逆・異世界転生 〜日本へようこそ〜
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天界、転生処理センター。
今日もせっせと人類の死後処理が行われていた。
「はい次、“トラックに轢かれた18歳男子、高校生、最後の言葉は『頼む、剣と魔法の世界でやり直させてくれ……!』」
「またかい。異世界転生希望ね。最近日本ばっかりだな」
パタパタと書類をめくる天使。
その横では、神様がやれやれとため息をついた。
「地球の中でも、ほぼ日本限定なんだよな。異世界転生ブーム……」
「アニメとラノベの影響ですね。死後も冒険したい、っていう」
「ならば——こちらもそろそろ、“異世界から日本に転生”を流行らせるべきじゃないか?」
「えっ、それって……」
神様はにやりと笑った。
「“日本転生”じゃよ。」
【異世界・魔王領】
魔王軍の若き将校グリオスは、英雄だった。
火竜を討ち、氷の迷宮を抜け、三賢者を打ち破った末、
最後の戦いでこう叫んだ。
「……生まれ変わったら、平和な世界でパンケーキを食べたい!」
ズドンッ!!
魔王城が崩れ、世界が光に包まれた。
目を覚ました彼の視界に映ったのは——
「冷凍庫からパンケーキ取り出してー!」という母の声。
そして、何かのラベルに記されたカタカナ。
「え、……日本語?」
彼は気づいた。自分が、
千葉県船橋市の中学生・桐谷リオとして転生していたことに。
異世界育ちの彼は、学校生活にとまどう。
なぜ授業中に剣を抜いてはいけないのか。
なぜパンケーキは魔力源ではなく、ただ甘いだけなのか。
だが彼は、知ってしまった。
コンビニのありがたさを。
YouTubeの偉大さを。
そして、満員電車の恐ろしさを。
【天界・転生統計課】
「最近、異世界からの“日本転生希望”が微増してます!」
「ふむ、パンケーキ効果かのう」
「日本の文化が異世界に浸透してるってことです。TikTokと味噌汁の影響が強いですね」
「いいぞ、バランスが取れてきた。“異世界⇄日本の双方向転生”、これからの時代じゃ」
ちなみに、
グリオス……改めリオくんは、将来YouTuberになる。
ジャンルは「異世界マナー講座」と「魔力の使い方 in 現代社会」。
コメント欄には、
異世界から転生したらしい視聴者の
「それめっちゃわかる」「剣持ってたら補導されたわ」などの共感があふれていた。
■あとがき
異世界転生ばかりがブームのように見える現代。
でも実は、異世界側も“こっちの世界”に興味津々かもしれません。
コンビニ、味噌汁、SNS、四季。
魔法もドラゴンもないけれど、
この世界にも、驚くほどの“異世界体験”が転がっているのです。
さあ——次に転生するのは、
向こうの勇者かもしれませんし、あなたかもしれません。