば僕、刀破君のメアド知らないや」

「そういえばそうだったな」

 そんな感じで、雲雀と香佑さんのメールアドレスを手に入れた。ついでに言うとこの学校に入ってから、初めて手に入れた友達のメールアドレスだった。

「じゃあ、また今度集まる時にメールするから」

「「お願いします」」

 部長と別れて、俺たち二人は階段を下りていた。

「ぃい部活生活送れそうだね」

「そうだな~」

 三階からニ階に降りようとした時、視界の隅に人影があった。ふとそちらを見ると、見覚えのある人が廊下の窓から何かを眺めていた。だが背中からはあの人には似合わない悲しみというか、諦めを感じさせる。

「雲雀、俺ちょっと教室に忘れ物しちまったわ。先に外で待っててくれるか」

「ぅん。わかったよ」

 雲雀はそのまま階段を下りて行く。それを見終わった俺はその人物の所に足を運ぶ。

「どうしたんですか? すみれさん」

 俺の声が聞こえたのが意外だったのか、すみれさんは俺が思ってた以上に驚いた顔をした。

「――! 何でこんな時間にあなたはいるのかしら?」

「そのお言葉そのまま返しますよ」

「気持ちが周りから感じられなかったのに……」

 小さな声だったから何を言ったかはわからなかったが、すみれさんはそんな事を言う俺の目を見て、少しため息まじりながら、

「――空を見てたのよ」

「空を?」

 俺も空を見る。そこには雲が少しありながらも、なかなか綺麗な青空だった。

「私は青空が好きだわ。あれほど透き通ってどこまでも続いてる。ありそうでなかなか存在しないわ」

 すみれさんの哲学的なな発言を俺は黙って聞く。

「人の心もあんなにきれいに透き通っていればいいのに……私の両親もそうだったら」

 少し声が悲しい声になりながらも、最後はまた小声で聞き取れなかった。

「でも誰にも秘密って一つや二つあると思いますよ」

 人間は他人に秘密をすべてさらけ出すなんてできっこない。そうでなければ「秘密」という言葉は生まれなかっただろう。

「……それもそうね。それが普通よね」

 すみれさんは空を見ながら、ぽつりと呟いた。そんなすみれさんを見て一つの質問が頭に浮かんだ。

「話変わりますけど、何ですみれさんクラス代表に立候補したんですか?」

「ホント話変わったわね」

 すみれさんは半ばあきれながらも、再度空を眺めながら答えてくれた。

「――義務だからよ、私にとっての」

「? 義務?」

 義務ってまたすごい言い方だな。

「いつだって私はそうでなければいけないのよ。入学した時から覚悟してたわ」

 ただならぬ決意を持った声で言うすみれさん。彼女はいったいどんな人生を歩んできたんだろう。俺は少し気になった。

「だから、クラス代表に立候補に出るなんて当然の事。そして当選するのも当然の事よ」

 口ではそんな強気な発言しているが、横顔からはそれを感じられない。

「そうなんですか。でも明日決めるって突然過ぎですよね」

 俺はひそかにその事を思ってたことなのだ。まだクラスのみんなの名前と顔がまだ一致してないのに、こんな重要な事を決めるのに疑問を持っていた。

「それがこの学校の伝統よ」

「伝統?」

「一クラスに数人ずつ中学の時に優秀だった人が分けられているの。だからある程度、別の学校の人でも名前が知られているものなのよ」

 女子の学校って頭いい人ならそんな風に有名になれるのか、いい意味で。俺なんて特に何にもしてないのに、不良関係の奴らから悪い意味で有名になってたらしいからな。

「名前もまだよくわからないこの時期。票を入れるなら、一日でできた友人か、聞いた事のある有名人のニ択」

 確かにこの短期間(一日)だけで決めるなら、それしかないだろう。

「ってことはすみれさんも、中学の時有名だったんですか」

「成績もよかったから、自然と噂になってたわ」

「すごいですね」

 自分で断言できるくらい自信があるなら、中学時代は相当有名だったのだろう。

「でも少し予想外だったわ」

「何がですか?」

「私以外に立候補する人がいたなんて」

「もう一人そういえばいましたね。あのバカは除いて」

 あのバカ紳士は単に目立ちたいだけだろうからな、立候補者から消してもいい。

「瀬戸成海……だったかしらね」

 入学式当日に先生に口で挑戦して、見事に返り討ちにあったあの人か。

「まぁ、どちらにしても私がクラス委員長になる運命は変わらないわ」

 なんてすんばらしき自信なんだろう。どこから湧き出てくるか教えてもらいたい。

「だから、あなたは私に票を入れなさい。私の執事として当然だけど、一応」

「ええ!? ――まぁいいですけど」

 瀬戸さんの事は全然知らないし、あいつは当選する率皆無だしな。俺は一応承諾した。

「よろしい。私はそろそろ帰るけど、あなたも帰るんでしょ」

 俺が返答する前に、彼女の手から俺に向けて、あの重たいバッグが飛んできた。そして俺は思わず反応してしまい、キャッチする。

「さっさと帰るわよ」

 すみれさんは窓を閉め、さっさと歩いて階段に向かって行ってしまった。

 立候補した三人、氷原すみれ・佐多陽一・瀬戸成海。佐多は、気軽で話しやすい男だが、○○紳士で、瀬戸さんとは会話をした事すらないので、人柄もよくわからない。

 だが実は俺の中で一番わからないのは、俺の主人? である氷原すみれだ。彗星のように突然俺を助けるために蹴りを決め、突然初対面の俺を護衛執事にしたのは彼女。そして俺が彼女の頼み? を否定したら、いきなり悲しい顔をしながら襲われた。

 少々正確には難なりとは思ってたが、会話しやすい人だと思ってた。

 だが俺が離れた校内では違った。俺が見る限りでは誰とも会話してないのだ。もっと言うと、会話しようとせず、それどころか自らしないようにしてるようだ。周りもそれに望んでるかのように、誰も声をかけない。

 氷原すみれ――この学校に入学して、初めて会話した女性・俺を護衛執事にした女性、そして謎に包まれた女性。一体彼女は何者なんだろうか。

 こんなことを頭で考えながら、すみれさんと帰ってたら、何故かすみれさんから帰りの門に行くまで、冷たい視線を感じながら帰ったのであった。

 ――だがその疑問は翌日に晴れる事は、俺はこの時は知らなかった。誰も望まなかったような形で言われるとは、ただ一人を除いて誰も知らなかった。



    







 


こんにちは、希光リョースケです。

体調など悪くしたせいで、更新遅くなった事申し訳ありません。

これからは隊長を万全とし、執筆に臨む所存なのでよろしくお願いします。

 次回クラス代表の結果が明らかに!? そして彼女がとった行動とは

 ではまた次回でお会いしましょう


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