1話 初会話
ピピピピ・ピピピピ・ピピピピトゥルルル・トゥルルルル・ジャリリリリリ
「刀破!起きなさい。カップラーメンできるまでに起きないと、戸棚の裏にあった大人になるための参考書が入った箱のこと、母様に言っちゃうぞ~」
そんな音を出す3つの覚まし時計と置いた覚えのない姉の録音テープが鳴り響く。
「くそ! 何故だ」
この前勇気を出して買ったエロ本(税込1575円)がもう見つかった。隠し場所には自信あったのに……。
はぁーていうかなんなんだ、あの録音テープは? あんなのいつの間に置かれていたんだ? てかいつ姉さんはここに侵入したんだ?
そんな理由で、とても憂鬱な気持ちで迎えた四月七日朝七時のことだった。
こんな変なことで悩みを抱える俺の名前は成川刀破、とある高校に今日入学する高校一年生。
生まれも育ちも東京の小金井市。小さい頃からまぁ……楽しい男子専門学校で生活を送ってきた普通の男だ。
趣味は強いて言うならサイクリングとかかな、マウンテンバイクで。後は昔から武術をやり続けている。理由は簡単であり、家が江戸時代から続く成川救心流という流派の道場だから。だから喧嘩で負けた事は一度もないらしい。『らしい』と言った理由は、俺は記憶の中では全く喧嘩をしたことがないのだ。
喧嘩(俺がしたらしい)が終わった後に毎回のように友人が半分興奮気味に言ってくる。
「刀破ってまじ強いな。俺知らなかったよ」
などとちやほやされる。後からそいつらにれが何をしたか聞く。
「お前が不良30人をフルぼっこにしたんじゃいか」
毎回のように笑いながら答えてくれるが、俺自身は全然笑えなかった。そのせいかよく不良たちに絡まれては喧嘩をしていたらしい。全く記憶にないんだけどね。
そんな俺は今は家族と離れて一人暮らしをしている。いろいろあるから、あの家とあの街ですと……。
「ま! そんなこと今はどうでもいいや」
なんせ今日は俺にとって、明るい第2の人生が始まるのだから。そんな期待を胸に持ちながら、朝食は昨日の夕食の残りで済ませて、新しい学校へ足に翼が生えたかのような足取りで部屋から出て行った。
そんな刀破が行く高校で、彼はこれから信じられんような生活を送って行くことになる。ホントに彼の人生を変えることが次々と……あの女性が颯爽と現れてから。
***
俺が住んでいるアパート「野川荘」を出て、自転車で学校を目指す。いわゆる自転車登校だ。金がかからないし、実家を離れるときのいい口実にもなったし、なんと素晴らしきかな自転車登校。そんな前向きな考えでいた時、目の前で女性が中年の男に声をかけたいた。
「そこのあなた、この荷物も持って駅まで付いてきなさい」
それはなんとも素晴らしい命令をしていた。10年ぐらい前にこんなこといきなり言ったら、この男は軽く無視しただろう。だが男は歩くのをやめる。
「これで全部ですか? いやー今年も桜がきれいですね。」
「そうね。でもそんなこと言う暇あったら早く来なさい」
こんな感じで、何事もないように初めて会った女のパシリになっていた。
「ホントにあんなことやられんのか? 俺はしたくないな」
早速、現実で教科書通りの社会を目撃して悲しくなった。さっきのワクワク感を今すぐにでも返してほしい。そう今は昔と少し……いや、社会全体が変貌してしまった。
20年前、リュット・ギアスマンが率いる調査団が、死のトライアングルと言われているバミューダトライアングル付近の海底で、特殊な物質を発見した。
名前は天使の羽根。後に〈AW〉と一般的に呼ばれるようになる物質である。その物質を顕微鏡で見た時に、神話で出てくるような天使に生えている翼の羽根のような形の微粒子がたくさん見えたことから名がついた。
