表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

神様、どの言語がおわかりで?

アクセスしていただきありがとうございます。

わかりにくい部分などありましたらご連絡ください。

ブックマーク登録などしていただけると、作成の励みになります。よろしくお願いいたします。

朝の神棚。

ひとりの日本人女性が、深く手を合わせた。


「神様……どうか、私を幸せにしてください……」


神様は、その声を確かに受け取った。


——が、

どこか遠くのロンドンでは、別の人が祈っていた。


「Dear God... please bless me with happiness.」


そしてパリでは、フランス人の老婦人が静かにつぶやく。


「Mon Dieu… rendez-moi heureuse, s'il vous plaît.」


——さて問題です。

神様は、いったいどの言語が得意なのか?


天界、神々の会議室。

“祈り翻訳局”の職員たちが、世界中の祈りデータを前に頭を抱えていた。


「最近の日本語、難しいんですよ。“バチクソ幸せにして”とか“尊い日々ください”とか……。翻訳が不可能に近い!」


「英語の“bless me”も幅が広すぎる! 恋愛か健康か、金か友情か!?」


「フランス語は……ああ、もう全部“情緒”で来るからこっちが泣くんですよ!」


そこへ神様が現れた。

全知全能・翻訳無双・時間感覚ふわふわ系の、あの神様である。


「ん〜? なんだい、みんな。言葉に困ってるのかい?」


「はい神様、人間たちの“幸せにしてください”が言語によって意味がバラバラすぎて……」


神様は、ふっと笑って言った。


「それ、音じゃないよ」


「え?」


「人間の“お願い”は、音じゃなくて**“感じ”で来る**んだよ。心の響きで。言語はただのラッピング」


天使のひとりが、興味深そうに訊いた。


「では、心がこもっていない“超美しい英語”と、どもってボソボソした“真剣なお願い”があったら……どちらを叶えますか?」


神様はちょっと考えて、こう答えた。


「どっちも、翻訳するよ。でも、心が震えてる方は自動的に優先される」


「……心の震え?」


「うん。涙の温度、声の揺れ、言葉の途中の沈黙。その“無音の語”こそ、私にとっての母国語だ」


つまり——


・英語でも、

・フランス語でも、

・関西弁でも、

・推しのライブで叫んだ“しんどい!”でも、


本当に心からの願いなら、神様には伝わるらしい。


ただし。


神様の方もたまに「それどういう意味?」と困惑することがあるらしい。


天界にて。


「神様、これは?」


「“うちらの尊みが爆発して宇宙になりました”……??? ああ、これはたぶん幸せってことだね」


「たぶん、って……!」


■あとがき

言葉は大切。けれど、言葉だけでは足りないこともある。

神様が聞いているのは“意味”ではなく、“祈りの振動”かもしれません。


翻訳不要の言語——それは、

涙と願いと、ちょっとした諦めのにじんだ声。


神様はたぶん、

あなたの「うまく言えない願い」も、ちゃんと読んでいます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