12話 初約束
髪はショートヘアで、右のこめかみには昔から付けているライオンの顔が絵が描かれているヘアピン、そしてこのまだ変声期が来ていないと思わせる甲高い声。
「何でこんな所にいるの? 姉さん」
「なぁんでぇって? ひまぁだかぁら」
ポッキーをくわえながら喋る姉さん。
「だからって……どうやって入ったの?」
予想はしているが、一応確認。
「――ふぅ、そんなのこれで入ったに決まったじゃない」
ポッケからいろんな種類のピッキングツールが出てくる。確かあの種類の道具は普通の市場では出回らないはずなんだけどな。
「姉さん、それどこで買ったの?」
「この前新作が出たって噂聞いてね、ほら近所にある鍵屋の山本さんに頼んだらもらえたの」
俺の耳はそれ通訳する。
「近所にある鍵屋の山本さんから命令して、無理やり取って来たの」
になる。
「山本さんにお礼にお菓子でもやれよ」
「そうね~色々もらってるし、いい案ね」
奪ってるの間違いだろう。今度実家帰る時にお詫びの品を持っていってあげよう。
「おいしい♪」
新しいポッキーを手で持つ。
「姉さん、俺に何か用なの」
「あるような~ないような~」
曖昧な返答が返ってくる。でも姉さんが動いているというには訳があるのだろう。なんとかして聞きださないと。色々試してみる
「姉さん、そう言えば何でピッキングしてまで来たの?」
「そこにかぁぎあながあったからよ」
某有名な登山家の言葉を引用するとはな。この姉に素直に聞いたのが間違いだった。別の方法を考えよう。
・遠回りして聞き出す。
(いやだめだ。姉さんとそんなことしたら、遠回りしたまま永遠に肝心な事にいけない)
・武力介入で無理やり聞き出す。
(不意打ちで攻撃したら、俺……)
こんな姉でも、小さい頃からAWの力によって俺よりはるかに進化している身。姉さんとは喧嘩はしたことないが、おそらく殺られることは必至。
(思いつかん……この姉を攻略する方法が)
俺が心の中で絶望していると、
――グゥ~
俺の心に広がっていた絶望を振り払う音が聞こえてきた。もちろん俺の出し音ではない。
「姉さん?」
「そう言えばお昼食べてなかったなぁ」
これはチャンスだ!
「せっかく弟の部屋来たんだし、ご飯でも食べてく?」
「ホント!! いいの」
そうだった。姉さんは食事大好きな人ではなかったか、調理は壊滅的だけど。
「でもここに来た理由を教えてくれたら、ご飯大盛りにしてもいいよ」
俺は勝ち誇りながら、姉さんに言う。
「…………」
しばらく姉さんは真剣に考え込んでいる。てか考え込むほどの事なのだろうか。
「今日のお昼は何なの?」
「チャーハンだけど、具たっぷりの」
「1.5人前にしてくれるなら話してあげよう」
少し条件が変わったな、だがここで退いては負ける。一文惜しみの百知らずにはなりたくないしね。
「わかった、わかったよ」
俺もそれに仕方なく譲歩する。このまま聞けなかったら、俺はただ姉さんにピッキングされ、ポッキーを奪われたかわいそうな男になってしまう。
「じゃあ、早くお昼にして―、刀破」
ポッキーを箱に閉まって、冷凍庫に入れた。おそらく食後のデザートにするのだろう。
「はいはい、ちょっと待ってて」
俺は部屋を出て、廊下にあるキッチンに向かう。そして冷蔵庫に買っておいたチャーシュー・ネギ・卵・ナルトを取り出して、調理開始。
俺の作るチャーハンは黄金チャーハンだ。最初に冷えた米と卵を混ぜて卵かけご飯を作ってから、事前にフライパンで炒めておいた具を混ぜて強火で炒める。こうするとパラパラチャーハンになるのだ。
そうして出来たチャーハンを部屋に持っていって、姉さんと二人で手を合わせて、
「「いただきます!」」
姉さんは女らしくない勢いで、チャーハンを口に頬張っている。
「ところで姉さん」
「なぁんにぃ」
「何で俺の所に来たの?」
そう尋ねたら、姉さんは口に含んでいたチャーハンを飲み込み、レンゲを置いて後ろを向いて何かを取り出した。
「これを刀破に渡せ、って父さんから」
俺に風呂敷に巻かれた荷物を俺に向けて、
「ホイッ」
投げてきやがった。さらに投げ方が槍投げスタイル、陰湿で悪質な投げ方だ。だが俺は負けずにそれをキャッチした。
「重!」
その荷物を持って最初に思った印象だった。これを片手で投げてくるとは姉さん恐るべし。
「開けてみぃたらぁ」
確かに中身は気になる。父さんが俺に姉さんを使ってまで渡したかった代物を。
少し緊張しながらも風呂敷の中身を確認する。
「これは……」
中には木箱が入っていた。その時点で俺は中身に何が入ってるかわかった。
「何で今さらこんなものを」
「一年遅れだけど、よかったじゃない」
木箱のふたを開けるとそこから、江戸時代の侍ならだれでも持っていた代物があった。
日本刀だった。最初に見てわかる特徴は鞘の色、黒くなく蒼色なのだ。
