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四話

 昨日は君世と共に眠った。


君世はアンドロイドなので、匂いなどしないが、緊張して寝れ無かった。


最も匂いがする様に変更する事も出来る。



 「おはようなのじゃ。若様。」



君世はそう言った。


僕は返事をして起き上がる。


 今日は学校に行く日だ。


服を着替えてリビングへ向かう。


君世の服はアンドロイドに支給される標準服だから、着替える必要は無い。


標準服は同じのが何着か有るので、今はそれでいいけど、早めに君世用の服を買ったほうがいい。


そんな事を思っていると君世が、



 「若様。今君世の服などはよいのじゃ。これからお金を稼いでからでよいのじゃ。」



そう言ってくれた。


僕は今お金が余り無いので、君世の申し出は有り難かった。


 リビングへ向かい朝食を食べる。


父は相変わらず挙動不審で、そんな父を君世は軽蔑した目で見ていた。


母が、



 「おはよう。二人共。丁度朝食出来たわよ。」



と言った。


そんな母に対して君世は、



 「ありがとうなのじゃ。母様。」



そう返事をする。


すると父も、



 「お、おはよう二人共。」



と言ったので僕は返事をしたが、君世は父を無視して食卓に着いた。


父は君世の態度に対して思う事が有り、何か喋ろうとしたが、母に睨まれて口を閉じた。


 アズサとカケルが機械人の点検を終えて、リビングに入って来た。



 「「おはようございます。若。」」



何時もどうりの挨拶をした。


そこで僕は君世は機械人の点検などしていないが、大丈夫かと思ったが、昨日来たばかりなので、必要無いかと思った。


 六人揃ったので、朝食を食べ始める。



 「今日から機械人に搭乗して学校に行くけど大丈夫?」



母が心配そうに聞いて来た。


すると父が、



 「心配無いさ。何せ訓練所の戦闘用にアップグレードしてある機械人を倒したのだから、操縦はお手の物だろ。」



そう父が言ったので頷き返した。



 「戦闘に巻き込まれる事さえ無ければ、何も問題無いさ。」



父の僕を信頼してくれた発言に嬉しくなった。


 僕と君世は朝食を食べ終えて、学校に行く準備をする。


歯を磨き、鞄の中身を確かめる。


もっとも持って行く物は、授業に使う端末だけだが。


 準備をし終えると、ガレージに向かう。


丁度両親もガレージに行く所だったので、一緒に行く。


エレベーターに乗りコクピットまで向かう。


エレベーターの中では、誰も喋ら無かった。


 エレベーターが着くと、皆それぞれの機械人に向かう。


コクピットに入る前両親が、



 「気を付けて行ってらっしゃい。」



 「事故を起こすなよ。」



そう言った。


僕はそれに頷き、コクピットに乗り込んだ。


 