当初は何の効果があるかわからなかったが、ある日実験の途中で事故が発生し、女性研究員が巻き込まれた。重傷だったが、なんとか命に別条はなかった。
その後入院中にその女性に不思議な現象が起きるようになる。
自分に投与された薬の名前を一瞬で全て暗記していたり、目の視力が異常に上がったりしていたのだ。
これに気付いたギアスマンは、すぐに彼女の体を検査した。そこで彼は驚くべきことを発見してしまう。
あの事故の時に付着したと思われるAWが彼女の体に侵入し、彼女の細胞を進化させていたのだ。それもAWは生き物のように体の中で増えていた。
これをギアスマンは世界中に発表し、世界を新たな時代へと導いた。
ただ問題があった。この物質は女性にしかその効果を出せないのが後に判明する。つまり男性にとっては何の役にも立たない物質だったのだ。何故男性に効かないのかは未だ原因不明らしい。
それにより徐々に男女の権力が移り変わっていって、今日は女性が社会を動かすようになった。
今の時代は男子と女性の能力の進化の早さが天と地の差であるので、男女と教育システムどころか住む場所まで違う。
一緒になるのは、男女共通エリアのにある高校からで、さらにそういう高校はエリート校だけ。そのまたさらに授業を一緒にできるのはそのまたエリートである男子ごくわずか。
一緒の学校で勉強させる理由は、将来と道徳の為と言われている。結論を言うと女子と一緒にに学校生活を楽しめる男子学生は全体の5%ぐらいと言われている。
俺には無理な話だけど、俺の通う高校には奇跡的に女子がいる高校。僕はそれだけでいい気分になれる! 青春を感じられる。
姉と母親以外、女子を見たのなんて幼稚園の前ぐらいだろ。他に見られるのは、雑誌や……エロ本ぐらいしかない。
この前もたまたま立ち寄った本屋に売られていて、羞恥心を捨てて買ったのに。恐らくもう火の中で永遠の眠りについているだろう。もう少し読みたかったなぁ……あれ?
てかどうやって姉さん俺の部屋に入ったんだ? まだ姉さんを俺の部屋に呼んだ覚えがないんだが……深く考えるのはやめとこう。
そんな大きな犠牲を払いつつ、俺の青春はこれからスタートする。しばらく自転車をこいでいると先に見えてきたのは、俺の通う高校に行く前に立ちふさがっている名所がある。
地獄の急坂と呼ばれている〈登りのすみれ坂〉と〈下りの流水坂〉である。これを行った先に俺の母校になる私立疾水学院がある。
この希光学院はこの時代には珍しく男女の平等を校訓にしている高校だ。
なので、男子の受験生にとてつもないほど人気がある。
反対に女子からは不人気だが、だが道徳の為という理由には納得しているようで、目立つような反対していない。
そんなめずらしい男女共立高校に奇跡に入学できた。理由はある日に配達された一通の手紙にあった。
「成川刀破様。あなたを私立疾水学院のスポーツ特待生として認めます」
こんな感じの手紙が届いてた。後から聞くと、母が志願書を出していたことが発覚。でも、その時は怒りより感謝の方が大きかった。なんせ男子しかいなかったんだから、俺の小・中学校。そんな俺に届いた突然の吉報だったから。
「男女一緒だと! きゃっほ―」
こんな感じにしか考えなかったので、すぐに入学手続きをした。そして今に至る。
俺はスポーツ特待生として入学するから、おそらく女子とは一緒に学園生活は送らない。でも……
「おお!」
あの青い制服・黄色のネクタイ・赤いスカートが特徴的なあの制服。俺の高校の女子学生だ!
