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晩御飯は今日もカレー

これは砂塵が渦巻く世界に生まれ落ちた、1人の少女の物語。


宿命に翻弄されながらも生き抜くことを決めた、はかない命の鎮魂歌。

「帰ってきたぞー!」


誰かがそう叫んで、少女も外を見てみると、遠くでデザートバイクが上げる砂煙が見えた。

大きく息を吸って手を振ると、甲板を駆け出しハッチに向かう。


話したいことが、沢山ある。

暇すぎて本を何冊も読み終わったことやサルベージャーのおじさんにからかわれたこと。

岩山の上でジプシーの一団を見かけたことや晩御飯が毎日カレーだったこと。

少女は階段を滑り降りて通路を掛けていく。

顔に笑みが浮かび、心はふわっと軽くなる。



ハッチに着くとヒデジイがいた。

「おぉサキ、今日も一番乗りだな!彼氏のお迎えかぁ?」

小柄で立派なひげを蓄えたコテコテの整備士がにやにやしながら近づいてきた。

「違うってば!このセクハラおやじ!2人を迎えに来たんだよ!」

お決まりの挨拶を交わした後で、ようやくハッチが開いた。


デザートバイクに乗った一団が砂を巻き上げながら入ってきて、ひときわ大げさに突っ込んでくる1台を見つけると、少女は小走りで近寄っていき、はにかみながら声をかけた。

「おかえり。」

男はじゃりじゃりしたゴーグルとマスクを外し、少女を見て安堵した。

「へへ、相変わらず飼い主を待つ子犬みてぇだな。」

笑いながらバイクを降りると、ヘラヘラしながら体の砂を払う。

「ほらフランツ、ちゃかさないの。」

大柄な女がドカドカと歩いてきて、男の肩を小突いた。

「アンジュちゃんもお帰りー!」

少女は満面の笑みで出迎えると、眼をキラキラを輝かせた。

「荷物運ぶの手伝うよ!」

「あぁ、ありがとう。いつもすまないね。」



『ビービーッ』

 