 コクピットに乗り込み、機械人のメインシステムを起動させる。



 【メインシステム起動】



そうアナウンスされシステムが起動する。


それに伴いコクピット内が明るくなり、前や後ろに有るモニターにも電源が入る。


その後、



 【ミナト粒子を散布開始します】



それでミナト粒子が散布され始める。



 【ミナト粒子散布完了】



ようやく機械人を動かせるようになった。


僕はゆっくりとガレージから出る。


ズシン、ズシンと音を立てながら機械人がガレージから出る。


すると君世が、



 「妾と共に行く始めての学校なのじゃ。」



それに頷き、機械人を動かす。




 ガレージを出ると、機械人専用の歩道を歩く。


今は朝の忙しい時間帯。


歩道には僕以外の機械人が沢山いる。


大体の人は機械人を自分用にアップグレードしているから、色も人それぞれ。


僕はまだ何もしていないので初期のまんまだ。


すると僕に話し掛けて来た機械人がいた。


訓練所のオジサンだ。


訓練所のオジサンは、



『よう坊主。やっと自分専用の機械人を手に入れたか。良かったな。』



それに僕の機械人が頷く。



『相変わらず無口だな坊主。まぁいいけど。』



『坊主はこれから学校だろ。途中まで一緒に行こうぜ。』



僕の機械人は頷く。



『それにしても坊主の機械人、動きが滑らかで綺麗だな。やはりマニュアル操縦か?』



僕はそう聞かれたので頷く。



『やっぱりか〜。訓練所の機械人を倒すぐらいだし、それぐらい出来るか。此処らへんでは、坊主だけだしな。マニュアル操縦出来るの。凄い事だよ。気持ち悪いけど。』



そう言ってオジサンはゲラゲラと笑う。


それに対して君世が、



「妾品の無い奴は嫌いなのじゃ。勿論若様は別なのじゃ。」



そう言った。


僕は別なのか。


やはり僕以外の男に厳しい気がする。


君世は僕の事をどう思っているのだろうか。


今考えても仕方ない。


急にオジサンが、



『なぁ坊主。昨日のニュース見たか?』



そんな事を聞いて来た。


僕は頷く。


するとオジサンは満足そうに、



『惑星シクサが地球人類解放帝国と、五大企業の争いで消滅したのあれどう思う。』



僕はどう答えようか考えていると君世が、



『若様がどう思おうと若様の勝手でお主には関係ないのじゃ。』



突然喋り出した君世に僕とオジサンは驚いた。


オジサンは、



『驚いた。今の坊主のアンドロイドか? 坊主の代わりに答えるなんて、いったい幾らの金を掛けてアンドロイドを変更したんだ。』



『妾は妾なのじゃ。』



答えになってない。


それでもオジサンは納得した様子で、



『そうか。坊主はやっぱり。 いやまぁ関係ないと言えば関係ないし、関係あると言えば関係ある。曖昧な所だ。』



オジサンの言葉は理解出来無かった。


僕が地球人類解放帝国と関わりがあると、思われているのだろうか。


そんな事は無い。


僕は無関係だ。


その事を僕の代わりに君世が、



『若様には関係ないのじゃ。』



と言ってくれた。


その答えにオジサンは、



 『そうか。関係ないか。悪いな坊主。』



そう言って黙ってしまった。


それからしばらく機械人の歩く音だけが聴こえる中オジサンが、



 『まぁ坊主みたいな自己完結して無口な奴は、代わりに喋ってくれる存在がいたほうがいいわな。』



それに対して僕は頷き返した。



 『ワハハ。其れでこそ坊主だ。』



そう言って満足そうに言った。



 『じゃあな坊主。俺は訓練所に向かうぜ。余り人は来ないが。』



そこでオジサンと僕は別れた。


すると君世が、



 「若様は気にせず若様が思うように生きれば良いのじゃ。」



そう君世が言うので、頷き返した。


その頷きに満足したのか君世はそれきり喋ら無かった。


僕は前に立っているので、君世が妖しく笑うのを見ることは無かった。





 学校に着いて学校の機械人専用ガレージに機械人を停める。


ガレージは広すぎて空いている所がいっぱいあった。


コクピットから君世と共に降りてエレベーターに向かう。


すれ違う生徒達は皆君世を見ている。


特に男子は君世にいやらしい視線を向けて、前屈みになっている奴もいる。


僕は君世をいやらしい目で見ている男子達に対して、不愉快になるのと同時に、ちょとした優越感を感じた。


君世はそんな男子達を不愉快そうに見ている。


僕以外の男には皆こんな感じなのかと、改めて思った。


エレベーターに着き中に入ると、誰も入って来なかったので扉を閉めて地上に向かう。


エレベーターの中で君世が、



 「妾の所有者として優越感を感じたかぇ~。そのまま気持ち良くなっておくのじゃ。」



そう囁かれて僕は興奮した。


その様子を君世は楽しそうに見ている。


僕は恥ずかしくなって君世から視線を外した。


エレベーターが地上に着き校舎に向かう。


 教室に行くまでに何度も絡まれた。


その度に君世は



 「近寄るな下種共。」



そう言って堂々と僕の後を付いて来た。


さっきの事を思い出し、僕は優越感を感じた。




 教室に入ると今まで騒がしかった教室が静かになった。


皆君世を見ている。


それから僕が席に着くと女子達が、



 「何あれ。」



 「男の欲望丸出しで気持ち悪い。」



「サイテー。」



などと言った話し声が聴こえた。


僕は急に恥ずかしくなった。


そんな君世は僕の隣りに座り平然としている。


すると男子達がよって来て、



「なぁなぁどれだけアンドロイド変更すればこんなになるんだ?」



「金はどのくらい掛かる。」



「おっばいでっけ。」



などと話し掛けて来た。


何時もは僕の事どうでも良さそうにしているのに、君世を連れて来ただけでこの有様。


すると突然君世が、



 「妾に触れようとするな下種。」



そう言って一人の男子を突き飛ばした。


そして直ぐ様手を机に擦り着けていた。



 教室は騒然とした。


突き飛ばされた男子はピクリとも動かない。


女子が悲鳴をあげた。



 「キャーーァ。」



「おいおいやべーって。」



「俺知らねぇ」



 「誰か先生呼んで来い。」



僕は唖然とした。


君世が此処までするとは思わなかった。


確かに触ろうとした事は許せないが、此処までする必要はあっただろうか。


すると君世は、



 「一回こういう事を許すと調子に乗るのじゃ。だから分からせる必要が有るのじゃ。」



僕は君世の言葉に納得してしまった。


君世はそんな僕を見て満足そうに頷いた。


 

