七話
宇宙が騒がしい。
宇宙では戦闘が始まり宇宙船の残骸が惑星の大気圏で燃え尽きる。
無傷の宇宙船もいくつかこの惑星内に入って来ている。
それが解放軍か企業なのか分からないけど、機械人をいっぱい積んで来ているのだろう。
この惑星内が戦場になるのも時間の問題だ。
企業所属の機械人に会いたいが、そう上手く行かないだろう。
上手く行ったとしても、企業が保護してくれるかは分からない。
一応手土産があるけどそれが手土産として機能するか分からない。
こうしてみると分からない事だらけで嫌になる。
分かっている事は解放軍の目的は僕で、企業の目的は今の所、解放軍の排除だと思うから僕が目的では無いと思うが、やはり企業所属の機械人に会いたい。
僕の目的は生き残る事だから最悪の場合、解放軍に所属してでも生き残りたい。
でもそれは最後の手段だ。
今はそれよりも、僕の機械人の損傷をどうにかしないと。
足が少し動かしにくく、あちらこちらに散弾銃によって出来た傷がある。
企業がやっている修理屋に急ぐ。
あそこは夜遅くまでやっている。
そこなら企業の機械人に会えるかもしれない。
最もこの惑星が戦場になりつつある今、修理してくれるかは分からない。
でも修理するには其処しかない。
機械人を修理するには五大企業がやっている修理屋に行くしかない。
機械人の製造から修理は五大企業の管轄で、そこ以外では基本的に出来無い。
そのせいで五大企業は他の企業に比べて圧倒的に儲かっている。
僕はなるべく早く修理屋に向かった。
修理屋は一応開いて居た。
だが修理士さん達は落ち着かず、ソワソワしていた。
僕は機械人から君世と共に降りて、知り合いの修理士さんに修理を頼んだ。
「今それどころじゃないんだが。宇宙が騒がしいし、宇宙船が何隻か降りて来ている。此処が戦場になりそうだしな。だがお前さんの両親には世話になったからな、修理してやるよ。」
「それにしても、えらい別嬪さんを連れているじゃねぇか。」
「お前さんのアンドロイドか?。」
「ウチの若い奴等の目の毒だぜ。ガハハ。」
そう言って笑いながら、修理を開始し始めた。
「おらお前等! 別嬪さんに見惚れて無いで修理開始するぞ。」
修理士のオジサン、忠志さんは此処のリーダー。
そして僕の幼馴染のお爺さん。
昔両親に世話になったとかで何かと世話をやいてくれる人だし、僕と忠志さんの孫が幼馴染な事もあり、優しくしてくれる人だ。
君世はそんな忠志さんの事を、
「妾を不躾な目で見ぬとは良い奴なのじゃ。」
そう言った君世に対して忠志さんは、
「儂は妻一筋だからな。妻が居なければ此処の若い奴等みたいに見てただろうよ。」
「そんな事よりも、お前さん今この惑星で起こっている事を知っているか?。」
「所属企業からは詳しい情報が来て無いんだが。」
僕は頷いた。
「やっぱりか。お前さんの機械人は戦闘した跡があるからな。」
「良ければ教えてくれれないか?。」
忠志さんがそう聞いてきたので、僕は起こった事を教える事にしたが、僕の代わりに君世が喋った。
「其処のコクピットに入っている下種が若様の両親を殺し、解放軍とやらに入れようとしたのじゃ。」
「今若様を狙って解放軍がこの惑星に来ていて、企業と戦闘しとるのじゃ。」
「若様は企業の方に付くことにしたのじゃ。」
君世はこれまでの事を簡潔に話した。
すると忠志さんは、
「そうかお前さんの両親はコイツに殺されたか。」
「辛いなお前さん。」
「儂も辛いな。お前さんの両親にはいっぱい世話になったってのに。恩を返せなかった。」
「お前さんの両親を殺したクソヤロウはどうするんだ?。」
忠志さんが怒りのこもった声で聞いて来たが、またも僕より先に君世が応えた。
「若様はこの下種を企業に渡す事で、企業に保護して貰おうとしているのじゃ。」
「まだまだ若様の役に立って貰わねばならぬのじゃ。」
