12.
歩いている間、ラーシュはしきりに話しかけてくれたけれど、ろくに返事をすることができなかった。
英語が聞き取れなかったせいでもあるし、みじめさに打ちのめされていたせいでもある。
興奮していた頭が冷えると、さっきの行動が考えなしだったのではないかと思えてきたのだ。
あの三人が犯人だとラーシュが信じてくれたとして、彼は学校でどう身の潔白を証明すればいいのだろう。
私が証人として発言する? それにどれほど信ぴょう性があるだろうか。
もし、星のささやきのことをラーシュに話していたら、見張るなりわなを仕掛けるなりして、もっとちゃんとした証拠を手に入れられたかもしれない。けれど私は、彼にばれたくない一心で、そのチャンスをつぶしてしまった。
どっちにしろ、彼とちゃんと話をしなければならない。
日本語で話してくれるよう頼むと、ラーシュは怪訝な顔をしながらも、言う通りにしてくれた。
彼は日本語もうまかった。ちょっと癖のある発音で、それでもちゃんと意味が伝わるように言葉を紡ぐ。
さっきの三人組の話をすると、彼は私の懸念を察して首を横に振った。
「彼らの話、俺も聞いた。だから、先生、説得できる」
聞けば、あの三人組は素行が悪くて有名らしい。彼らと比べたら、たとえ証拠がなくても、優秀な成績を収めているラーシュの方に軍配が上がる、外人という不利は言葉で打ち負かしてやると、彼は自信ありげに笑った。
「コトハのおかげだ。ありがとう」
でも、と、ラーシュは続けた。
――なぜ、あいつらが犯人だとわかったか。
「あれ、わざと言わせた、と見えた。コトハも知らなかったこと。でも、知っていたから。なぜ?」
(……ああ、ついに来た)
私はラーシュの顔を見ることができず、目をそらした。
「聞いても、信じないよ。……ありえないことだから」
「ありえない? なにが?」
「……ごめんなさい。私、ラーシュに悪いことしてた……」
「だから、なにを? 言わないと、わからない。そうだろ?」
そう言うと、ラーシュは私の顔を両手で包んで、ぐいっと正面を向かせた。デリカシーのない強引さにカッとなり、抵抗しようとしたけれど、ラーシュの困った表情を見て気が抜けた。
そうだった。ラーシュが強引になるのは、他人を心配しているときなのだ。
彼の透明な目で見つめられているうちに、気が付いた時には、星のささやきのことを洗いざらい話してしまっていた。