 そんなやり取りをしている内に先生が来て、突き飛ばされた男子の様子を診て、



 「皆さん大丈夫です。少し気を失っただけです。皆さん冷静になって下さい。」



先生がそう言ったら、皆徐々に冷静になっていった。



 「それと、この惨事を起こした者は指導室に来なさい。先生は保健室によってから行きます。」



そう言って保健医を呼びに行った。


僕は素直に指導室に向かった。




 指導室で待っていると、先生がやって来た。


三十代の女の先生だ。


先生が、



 「どうしてあんな事になったのかしら?。」



そう聞いて来たので、何が起こったか話した。


すると先生は、



 「事情は分かったわ。でもやり過ぎだと思うわ。アンドロイドは人間よりパワーがあることは知っているでしょう。あの程度で済んで良かったわよ。」



先生がそう言ったら君世が、



 「加減くらいしておるのじゃ。一回分からせねばならんのじゃ。」



それに対して先生は、



 「驚いたわ。此処まで自我が有るなんて。相当お金を使って変更したのでしょうね。」



僕は初めからこうだった事は言わないでおいた。



 「他人のアンドロイドに無闇矢鱈に触れるのは、セクハラになるから貴方達だけが悪いわけじゃないけど、正当防衛にしてはやり過ぎよ。しかも今回は触れる前だったみたいだし。」



そう言われた。



 「幸いなんとも無い様だから貴方は彼に謝っておきなさい。」



それは言われずともちゃんとする。


先生はそんな僕に満足したのか、



 「もう教室に戻りなさい。次からは、こんな事起こさないでね。」



そう言われた。





 教室に向かう途中に君世が、



 「若様。謝る必要は無いのじゃ。」



そう言った。


僕はその言葉に反論した。



 「若様が謝る気なら妾はもう何も言わぬのじゃ。」



それきり黙ってしまった。




 教室に着くとまた静かになった。


今度は男子達から、



「アイツヤバすぎる。」



 「触ろうとしただけなのに。」



 「近寄るま。」



などの声が聴こえ、女子からは、



 「触ろうとするとか変態じゃん。」



 「突き飛ばされても文句言えないでしょ。」



 「これだから男子は。」



などと言った声が聴こえた。


僕は突き飛ばしてしまった男子の所に行き謝罪した。


するとその男子は怯えた様子で、



 「あぁ。こ、こっちこそ悪かった。」



それきり僕達の方を見ようともしなかった。




 何時も通りの授業を終えて帰宅する。


君世はあれから黙ったまんまだ。


何を考えているか分からない。


機械人のコクピットに着くと漸く喋った。



 「さぁ若様家に帰るのじゃ。」



なんだか少し急かしてきたので、急いで帰る事にする。



 コクピットに搭乗してシステムを起動させる。


それからミナト粒子が散布されコクピット内に充満する。


僕は機械人を操縦して家に向かった。





 家に着くと、訓練所のオジサンの機械人がいた。


何しに来たんだろう。


プレゼントでも持って来てくれたのかな。


毎年オジサンは僕にプレゼントを持って来てくれるし、昨日は僕が寝ていて、オジサンが来たのに気付かなかったかもしれない。


きっとそうに違いない。


僕は機械人をガレージに停めた。


両親はもう帰っていた。


僕は直ぐ様家に入った。


君世があれから一言も喋らなかった事に気が付かずに。


家に入って違和感に気が付く。


何時もアズサとカケルが迎えてくれるのに、今日はいない。


多分オジサンのアンドロイドと共にいるのだろう、と思う事にした。


リビングに着くと両親とオジサンがいた。


オジサンは刀を持っていて、足元にはアズサとカケルの首が転がっていた。


よく見ると両親は気を失っていた。


僕に気付いたオジサンが、



 「誕生日おめでとう坊主。昨日誕生日プレゼント持って来れなくて悪かったな。今日ちゃんと持って来たぜ。」



そう言って両親に刀を向けた。


この日僕の平和な日常は最悪なプレゼントと共に終わった。



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