結城探偵事務所
都内でごく普通の探偵事務所を営む結城健太郎。
浮気調査、素行調査を細々と続けていたがある日妙な依頼が舞い込んだ。
※この作品はカクヨム同時連載となります
スーツの老人「と、言う訳でございます」
???「ふーん…話はわかったが、しかしね」
スーツの老人「は、はい」
???「チラシにも書いてあっただろう」
???「ここは浮気調査がメインのごく普通の探偵事務所だ」
日本の探偵事務所の仕事の大半は浮気調査、素行調査の類だ
アニメやドラマの様に事件の捜査をしたり、派手なアクションをしたり
はたまたボランティア精神に富むハードボイルドだったりも当然しない。
スーツの老人「それはもちろん存じております…その上で結城様にお願いを」
引き下がりそうに無いな…この爺さん。
インスタントコーヒーをすすりながら爺さんの依頼内容を反芻する。
【異世界に消えた孫娘を取り返してほしい】
この老人の名前は佐伯宏71歳。都内の閑静な住宅街に三世代で住む比較的裕福な一族だ。
妻、娘、娘の旦那、孫娘と住んでいる。
この孫娘は大学に通いながらフリーの記者として活動していたが、先週末に書置きを残して姿を消した。
その書置きには『異世界に〇〇さんと一緒に行って証拠を探してきます、心配しないで下さい』と書かれていて、すぐに警察を呼んだが駆け落ちの類か悪戯と判断され操作はされなかった。
しかし今日になっても孫娘は帰って来なかった為、探偵に依頼した…。
と言う事だ。
どう考えても駆け落ちだろうなこれは。中二病のスパイスも効いている。
〇〇さんって奴はこの孫娘が記事を提供していた雑誌社の社員で、こいつも同じ様な書置きを残して行方不明。
どちらの家、部屋にも侵入者の形跡も無く、事件を予感させる様なお決まりのフラグも無い。
概ね同棲でもしたいが反対されるから家を飛び出した、と言ったところか。
結城「佐伯さん、申し訳ないがやはりこの依頼受ける事は出来ない」
佐伯「そう…ですか」
結城「だが駆け落ちした孫娘の調査なら出来る」
佐伯「え?」
結城「異世界に消えた孫娘の救出は不可能だが、地球上での調査なら受けれる。と言う事だ」
佐伯「あ、ありがとうございます…!」
…
…
…
結果この件はやはり駆け落ちだった。
異世界とは二人の愛の巣の事、らしい。
しかしこの件解決の一か月後、また佐伯と会う事になるとは予想していなかった。