プロローグ
これは砂塵が渦巻く世界に生まれ落ちた、1人の少女の物語。
宿命に翻弄されながらも生き抜くことを決めた、はかない命の鎮魂歌。
問題ないはずだった。
上手くいくはずだった。
指示通りにやっただけだ。
言われたまま、計画のまま。
家族のためだった。仲間を守るためだった。この国を守るためだった。
しょうがなかったんだ。あの時は、他に選択肢などなかったのだから。
目の前に広がる混沌の渦。
魔法陣から吹き荒れる高濃度の魔力は、鋭いつむじ風となって周囲を巻き込んでいく。
渦は青白い閃光を放ちながら辺りを包み込み、数十センチ先も見渡すことができない。
制御不能に陥った魔法陣は、成すすべなく暴走を続ける。
魔法陣の描画、魔晶石の設置、召喚士による魔力制御、すべてにおいて問題はないはずだった。
状況から考えれば、外部から干渉を受けたに違いない。
外部からであれば、いったい、いつから?
まさか本当にこんなことになるとは、心の底では信じていなかった。
彼らにはもう、時間が残されていないのか…。
高濃度の魔力に晒され続けた魔晶石は限界を迎え、赤黒く揺らめく炎をまといながら砕け散った。
風がやみ、視界が晴れたころ、魔法陣の上には3人の転生者が横たわっていた。
召喚される転生者は2人のはずだ。
転生者は魔晶石を依り代に、この世界に召喚される。
今回用意された魔晶石は2つ。
3人目など、召喚されるはずがない。
ようやく憲兵と救護班が駆け付け、事態の収拾に取り掛かった。
私はただ、これから起こる惨劇を憂いながら、その光景を見守ることしかできなかった。
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「おーいモージくん、いるかい?」
少年のような姿をしたそれは、奇妙な薄ら笑いを浮かべながら名前を呼んだ。
遥かかなたの虚空。それは、天蓋の外にある宮殿の窓辺から、嘲笑のまなざしで大地を見下ろしている。
「ここに、マグニ様。」
何もない空間から、低く丁寧な声が響く。声の主は気配だけをかすかに漂わせ、マグニの背後から返事をした。
「彼らへのプレゼントは、ちゃんと届いたかな。」
「はい、間違いなく。先ほど13人目の転生者を観測。アドラーは事を急いたようで、一度に2人まとめて召喚しようとしたようです。」
「ふーん、察しが良いね。さすが、天蓋にたどり着いただけはある。傀儡は人形らしくしてもらわないと困るんだけどな~。」
「いずれにせよ、我々の計画に支障はございません。」
「あはは!そう、その意気だよモージくん。ついに我らの悲願は達成される。」
マグニは高らかに笑いながら両手を拡げ、堪え切れない笑みを漏らしながら声を震わせた。
「さあ、狩りのはじまりだ。あの巨人どもを根絶やしにするんだ。」
ここまで読んでいただきありがとうございます!
初めて書いた小説です。
皆様に楽しんでいただけるような作品に仕上げたいです!
ド素人のつたない文章ですが、ぜひ、皆様のご意見・ご感想をお聞かせください。
よろしくお願いします!