「我が家はホント古いね~」
それを見て姉さんはそんな風な事を呟いていた。俺も同じ思いだった。
「元服って今の時代じゃ古すぎるぜ」
我が家では男が元服する時に、日本刀を渡す習慣があるのだ。普通は烏帽子とかだけど。
「去年いろいろ忙しかったから、渡し損ねたんじゃない。後は完成するのに時間がかかったとか」
去年は父さんが倒れたり、俺の受験とかがあったから渡すタイミングを逃したのだろう。
「でもこんなの渡されたって、使えないじゃんか」
小声でぼやく。見た感じすごい良さそうな日本刀だけど。
「え? あんたの学科なら使うんじゃないの」
「は?」
サラっと言ってきた驚くべき発言に俺は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてしまった。
「刀破が通ってるのって特選科でしょ?」
「ああ、そうだけど」
「確かあの学科なら、授業の一環で訓練っぽい事があった気がするんだよね」
おいおい、そんな話聞いたことないんだけど。
「まぁ~学校に通ってればわかると思うよ。ご馳走様」
いつの間にかチャーハンを食い終わってた姉さんは、さっきまで冷凍庫に入れてあったポッキーを食べ始めた。
俺はまだまだあの高校の事を知らない事が多すぎるようだ。
「マジかよ」
「まぁじよ」
冷えたポッキーをタバコをくわえるようにして、返答してきた。
その後学校の事を聞こうと試みたが、
「そういうことは自分で調べるのが一番。百聞は一見にしかずだよ、刀破」
これの一点張りで結局最後まで教えてくれず、そこから今度は俺の今日の入学式の話になった。
「私は行けなかったけどどうだった?」
行かなかったの間違いではないだろうか。
「すごかったよ、俺の想像してた高校のイメージをはるかに超えてたよ」
「あそこは例外よね。よく刀破が受かったよね、今でも半信半疑だよ」
「俺もそう思う」
ハハハ、二人揃って笑ってしまった。
「クラスはどうだった? お友達できた? 先生いい人?」
「姉さんってばお母さんみたいなこと聞くなぁ」
俺は少し冷めたチャーハンを食べる。
「男を何人かいるし、仲良くなれそうだよ」
「そう、それなら安心して家に報告できるわ」
「母さん入学式にいなかったっけ?」
「ああ行ってたよ。ここに来そうだったけど、来たらここに住みこみそうな勢いだったから、父さんと先に家に帰ったよ」
そこは素直に父さんに感謝しよう。
「なら私もそろそろ帰ろうかな」
そんな事言いながら立ちあがって、俺の冷凍庫に入っていたアイスクリームを強奪する。
「あ! それ俺の」
「まぁ楽しんで高校生活送りなさい。お姉ちゃんの純粋な願いよ」
「何いい事言って、俺のアイスを持って行ってるの」
「配達代ってことで」
袋を開けて、口に入れてしまった。
「たぁべる?」
「いらんわ!」
「女子との間接キスなんてそうそうできる事じゃないのに」
「姉さんじゃなけりゃ喜んでたよ」
「刀破、いつからそんな変態に……」
「姉さんが言わせたようなものだろーが!」
そんなくだらない事言いながら、姉さんを見送るために玄関に向かう。
「また気分が乗ったら遊びにくるわ」
「頼むからその時は、連絡くれ。後ピッキングは勘弁ね」
「それも気分」
これ以上ピッキングされたら、鍵穴の形変わって、今度俺が入れなくなっちゃうかもしれない。
「ああそれと」
姉さんがドアノブを持ちながら、
「これは個人的にだけど、約束してほしいの」
「約束って?」
姉さんが約束なんて言葉を使ってくるなんて初めてだな。
「女の子とは絶対戦わないで欲しいの」
「え?」
「そのまんまの意味よ。刀破がいる学校にいる女なんて化け物だらけよ、だから喧嘩とかは男とだけにしておいてね。女の子とは絶対喧嘩なんてしちゃダメよ……私の二の舞になってほしくないもの」
「ああ、わかったよ。できるだけ気を付ける」
最後の方はよく聞き取れなかったが、声が震えてたな。
「それを聞けて姉さん安心したわ。じゃあね」
わずかに微笑んでるだろうか、アイスをくわえているのでよくわからぬまま扉が閉まってしまった。
(あ!)
そういえば数時間前にすみれさんと、喧嘩みたいのをしたような気が……。
俺は姉さんとの約束をする以前に破ってしまっていた。
(うーん、あれは事故ってことで済ませておこう)
少し強引に考えながら、部屋に戻った。
こんにちは、希光リョースケです。
大学のテストも終わり、これからはバンバン書けるように頑張ろうと思います。
今回は姉との会話で終わりました。姉のキャラクター設定には困りました。書いてる途中で、流行に乗って妹に変えようとも思いましたが、何とか頑張りました。
次回は、浮かれていて読んでいなかった学校の資料を読むお話。そこには一体何が書かれているのか……
では!