綺麗だな~何年振りだろなぁ――肉親以外で女性見るの。
俺の青春がこれから始まると考えだしたら、自転車のスピードが上がっていた。今なら「I can fly」と叫べそうだ。
「あれ?」
そんな事を思ってたら、いつの間にか〈登りのすみれ坂〉を乗り越えており、逆に急な下り坂である〈下りの流水坂〉になっていた。女子に夢中で登りの疲れを忘れていたんだろう。
この流水坂はみさき坂とは違い、傾斜30度であり、S字坂になっている。普通は自転車を降りて行くのだが、俺はその時、「I can fly」状態だったので、気付かず降りるどころか加速していた。
「嘘! やばい。ぎゃあああああ―」
どんなにブレーキを使っても全然聞かない! やっべ、曲がるので精一杯だ。
(死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ)
この文字だけが俺の心に埋まっている。こんな時大体そこら辺の曲がり角から。
「危ない―!」
こんなこと叫んで、正面から突っ込んでくるんだよね。
こんな時にそんなことを考えていたのを神様がたまたま俺の心を見ていて、願いを叶えてくれたのか、正面から大きな音が聞こえてくるような……
「きゃぁ―避けて!」
車のブザー音を鳴らしながら、運転席にいる女性が叫んでいる。
道の隅には俺の同じ高校の学生たちがいて、その先は崖。曲がったら確実に俺と一緒に誰かがに崖にICFしてしまう。
だが正面を行ったら、車と全力で正面衝突して俺だけ崖にICFしてしまう。
俺は何とかこの最悪の状態を避けようと、いままで動かさなかった脳みそを動かすが、死の恐怖で頭を支配していて働かない。
時は止まらず車は俺に接近している。もう駄目だ。俺はこのまま家族以外の女性と一度も話せないまま、天国にICFするのか……そんなの、そんなの!
「何でもするから助けてぇ―」
心の奥から出た言葉がこれだった。最後の言葉にしてはなんとも情けないな。
もう俺が死を受け入れようとした瞬間、どこからか声が聞こえた。
「――じゃあ、何でもしてもらおうかしら」
そんな声の主が俺の側面に現れて、俺の自転車に思いっきり蹴りを決めてきた。
「うわぁああああ」
俺は自転車ごと学生のいる反対側にに吹っ飛ばされた。まずい、このままじゃ石の壁に激突する。これじゃあ、俺の死因が【車との接触で死亡】から【壁に突っ込んで死亡】に変わるだけだ。まぁ幸い人がいなくてよかった……。
「少しは叫ぶのやめれないの?」
さっきまでいなかったはずの所に人がいる。いつの間? そんな疑問を思ってる間に、その人は続けてこう言った。
「そのまま状態でいなさい。さもなくは死ぬわよ」
もうわけわからんが、この声が神の助けと思って言うことを聞いた。その数秒後、すごい衝撃が俺の体全体を襲った。
「――ぐはぁ」
一瞬心臓が止まるかと思った。だが体に痛みはまったくない。普通壁と激突したら、骨折ぐらいするよな。でも今は体に痛みがない。
「た……助かったのか?」
自然に言葉が出ていた。それを助けた人が聞いたのか。
「当たり前でしょ。何せ私が助けたんだから」
俺は声のする方向を見ると、しなやかな長い青っぽい黒髪。水のように透き通っている瞳。あと言うならばとってもスタイルのいい女性だった。
そして同時に、俺が肉親以外の女性と初めての会話でもあった。俺と自転車を片手で止めた女性との初めての会話だった。
こんにちは、希光りょーすけです。
今回初めて作品を投稿してみました。
マイクロソフトのをそのまま貼ったせいか、いろいろ文正面ではおかしいですが、そこは少し目をつぶってください。ホントお願いします。
あの時はアナログ人間だったからこんなサイトあるとも知らず・・・
でも見つかったからいいです。
今はこれと同時に、MF文庫jの新人賞に投稿する作品も書いてます。
こんなですが、一応ラノベ作家希望者です。
これからはこっちも定期的に連載できるようがんばりますので、
これから応援よろしくお願いします
ps 感想でもいただけたら嬉しいです。