神様の朝は、どこ時間?
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朝5時。
人々が目をこすりながら目覚め、トーストを焼き、駅へ向かう頃——
ある男は、神棚の前で手を合わせた。
「神様……どうか、プレゼンがうまくいきますように……」
深く一礼し、彼は出かけていった。
しかしその頃、
天界では、まだ“夜の部”が盛況だった。
神々の間では、「地球人からのお願い」が毎朝殺到することで知られていた。
この時間帯を、天界では**“祈りのゴールデンタイム”**と呼ぶ。
ところが困ったことに、地球には24の時間帯がある。
東京で朝7時でも、ニューヨークは夜6時。
ブラジルでは……よくわからないが昼過ぎだ。
つまり、「朝の願い」が世界中で一日中届いてしまうのだ。
天界カスタマーセンター、オペレーターのシンジくん(見習い神)は、
山積みの祈願リストを前に、溜息をついた。
「……えーと、これは…『明日の体育祭、晴れますように』。これはインド時間……午前6時?」
「神様、東京の“朝のお願い”って、何時を基準に叶えればいいんでしょうか?」
上司の八百万部の神、やおつね神は、眉をしかめて言った。
「日本時間でやると、ロンドンの人が怒る。グリニッジ標準時でやると、仙台のおばあちゃんが泣く。地球はめんどくさいんだよ」
「じゃあ……いっそ、神様の“マイ時間”を決めて、それに合わせれば?」
「うむ、つまり——**“神標準時”**だな?」
こうして、神々は会議を開いた。
日本時間に合わせたい東洋の神々
GMT推しの天使たち
南半球代表・太陽神アポロは「俺の昇る時間が“朝”だ」と主張
トリニダード・トバゴの局地神が「現地優先だろ?」と詰め寄る
結果、話は四十八時間に及び、結論は出ず。
最終的に決まったことはひとつだけ。
「祈る人の“心の朝”に合わせましょう」
つまり、神様の朝とは——
その人が「よし、始めよう」と思った瞬間。
まだ暗くても、昼でも、寝坊していても。
その人の決意の光が灯ったとき、
神様の時計の針が「朝6時」を指す。
というわけで、プレゼンの朝。
緊張する男がひそかに神棚に向かい、
「頼むぞ……」と呟いたその瞬間。
カチリ。
天界のどこかで、
神様の目覚ましが鳴った。
「お、おはよう私! よし、あの子の願い、ちょっと聞いてみようか」
■あとがき
人はしばしば「神様は寝てたのか」と嘆きますが、
案外本当に寝てるのかもしれません。地球の時間に縛られない神様が、
あなたの目覚めに合わせてそっと起きてくれるなら——
それはちょっとだけ優しい奇跡です。
起きた瞬間に祈ってください。神様にとって、それが一日のはじまりです。