そう言った君世に対して忠志さんは引き気味で、
「そ そうか。お前さんがそこまで考えているなら、儂は何も言わん。」
「企業に渡されるとしたら、ただではすまんぞ。自業自得だが可哀想だな。」
それに対して君世は、
「可哀想に思う必要は無いのじゃ。この下種は若様の役に立つのじゃ。光栄なのじゃ。」
僕と忠志さんは君世に引いた。
僕はオジサンを手土産として生かしたが、そこまで考えて無い。
ちょっと君世は僕の事になると過激だ。
それにまだまだとは、オジサンが今まで僕の役に立っていたみたいな言い方だ。
確かに君世の言う通りオジサンには、機械人の操縦などのアドバイスを貰ったりしたが、何故その事を君世が知っているのか?。
まぁその事は今どうでもいいか。
別に知って居ても問題無いし。
そんな事よりも僕の機械人はいつ直るのか、それが心配だ。
忠志さんは、
「お前さんが解放軍に狙われているなら、さっさと直してやりたいが、少し時間が掛かる。」
「今代わりの機械人を中の奴等が持って来る。一先ずそれで此処から離れな。」
「お前さんの機械人はちゃんと直してやりたいからな。」
「この惑星内も戦場になるなら、少しでも安全な場所にいろ。」
「修理屋は狙われるかもしれん。企業の管轄だからな。」
「それにしても何でお前さんがテロリストに狙われているのかねぇ。そんなにお前さんが欲しいのか?。」
「若様が訓練所の機械人を倒したからなのじゃ。」
「訓練所の機械人を倒せる人はそうそう居らぬのじゃ。」
「それに若様はマニュアル操縦が出来るからなのじゃ。」
「そういえば訓練所の機械人を倒したなお前さん。」
「あの時は盛大に祝ったな。」
「いつか企業からスカウトが来ると思っていたが、テロリストに先に見つかるとはな。」
「そこに転がっている下種が、訓練所に勤務しているのじゃ。」
「訓練所の教官がテロリストだったてのか!。 それで企業よりも先にテロリストがお前さんに気付いたのか。」
「おかげでこの惑星は戦場になるし、お前さんの両親は殺された。余計な事しかしないなこのクソヤロウは。」
「一応お前さんの事を儂が所属している企業に言ってみるが、助けてはくれるだろうがそれで戦闘が終わるかは分からないな。」
「さっきは此処から離れろと言ったが、お前さんは此処にいたほうがいいかもな。」
「企業に保護して貰うなら此処が分かりやすいからな。」
「お前さんは保護される企業は、儂が所属している企業、地凪でいいのか?。」
僕は頷く。
企業によって機械人のアップグレードなどに傾向があるが、アップグレードをしてくれるのは変わらない。
地凪は五大企業の中では、マニアックというか変人の集まりと言われている。
その為、機械人のアップグレードが少々突き抜けている所がある。
だが忠志さんが所属しているので、必然的に地凪になるが。
忠志さんが連絡してくれている間にも戦場は拡大する。
宇宙は宇宙船が埋め尽くし、地上は機械人達が戦闘している。
今の所企業側が押されている。
解放軍とやらは、相当な戦力をこの惑星に投入しているようだ。
かといって今の僕に出来る事は無い。
仮に此処の機械人を使わせてもらっても、企業所属でも解放軍所属でも無い僕が戦場で暴れ出すと、迷惑でしか無い。
此処に残ってオジサンがコクピットから逃げ出す事の無い様にしなければならないし。
オジサンには企業に保護されるまで生きてもらわないと。
忠志さん達が僕の機械人を修理し始めて暫く経つと、修理屋に機械人がやって来た。
数は3体、その機械人が企業の機械人では無く、幼馴染家族のだと分かると僕は生きていたのかと思った。
まぁ忠志さんが何時も通りだったから生きているとは思っていたが。
それにしてもどうして此処に来たのか。
忠志さんが心配だったのだろうか?。
幼馴染とその両親がこちらに向かって来る。
