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第4話 【聖女】

 アリアとルークは、自宅の廊下を静かに進みながら、緊張に包まれていた。彼女の家に聖女ミリアがわざわざ訪ねてきたというのは、並大抵のことではなかった。


 聖女が直接来訪する理由は何なのか、アリアにはその意図がはっきりとわからなかったため、一層不安になり、心をざわつかせた。


 二人が足を止めたのは、アリアの邸宅でもとりわけ広々とした応接室の扉の前だった。重厚な木製の扉には、彫刻が施されており、その表面には荘厳な装飾が輝きを放っている。


 扉の先に待っているのがただならぬ存在であることを、部屋全体の静寂と共に暗示しているかのようだった。アリアは深呼吸を一度してから、扉の向こうにいるであろう聖女ミリアとの対面に心を準備した。


「準備はいいですか?」と、ルークが静かにアリアに尋ねる。


「ええ……ありがとう」と、アリアは小さく微笑みながら応えた。そして、ルークとともにゆっくりと扉を開けた。


 扉の向こうの応接室は、アリアの家の中でも最も格式が高い部屋の一つで、美しいシャンデリアが天井から吊るされ、部屋全体をまばゆい光で満たしていた。壁には重厚な絵画が飾られ、細やかな模様の施されたカーペットが足元に広がっている。


 豪奢な家具が整然と並び、全体として品格を感じさせる空間だが、それ以上にその中心に座している聖女ミリアの存在が部屋をさらに神聖なものにしていた。


 聖女ミリアは、どこか超然とした佇まいをしており、白い衣を身にまとっていた。そのローブは柔らかく光を反射し、まるでシルクのように滑らかで、動くたびに繊細な輝きを見せる。彼女の姿は、まるで天界から舞い降りた天使のようで、その美しさは思わず息を呑むほどだった。


 長く流れるような髪が肩にかかり、陽の光が射し込む窓の前で柔らかく揺れている。彼女の顔立ちは驚くほど整っており、眉は静かに引き締まり、澄んだ瞳には知恵と慈愛が溢れていた。だが、深い瞳の奥には、秘められた決意が浮かび上がっているようにも見えた。


 アリアとルークが部屋の中央まで進むと、聖女ミリアは穏やかな微笑みを浮かべながら二人を見つめ、軽く会釈をした。アリアとルークは聖女ミリアと向かい合って座った。ミリアは優雅に微笑みを浮かべ、ゆっくりと口を開く。


「アリア様、そしてルーク様。お二人にお会いできて光栄です。

 早速で申し訳ないのですが、まずは、私からお詫び申し上げなくてはなりません。」


 アリアは驚きの表情を浮かべた。聖女がわざわざ自ら謝罪を口にするとは、予想もしなかったことだ。どうして謝る必要があるのだろうか。


 ミリアは一息つき、再び言葉を続けた。


「実は、アリア様を未開の地の領主にするよう、王にお願いしたのは、私なのです。」


 突然のその言葉に、アリアは驚きを隠せなかった。自分の運命を左右する決定が、目の前の聖女によってなされたことに、心の奥がざわつく。


「なぜ私を……?未開の地の…領主に?」


 アリアは絞り出すように問いかけた。


 ミリアは静かに頷き、その質問に真摯に応えるように続けた。


「私には預言の力があります。かつての預言者達は神より言葉を授かり、これまで何度もその導きによって国難を乗り越えてきました。


 そして、私にも数年前から『〇〇を未開の地の森の領主にせよ。さもないと国難を乗り切ることが出来ぬ』とお告げが何度も続いていたのですが、その者の名を正確に聞き取ることはできませんでした」


「しかし、貴方の婚約破棄の知らせが届いた夜、私がいつもの通り、神に祈りを捧げていると、神の声が聞こえ、『ヴェルノーク・アリアを未開の地の森の領主にせよ』とはっきりと聞こえたのです。」


 アリアは、突然自身の名が神の声と共に告げられたという運命的な告白に、思わず背筋を伸ばした。言葉の重みを感じると同時に、何か大きなものに飲み込まれそうな圧迫感も覚える。


「ですから、私は以前から開拓の準備をお願いしていたルーク家にすぐ連絡を取り、貴方の補佐をするようお願いしたのです。ルーク家は私と昔からの交流があり、信頼できる家系ですから。」


 その言葉に、ルークは驚いた顔をする。


「父からは理由を一切教えてもらえず、ただ開拓の準備だけを進めるようにと指示されてましたが、まさかそんな経緯があったとは……」


 彼も驚きを隠せないようだった。


「ごめんなさい、預言の言葉が不完全だったから、一部の信頼できる人にしか話してなかったのです。」


 アリアはふと疑問が浮かび、再び問いかけた。


「そもそも、なぜ私が神に選ばれたのでしょうか?他にも適任がいたのではないでしょうか……」


 ミリアは少し微笑みを浮かべ、


「実は神の言葉に続きがあって、私には理解出来ませんでしたが、貴方には『ネットショッピング』というスキルをあなたは持っているとお告げありました。」


「ネットショッピング?」アリアはその言葉に耳を疑った。ネットショッピング、それは彼女の前の世界で聞いたことのある言葉だった。転生前の自分が使っていたもので、何度もオンラインで買い物をしたことがあった。だが、ここではまったく異なる世界だ。そんな言葉がなぜ出てきたのか理解できなかった。


 しかし、『ネットショッピング』というスキル……。もし本当に前世のネットショッピングが本当に使うことが出来れば、開拓に大いに役立つことは間違いないが............


 そもそもこの世界でのスキルとは一体どういう意味なのであろうか。ゲームや漫画に出てくるスキルはそれぞれ意味が違うこともあるため、改めて聞いてみたほうがいいかもしれない。


「今更で申し訳ないのですが、スキルとは一体何なのでしょうか?」


 アリアが尋ねると、ミリアは説明を始めた。


「スキルとは、神が魔法の力によって一部の人々に授けられた特別な力です。スキルを持つ人は巨大な火や滝のような水を出せるようになったり、なかには傷薬であるポーションを材料を一切使わず作成できる錬金術師のようなスキルを持つものいたと聞いたことがあります。


かつて人間と魔王との戦争とのなかで、スキルを持つ人はたくさんいたらしいのですが、戦争が終わった後は、だんだんとスキルが使える人が減り、平和になった今はスキルが使える人はほとんどいないのです。」


 アリアはその説明を聞きながら、スキルが特別な力であることを理解したが、具体的にどうやって使うのかが全くわからない。


「あの...聖女様の預言者というのも、スキルだと思うのですが、どうやって使われているのでしょうか。」


 その言葉にミリアの顔が曇る。


「ごめんなさい。私は今までスキルを使おうと思って使ったことは一度もないのです。神の声が聞こえてくる以外、他の人と何も変わらないのです。」


 その言葉を聞き、ルークにも視線を向けるが、首を横に振った。どうやら私の周りでスキルを使える人はいなさそうだ。


「あなたが神からスキルを授けられたのは、きっと神が開拓を上手く進めるためなのプレゼントなのでしょう。なのであなたのスキルが発揮されるべき時が必ず来ると私は信じています。そして、いずれ来たる国難の時にも、そのスキルが役立つと思うのです。」


 アリアは静かに頷き、覚悟を決めた表情で答える。


「わかりました。このスキルが開拓や国のために使えるのなら、できる限り努力してみます」


 自分がどのようにスキルを使えばよいのかは分からなかったが、自分の家の名誉のためにも、必ず開拓を成功させると覚悟を決めた。

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