転生、そのまま日本で。
天界・転生管理本部。
今日も、日本からの「異世界希望者」の魂が列をなしていた。
「えーと、次の方。死因、転倒による頭部強打。最後の言葉は……」
『異世界……行けるかな……?』
天使がチラッと神様の方を向くと、
神様は溜め息をつきながら手を振った。
「もう異世界、混んでるから無理。」
「え? そんな理由で?」
「だって、日本人だけで三千万人くらい詰めかけてる。
魔王より転生者の方が多くなって、現地の世界崩壊しかけてるよ」
魔王城・地下三層、会議室。
「また来た! 新しい転生者が!」
「もう無理!
勇者(チート付)が一日に5人も来るんだよ!
魔王が過労で倒れたって!」
天界にて。
「ていうか、転生ってそんな簡単にしちゃっていいの?」
「最初は“かわいそうな事故死に救済を”って始めたんだけどね……。
今じゃ“死に際に異世界って言えばガチャ回せる”って思われてる」
「もはや転生ガチャ依存症ですね」
「じゃあ……逆に、“日本→日本”に転生させちゃえばよくない?」
天使たちがざわつく。
「それって……意味あるんですか?」
神様はニヤリと笑った。
「あるさ。ちゃんと『強くてニューゲーム』にしてあげればね。」
こうして始まった、
新プロジェクト──その名も、
**“Re:日本転生 〜俺、また東京で学生やってます〜”**
【事例①:28歳会社員 → 高校2年生】
「え、制服? ちょっ、俺こんな小さかったっけ……!?」
でも、なぜかクラスメイトの悩みが手に取るようにわかる。
部活では、異常な反射神経で卓球部のエースに。
恋愛? 余裕です。だって二度目の青春ですから。
【事例②:農村のばあちゃん → シティボーイ(3歳児)】
「よっこらしょ……あら? 足が短い……?」
気づいたら、保育園で天才児扱い。
言葉が達者すぎて先生を困らせる。
でも知っている……みそ汁の味で人は泣くということを。
【注意事項:】
・記憶はだいたい残ります(都合よく)。
・元の人生で失敗したスキルは最初からMAX。
・でも新たな人生でまた調子に乗ると、だいたいコケます。
【天界・再転生申請窓口】
「異世界がダメなら……せめて沖縄とか、北海道とか……」
「それ日本です。普通に旅行してください。」
■あとがき
異世界じゃなきゃやり直せないって、誰が決めたんでしょう?
今の世界で、もう一度スタートラインに立つ。
それだって立派な“転生”です。
強くてニューゲーム。
魔法はなくても、
あなたの中にしかない“チート”は、必ずあるはずです。
さあ今日もどこかでひとり、
「また日本に転生した人」が、ランドセルを背負って歩き出します。