「上世くんも無事だったんだね。ご両親は一緒じゃないのかい?。」
そう言って話しかけて来たのは、忠男さん。
忠志さんの息子で、幼馴染のお父さん。
「上世くんも無事で良かったわ。」
そう言ったのは、真紀子さん。
忠男さんの妻で幼馴染のお母さん。
「上世の隣りにいるのは誰なのかしら?。」
最後に幼馴染の弥奈が話しかけて来た。
弥奈は僕の無事より君世が気になるらしい。
すると君世が、
「妾は君世なのじゃ。」
そう言って挨拶をした。
それに対して弥奈は、
「上世のアンドロイドという事かしら?。」
「随分と美人で色々大きいのね。」
「そうか誕生日になったから政府からアンドロイドと機械人が贈られたのか。 誕生日おめでとう。」
「誕生日に何も出来無くてごめんなさいね。」
忠男さんがお祝いの言葉を、真紀子さんが謝罪を口にした。
僕はありがとうと、謝罪は必要無いと言った。
そんな事よりも今の状況と、どうしてこうなったとかを話した。
すると3人共絶句した。
特に両親が死んだ事にショックを受けたようだ。
「なんて事だ。上世くんのご両親が殺されたとは。」
「上世くん何時でも頼っていいからね。」
「上世は大丈夫なのかしら?。」
3人共僕を心配してくれた。
僕は大丈夫といい、解放軍が僕を狙って来るから此処は危険だ、と言って3人を此処から遠ざける事にした。
すると忠男さんが、
「確かにそうかもしれないけど、上世くんを1人にするのは。」
「私達に出来る事はないかしら?。」
それに続いて真紀子さんが僕に話しかけて来た。
僕は正直3人共此処から安全な場所へ行って欲しかった。
此処で戦闘になった場合、3人を守りきれないかも知れない。
だからこそ僕は3人に、避難する様に言った。
そうすると、忠男さんと真紀子さんは、
「上世くんからしたら僕達は頼りないかも知れない。」
「だから今僕達が出来る事は無いから僕達は、近場の開設された避難所に向かう事にするよ。」
「お互い生きてまた会おう。」
そう言って忠男さんは真紀子さんを連れて自分達の機械人に向かう。
3人のアンドロイドはどうやらコクピットに居るようだ。
真紀子さんが、
「弥奈、一緒に避難所に向かうわよ。」
そう言ったが弥奈は、
「此処に残るわ。お爺ちゃんに会って無いし、上世を放って置けないわ。」
弥奈はそんな事を言い出した。
「お爺ちゃんは避難所に来るだろうから、今はいいのよ。それよりも上世くんの邪魔になったらいけないわ。」
「そうだぞ弥奈。」
幼馴染両親が弥奈を呼ぶ。
だが弥奈は、
「私此処に残るからお父さんとお母さんは避難所に行っていいわ。」
そんな娘を見て幼馴染両親は、
「すまんな上世くん娘の我儘聞いてくれないか?。」
「家の子がごめんなさいね。」
そう言ってきたので、仕方なく頷く。
そこで丁度忠志さんが戻って来た。
「お前さんを地凪は保護してくれる様だからお前さんは此処にいろ。 手土産があったのが良かったらしい。」
「忠男と真紀子さんと弥奈ちゃんも来てたのか。
状況は分かっているか?。」
「親父、状況は分かっているからこれから避難所に行くつもりだが、弥奈が此処に残るつもりで。」
それに対して忠志さんは、
「儂も此処に残るから弥奈ちゃんの面倒は見るぞ。」
「親父も此処に残るのか。 だったら僕達も此処に残るよ。」
そう言って忠男さん達は引き返して来た。
僕は自分の思い通りにいかず、少しガッカリした。
そんな僕を君世は慰めてくれた。
「若様。機械人のコクピット内にいれば、そうそう死なぬのじゃ。」
そう言っているが、つい先程コクピット内にいる解放軍の人を殺したばかりなので、安心出来無い。
コクピットは無事でも、ミナト粒子が無くなれば死ぬのだ。
いつ此処まで戦火が広がるか分からないのにみんな呑気だ。
僕は溜息を吐きながら迎えが来るのを待った。