6話「明かされる想い」
郵便屋さんタランが婚約希望を告げてきた。
ここでまさかの立候補である。
「え……タランさん、何を言って……」
これには戸惑ってしまう。
タランのことは嫌いではないけれど、むしろ好きだけれど、でも、そういう目で見たことはなかった――少なくともこれまでは。
「ずっと好きだったんです! いつも明るく接してくれる貴女にずっとずっと憧れていました。でも、貴女には婚約者さんがいるから、僕なんかじゃ駄目だって。ずっとそう思っていて。それでもう諦めていて、でも、少しだけでも喋ったりできる時間がずっと救いでした」
お、想いが強い……。
「やっぱり僕、貴女が好きです。貴女が自殺されたと聞いた時はとても辛かったし、本当はもっと僕にも何かできたんじゃないかって後悔もしたし、何より胸が痛くて。でも、また生きている貴女に会えて、これは運命なんじゃないかって思ったんです。そしてそこに婚約破棄……もうこれは言うしかないと思いました」
タランは照れたような顔をしたままひといきでそこまで言ってのけた。
凄まじい熱量……。
「僕と共に生きてください!」
頭を下げるタラン。
そのつむじを見ながら思う。
――この人はずっとアイトレッタをこんなにも愛していたのか、と。
アイトレッタは気づいていなかったのか? いや、それとも気づいてはいたけれど見ないふりをしていた? 婚約者がいるから、どのみちその願いを叶えることはできないから。でも、だとしたらなぜ、自殺なんてした? 自殺なんてそんなことをする前に彼に相談してみれば良かったのではないか?
「……はい」
静かに返す。
「え……」
彼はその時になってようやく頭を持ち上げた。
視線が重なる。
「そうしましょう」
「ほ、本当ですか……!?」
面が輝く。
「受け入れてくださるのですか!?」
彼はアイトレッタだけを見ていた。
「もちろん。私も一人ですから。……これから、共に生きましょう」
微笑めば、互いに笑顔になる。
その後そのことを両親に報告した。
「いいじゃない! タランくんなら浮気とかもしそうにないし」
「いつも真面目だものな! 良いぞ! その相手なら、父は許す!」
こうして私はタランと婚約することとなった。