14.
「……ねえ、ラーシュ。私、明日からも、ここに来ていいかな? もう、心の声は聞かないし、聞こえないと思うけど……」
ラーシュは教えてくれた。諦めないこと。伝わるまで、言葉を尽くすこと。
私も、今度ばかりは、諦めたくない。
心が読めなくなったって、英語で会話できなくたって、きっと、心は望んでしまうから。
どんな形であれ、彼と心を通じ合わせたいと願ってしまうのだ。
「もちろん。だから、言葉がある。そうだろ?」
そっと顔を上げると、ラーシュは変わらぬ微笑みで頷いてくれた。
この願いが彼への想いだとしたら、もう種は芽吹いてしまった。ここからは、どんなに抑えようとしても、心を栄養分にして育っていくだろう。やがて、葉が出て開いたら、どうか見てほしい、気づいてほしいと、蔓を伸ばしてしまうだろう。
たとえ、言葉が足りずに誤解を生むとわかっていても。
それでまた、傷つくかもしれないとおびえながら。
それでもなお、諦めずに言葉を尽くせば、きっと、今までとは違う関係も築けるから。
(明日、雁谷さんとも話してみようかな……)
私の表情がほぐれたのを見て、彼は笑みを深めた。
時折見せる、目を細めた微笑。
と、ふいに、彼は困った顔をした。
「Ah…,was it be leaked that I thought you were pretty sometimes……?(もしかして、かわいいって時々思ってたこと、ばれてたんじゃ……)」
「え? なに? なんて言ったの?」
「……no, なんでもない」
「――ふぇっ!?」
なんでもないと言いながら、ラーシュは手を伸ばして私の頬をつまんだ。
痛くはないけれど、顔を触られるのはまだ慣れない。赤くなって抗議しようとしたら、彼の頬もうっすら染まっているのが見えた。
「……ラーシュ? やっぱり、怒ってる、よね?」
「怒っていない」
そう言うくせに、やっぱりラーシュはちょっと不機嫌そうで、顔を覗き込もうとすると顔をそらしてしまう。
「怒ってるならちゃんと言ってよ。言わないとわかんないんじゃなかったの?」
「だから、怒っていない!」
そうこうしているうちに夜が更けて、遠くでかすかに鳴るキラキラした音が耳朶を打った。
もう少し待っていれば、彼が今何を思っているか、わかるかもしれない。
……けれど。
――さて、この誤解は解くべきか否か?




