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白い息吹とココロの葉  作者: 鍵の番人


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11.

「もうやめてください!」

「……は?」


 突然見知らぬ女に怒鳴(どな)られた彼らは、「なんだこいつ」と言いたげな表情をこちらに向けた。

 胡乱(うろん)な目つきに思わずひるむ。

 とっさに叫んでしまったが、知らない男子の集団に話しかけた経験なんてほとんどない。自分の突飛な行動に泡を食いながら、引っ込みがつかず食い下がった。


「あ……、あなた達なんでしょう、ラーシュに嫌がらせしたの!」

「――あんた、誰? 何言ってんの?」


 無視して通り過ぎようとしていた三人は、険しい表情をして、私を取り囲んだ。皆、私より身長が高く威圧感がある。


「あ! こいつ、見たことある! あいつとよく公園にいる女だろ」

「は? じゃあまさかこれ、あいつのカノジョ?」

「ち、違います! 私はただの友達で……」

「ただの友達がなに? なんで俺たちに難癖(なんくせ)付けてきてんの」

「証拠があんのかよ、証拠が」


 恐怖で足がすくんだ。目に涙がにじむ。のどが詰まって、声が出ない。


(だめだ、怖い……。やっぱり私には無理なんだ。ここは、謝って逃げて。そうして、明日、ラーシュに言えば……!)


 ――ラーシュに、言ったら……。


 どういう反応をするだろう。


 この人たちが犯人だと言いつけたとして。でも、何の証拠もない。理由を聞かれても答えられない。


 一瞬、彼の悲しそうな顔が浮かんだ。

 憶測だけで糾弾するのは、ラーシュが嫌っていたことではないか。


 ――それに、ラーシュだったら。


 こんな程度であきらめない。一対多だって、どんなに不利な状況だって、誤解されたら、誤解が解けるまでやめない。


 気持ちが通じるまで。

 意志が伝わるまで。


(……そうだ。証拠ならあるんだ)


 目に見えないだけで。


 私は知っている。この人たちの中にある思い。隠している声。漏れ聞こえてきた本音。


 ――あとは、それを、彼らの心の中から引きずり出せばいいだけだ。


「で、でも、私、聞きました……! あなたたちが、ボールペン細工したって」


 彼らは顔を見合わせた。怪訝そうな表情をしている。

 冷や汗をかきながら、私は言いつのった。


「い、言ってたでしょう!? このコンビニの中で! 私、本当に聞いたんだから!」


 うまく言えているだろうか。声が上ずった気がする。綱渡りのような感覚にめまいがする。

 三人のうちの一人がさっと顔色を変えた。


「……おい。あの時、誰もいないって言ったろ。ちゃんと確認したんだろうな」

「何言ってんだよ、あれはここの裏だから、こいつに聞こえるはずな――」


(――認めた!)


 言質(げんち)をとった。ラーシュを(おとし)れたのが自分たちだと告白した。これで堂々と、耳で聞いたのだとラーシュに報告ができる。

 心の中で喝さいを叫んで身をひるがえした。


 けれど、一足遅かった。彼らは目くばせをし、周りから見えないように私の周囲を取り囲んだ。すり抜けようとしたところを乱暴につかまれて阻止される。


「痛っ……、は、離して!」

「今度こそ誰もいねえだろうな。先に行って見てこい」

「暴れるなって。ちょっと話するだけだから」


 よく見るとコンビニと隣の建物の間に、ぎりぎり一人が通れるくらいの隙間があった。


 ぞっとした。

 必死に抵抗したけれど、男子に力でかなうわけがない。暗いわき道に押し込まれようとした時だ。


「――コトハ!」


 今一番聞きたくなかった、けれど、この上なくほっとする声が聞こえた。


「っ! おい、あいつが……!」

「やばいぞ。おい、どうする」

「行くぞ、どうせ証拠なんかねえんだ」


 三人組は私を脅すようににらみつけると、ばたばたと去っていった。


 残された私は、冷たい地面に崩れ落ちた。手は震え、足には力が入らない。

 そんな私をラーシュが支えるようにして立ち上がらせてくれた。彼に抱えられたまま、公園までゆっくりと移動した。 


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