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終末のデッドマン  作者: 大隅スミヲ
終わりなき、はじまり
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Ghost Town(3)

 タケミチはマネキンになりすますことにした。

 嫌な臭いが鼻腔へと入ってくる。

 デッドマンだ。

 しかも、さっきの子どもではない。大人のデッドマンがいる。

 こちらに気づいていてはおらず、ゆっくりとタケミチのいる場所の前を通過していく。

 デッドマンはひとりだけなのか。それとも、まだいるのだろうか。

 もし他にもデッドマンがいるようであれば、万事休すだ。


 時刻は午前三時二〇分。日の出は、午前五時過ぎ。あと二時間持ちこたえる必要がある。

 どうする、どうすればいい。

 タケミチは自問自答を繰り返した。


 そして、決断を下した。

 ここにずっといるというのは危険だ。もし、複数のデッドマンがいるとすれば、ここに雪崩れ込まれたらアウトだ。

 先ほど通過したデッドマンが遠くに離れていったことを祈りながら、タケミチは倉庫から出ることにした。


 開けっ放しになっているドアの隙間から顔を覗かせて、外の様子を見る。


「ひぃぃぃぃぃぃぃ!」

 その瞬間、タケミチは悲鳴をあげてしまった。


 ドアの隙間から顔を出した目の前にデッドマンがいたのだ。

 しかも、バッチリと目が合ってしまった。


 デッドマンは大きな口を開けた。

 あ、虫歯がある。

 デッドマンの口の中を見たタケミチは、そんなことを思っていた。


 噛みつかれる。

 そう思った瞬間、急に後ろへと引っ張られた。


 噛みつこうとしていたデッドマンの歯と歯がぶつかる甲高い音が聞こえる。


「え?」

 振り返ると、そこには背の高い男が立っていた。


「あ……」

「しー」

 男はそういって口の前に一本指を当てる。


 どこかで見たことのある男だった。誰だっけ。

 タケミチは、その男が誰であったかを思い出そうとしたが、思い出すことができなかった。絶対に、どこかで見たことがあるんだよな、この人。

 タケミチを再び倉庫の中へと引っ張りこんで助けてくれた男は「ここで待っていなさい」というと、ひとりで倉庫から出て行ってしまった。


 右手には鉄パイプを持っていた。まさか、あの鉄パイプでデッドマンと戦うつもりなのだろうか。

 そんなことを思いながら、タケミチはあの男が誰なのかを必死に思い出そうとしていた。


 しばらくして、デッドマンの悲鳴に似た声が聞こえた。

 そして、男が倉庫内へと戻ってくる。

 男が持っていた鉄パイプは血に濡れていた。


「他のデッドマンが来る前に、別の場所へ移動しよう。デッドマンの死体は、他のデッドマンを呼び寄せる」

 男はそう言うと倉庫からタケミチと一緒に出た。


 奇妙な男だった。

 服装は和服であり、袴を履いて、足元は足袋だった。

 サムライ?

 そう思ったと同時に、タケミチはこの男が誰であるかを思い出した。

 藤巻謙治郎だ。アクション俳優。子どもの頃に見ていた、変身ヒーローものに出ていたはずだ。えーと、何だっけな。ああ、そうだ。仮面ソルティだ。藤巻謙治郎は、その主人公であるソルティであり、役名は佐藤トシオだったはずだ。たしか、スーツアクターもやっていて、アクションはお手の物と紹介されていたような気がする。

 そんな藤巻謙治郎が、鉄パイプ片手に和服で歩いている。まさに現代のサムライ。たしか、時代劇にも出ていたはずだよな。この人、リアルで戦えるのか。タケミチは前を歩く藤巻謙治郎の大きな背中を頼もしく思いながら見つめていた。

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