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少女の日常

これは砂塵が渦巻く世界に生まれ落ちた、1人の少女の物語。


宿命に翻弄されながらも生き抜くことを決めた、はかない命の鎮魂歌。

甲板の端っこが、少女の定位置だった。

いつ使うか分からないガラクタや油臭い備品たちに隠れて、その日も彼らの帰りを待っていた。

そこからは船の外が遠くまで見渡せるし、誰にも邪魔されない。

何度も何度も手すりから顔を出しては、外の様子を確認する。



見渡す限りの荒野はいつも退屈で、代わり映えのしない岩肌と無表情な砂の海が一面に広がっている。

時折吹く生暖かい風には船の排気が交じり、吸う度ふと我に返って寂しくなる。


「昼過ぎには帰れるって言ったのに。」


そうぼやきながら、退屈しのぎに読む気のない本を広げる。

少女の日常はそうやって過ぎていく。

砂の海原を滑るように走るこの船は、ゴウゴウと音を立てながら何もない砂地をひた走る。

なにやら大層な役割を担っているらしいが、少女にとっては退屈の種でしかなかった。



この星は、どこまで行っても砂と岩しかない。

見渡す限りの荒地。

視界一面を乾いた色の砂が埋め尽くし、ゴツゴツした岩山があちこち呑気にのさばっている。

あれはパンの形。猫の横顔。人の耳。翼を広げた鳥の羽ばたき。

少女は退屈しのぎに、岩の見た目から想像をめぐらしてみたけれど、それもすぐに飽きてしまう。



この荒地の唯一の見どころと言えば、夜空が綺麗なことだ。

夜空一面に輝く星々は本当に美しくて、手を伸ばせば触れられそうなほどに明るい。

砂漠の夜はとても寒いけれど、厚着をしたまま甲板に寝そべって夜空を眺めるのが、少女の楽しみだった。

嫌なことや悲しいことがあった時は、必ずそうした。



時折、旧時代の遺跡が顔を出しては、かつての繁栄に思いを馳せてみた。

規則正しく並ぶ、墓標のようなコンクリートの塊。

血管のように走り回る、砂に埋もれたアスファルト。

どれもなんだかこじんまりしていて、暮らすには少し小さいみたいだ。


この遺跡で取れる旧時代の機械や設備、特に貴金属類は高価で取引されていて、眼をぎらつかせたサルベージャーたちが今日も遺跡をうろついている。

以前、この船に彼らを乗せたことがあったが、小さな機械を見せびらかしながら、お金の話ばかりしていた。

汚い言葉ばかり使うし、見た目もちょっと怖かった。

サルベージャーになりたいとは思わないけれど、この船の中よりは楽しい生活が送れそうだなと、少女は思った。



2週間ほど前に、大きな渓谷を見た。

初めて見た時はその雄大さに圧倒され、開いた口が塞がらなかった。

どこまでも続く地層の平行線やアースカラーのグラデーション。

吸い込まれそうなほど深い谷間。

渓谷の中には横穴や模様の刻まれた石柱が立っていて、よく見ると、人影があちこちからこちらを覗いている。

聞くと、彼らはジプシーと呼ばれる部族で、この砂漠に古くから暮らしているとのことだ。

荒地に残る古代の建造物や遺跡に住み着き、わずかな資源を使って慎ましく生きている。

他部族との交流をすることは滅多にないそうだ。


背丈は小さく小柄で、褐色の肌と黒い髪。

噂によると、彼らは怪しげな術を使うようだ。

指先から火を出したり、何もない所から水を生み出したり。


得体の知れない彼らを、みんなは気味悪がっていた。

あのサルベージャーたちでさえ、ジプシーを不吉の象徴として扱う。

子どもがいたずらなんかした時には「ジプシーの魔女に食べられちゃうぞ~」なんて言われるらしい。


魔術を使い、子どもを食べるジプシー。

ロクに話したこともない人たちに、好き勝手言われる彼ら。


ちょっと、会ってみたい気もする。

実は案外良い人たちかも。



砂漠を行き交うあれやこれやを相手にしながら、少女の今日は退屈に過ぎていく。

視界の先から、彼らが帰ってくるのを今か今かと待っている。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

初めて書いた小説です。


皆様に楽しんでいただけるような作品に仕上げたいです!

ド素人のつたない文章ですが、ぜひ、皆様のご意見・ご感想をお聞かせください。


よろしくお願いします!

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