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3.

 次の日は、ひときわ寒い朝だった。


 星のささやきはもちろん、ダイヤモンドダストが周囲を舞っていて、世界が私を祝福しているような、そんな美しい光景が広がっていた。

 それなのに、私は気が重かった。昨日の学校でのやり取りをずっと引きずっていたからだ。


朝比奈(あさひな)さん、私、今日用事あって。そこの掃除ささっと終わらせちゃうから、ごみ捨てだけ頼んでもいい?」


 HR後の掃除で、同じ場所の担当になった雁谷(かりや)さんからそう言われて、私は答えた。


「あ、うん。――でも、それでいいの?」


 私は『急いでいるなら掃除も代われるけれど、ごみ捨てだけでいいの?』という意味で言ったつもりだった。けれど、彼女はなぜか気分を害したようで、いらだたし気にほうきを動かした。


「……悪かったわね。やればいいんでしょ、やれば」


 雁谷さんはそう言っていつもより念入りに掃除をすると、私の手からごみ箱を奪い取って焼却炉へ向かっていった。何が起こったのかわからず、呆然としていた私は、そこに至ってようやく、誤解されたのかもしれないことに気づいたのだ。


 たぶん『掃除をそんな風に適当にしていいのか?』という意味に受け取られたのだろう。


(そんなつもりじゃなかったのに……)


 その出来事から今朝までずっと、「あのとき、星のささやきが聞こえていたら」なんて、詮無(せんな)いことを考えている。


 私は、雪をきしませ踏み固めながら、もう何度目かのため息をついた。

 今までも、こんなことがよくあった。

 よかれと思って言った言葉が予期せぬ誤解を生み、相手に嫌われたり反感を買ったりする。誤解されたことに気が付いたときにはすでに関係はこじれていて、弁解したところで修復するのは困難だった。


 そんなことが積み重なって、私は話すのが苦手なのだと思い当たった。そうして次第に、会話をしなくなっていった。今では、クラスで「暗い子」認定されている。


 ――そんな私でも、星のささやきがあれば。


 相手にどう誤解されたかすぐにわかれば、傷の浅いうちに対処できる。そのために心の声が聞こえるようになったのだと、最初はもろ手を上げて喜んだのだ。


 実際は、学校に着く頃には氷のような寒さが和らぐせいで、役には立たなかったけれど。

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