 大きなブザー音が艦内に響いて、やる気のないアナウンスが流れた。

「第7分隊の皆さんお疲れ様でしたー。夕食の後、ブリーフィングルームに集ってくださーい。今日もカレーでーす。」

「サキも一緒に食いに行くか?」

「うん!お腹空いたー。」

少女は2人の腕を引っ張りながら、食事に向かう。

待ちかねた散歩を楽しむ子犬みたいに、年甲斐もなくはしゃいだ。



彼ら第7分隊は、世界の各地で発生する災厄の監視と殲滅を目的とした特殊作戦部隊のひとつであり、大陸に点在する地下都市”シェルター”を人類の脅威から守っている。


災厄とは、人類を恐怖の淵へ陥れた未知の現象だ。

それは姿形を変えては、いつも上空の亀裂から現れ人の世を蹂躙する。

野獣の群れや巨大なドラゴン、昆虫の大群や眼に見えぬ疫病。

その中でも魔人種の脅威は凄まじく、かつての人類に甚大な被害をもたらした。

遥か昔からこの世界を恐怖に陥れてきた災厄だが、それがなぜ起こるのか、どこからやってくるのか、未だ謎に包まれている。


人類はそんな脅威に追いやられ、いつしか地下に逃れ、隠れ住んだ。

その行きつく先が、シェルターと呼ばれる巨大な地下都市だ。

かつてこの大陸を支配した人類は、いまや息を潜めるように地下へともぐり、明日への生をひたすら求めている。



夕食後、第7分隊の面々はブリーフィングルームに集合した。

部屋の中には、黒縁の丸眼鏡をかけた小柄な女性が気だるそうに待っていた。

彼女の名前はリンベル。

通信士としてこの船に搭乗し、シェルター本部との連絡や分隊メンバーへの伝令を担っている。


大型モニターを起動させると、リンベルは集ったメンバーに声をかけた。

「皆さんお疲れ様でーす。晩御飯の後で眠いと思いますが、さっそく偵察任務の報告をお願いしまーす。」

モニターの向こうには、本部のお偉いさんがそろっていた。

難しい顔をした1人の男が、画面越しに口を開いた。

「第7分隊長、八雲リナ。報告を。」

「はっ。」

八雲分隊長は立ち上がり敬礼すると、報告を行った。

「第7シェルターより南東30km地点に発生した天蓋の亀裂は、現在休眠状態へ移行。魔法陣の展開も目視にて観測しました。現在より3日以内には、災厄が発生する見込みです。」

「災厄の想定規模は?」

「魔法陣の魔力量より推定される災厄のランクはB+。この規模であれば、我が分隊でも対処可能です。」

「報告ご苦労。第7分隊には新しい転生者を2名配属している。今回の任務は彼らにも前線に参加してもらう。」

「フランツとアンジュを初陣で前線起用ですか?」

「転生者であれば問題なかろう。負担になるようであれば、現場判断で対処してくれ。」

「・・・・・・」

現場軽視の一言に、八雲分隊長は沈黙で返した。

「最近は災厄の発生頻度が増しているだけでなく、魔法陣の構成にも変化が確認されている。心して任務にあたるように。」

「はっ。」

 話の目途が付いたところで、通信士のリンベルが立ち上がった。

「それでは、これより6時間の休息の後、第7分隊は災厄発生予想地点まで進軍を開始します。斥候隊は先行して現地へ向かうように。作戦詳細は追って伝えます。以上、解さ…」

「ひとつ、質問よろしいでしょうか。」

話の最後に八雲分隊長が口を挟んだ。

「発言を許します。」

彼女は憤りを隠しながら、慎重に言葉を続ける。

「第3シェルターからの通信が途絶えて2週間になります。調査の進展について、お聞かせ願えますでしょうか。」

少しの沈黙の後、本部は返答した。

「その件については、本部でも目下調査中だ。判明次第連絡する。」

雰囲気を察して、少し慌てたリンベルはブリーフィングを終えた。

「いっ以上で通信を終了します。お疲れ様でした。」

分隊長は隊員に解散を命じた後、少しの間、宙を見つめた。副隊長が駆け寄り、神妙な顔で何かを話している。



「6時間後なんて大して休みもできねぇ。ダラダラしてたらすぐ出発じゃねぇか。」

フランツは、シャツに付いた夕食のカレーのシミをいじりながら、ため息交じりに吐き出した。

「まぁ、仕方ないさ。それが私たちの仕事なんだ。そのためにここに呼ばれたんだし。」

アンジュはなだめるように話す。

「なんだか、俺ら注目の的だな。いきなり前線だってよ。転生してすぐに死ねっていうのかよ。」

「そうとは限らないさ。何か考えがあってのことだと、信じたいね。」

フランツは渋い顔をして、アンジュの顔を見上げる。



この世界には、彼らを含めて13人の転生者が召喚されている。

30年前、当時技術者であったジョン・アドラーが転生召喚術を生み出し、人類は災厄に抗う術を手に入れた。

転生者は、異能の力を行使することで災厄の殲滅に成功し、人々は再び大地に踏み出した。


この第7分隊は文字通り第7シェルターに属する特殊作戦部隊で、正式名称を対災厄特殊作戦軍第7分隊と呼び、各分隊は数名の兵士と転生者で構成されている。


「はぁ~、さてさて。サキの部屋で珈琲でも飲んで、時間潰すしかねぇな。」

「そりゃいいね。じゃあ私も後で行くよ。」

「んじゃぁ後でな。」

ここまで読んでいただきありがとうございます!

初めて書いた小説です。


皆様に楽しんでいただけるような作品に仕上げたいです!

ド素人のつたない文章ですが、ぜひ、皆様のご意見・ご感想をお聞かせください。


よろしくお願いします!

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