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初陣前夜

これは砂塵が渦巻く世界に生まれ落ちた、1人の少女の物語。


宿命に翻弄されながらも生き抜くことを決めた、はかない命の鎮魂歌。

フランツは自室に寄って出発の準備を整えた後、サキの部屋へと向かった。

この船は小ぶりな割に中が広く、通路が多い。

ため息交じりにダラダラ歩いていると、途中で整備員たちの立ち話が聞こえた。


「第3シェルターの噂聞いたか?」

「ハンマーの魔人だろ?トールって呼ばれてるらしいな。」

「あぁ、憲兵隊は全滅。転生者も行方不明だろ?分隊長が焦る理由も分かるぜ。」

「最近は転生者狩りの話も聞くし、物騒になってきたよな。」

「今月も1人転生者がやられたらしいぞ。先月は2人。いよいよヤバいって。」


嫌な話を聞いたな。

俺らは最悪のタイミングで転生してきたみたいだ。

フランツのため息は一層深くなり、ようやくサキの部屋に着いた。



扉を2回ノックすると、中から元気な声が聞こえた。

「はーい!ちょっと待ってねー。」

どたどたと足音が聞こえて、扉が開く。

「いらっしゃい!そろそろ来るかなって思ってた。」

「おう。邪魔するぜい。」

「邪魔するんなら帰ってやー。」

「はいよー。」

「アンジュちゃんがいないと突っ込む人もいないね。」

「まあ、挨拶みたいなもんさ。アンジュも後で来るってよ。出発まで暇潰していいか?」

「うん。ゆっくりしていって。珈琲飲む?」

「あぁ、頼むよ。」


コポコポとお湯が沸く音がして、台所にいるサキが背中越しに話す。

「今回の任務、大丈夫なの?」

「あぁ、問題ないさ。俺らの戦力なら十分対応可能って分隊長も言ってたぜ。」

「なら、いいんだけど。最近あんまし良い話聞かないし。」

「第3シェルターの話か?」

「うん。ヒデジイが言ってた。心配だなって。転生者も襲われてるんでしょ?」

「らしいな。」

ゴリゴリと珈琲豆を挽く音がする。

漂ってくる良い香りも、なんだか今日は曇っている。

「まあ、心配事の9割は起きないって言うぜ。ちゃんと帰ってくるから、心配すんな。」

「うん…。待ってるよ。」

サキはマグに入れた珈琲を持ってきた。

この世界にも珈琲があって良かった。

言葉が無くても、同じ時間を過ごせる。

やり場のない気持ちも、苦さと一緒に飲み込んでいく。



サキとフランツ、アンジュの3人は、同じ時にこの世界に転生してきた。

それもあってか、この3人はいつも一緒に過ごした。

歳も性別も、背景もバラバラだが、不思議な繋がりを感じていた。

しかし、サキに対する周りからの風当たりはいつも厳しい。

なぜなら、この3人の転生召喚は、”いわくつき”だったからだ。

3人が聞かされた当時の様子はこうだ。


その当初、2人の転生者を召喚する予定が、途中で事故が起こり、結果として3人が召喚された。

それが、サキ・フランツ・アンジュの3人。

フランツとアンジュは、強力な異能を身に付けていた一方で、サキには能力が無く、さらに転生前の記憶も失っていた。

サキはこの不遇のせいで、周りからは”おまけ”だの”無能者”だの言われる始末。

それを見かねた召喚士長のアドラーは、フランツとアンジュが第7分隊へ配属された時、サキも一緒に同行させ、砂漠の船”ナグル”に乗せたのだ。


フランツは、当時の様子を調べるために本部へ問い合わせたが、事件の資料について閲覧制限がかかっており、詳細を確認することが出来なかった。



しばらくすると、アンジュがやってきた。

「邪魔するぜー。」

陽気な関西人が部屋に入ってきた。

「おせーよ、アンジュ。珈琲も冷めちまうよ。」

「フランツ君、乙女のお支度には時間がかかるのだよ。」

「アンジュちゃん、いらっしゃい!クッキー焼いたの!食べる?」

「うーん食べる食べる!お茶しよー!」

「えっなんか俺の時と雰囲気違うくね?」


女子がキャピキャピしているのを横目に、フランツは冷めかけの珈琲をすする。

ずっとこんな時間が続けばいいと、心底思った。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

初めて書いた小説です。


皆様に楽しんでいただけるような作品に仕上げたいです!

ド素人のつたない文章ですが、ぜひ、皆様のご意見・ご感想をお聞かせください。


よろしくお願いします!

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