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終末のデッドマン  作者: 大隅スミヲ
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The Beginning of The Endless

 廃都、東京――。

 東京は廃墟と化していた。

 渋谷、新宿、池袋、秋葉原。かつて人々の集まる街だった場所は、どこも破壊の限りを尽くされ、いまは誰も近づく者はいない。

 デッドマンとターンオーバーした元デッドマン以外は。


 明智欣也は千代田区にあるビルの最上階フロアから地上を見下ろしていた。

 8年前、人類は一度デッドマン・ウイルスによって滅びかけた。その際にワクチンを作成して人類を救ったのは、紛れもなく明智であった。


 ワクチンによって人々は元の生活を取り戻した。年に一度、デッドマン・ウイルス・ワクチンを接種すれば、デッドマン・ウイルスには感染しない……はずだった。

 ウイルスに変化が起き始めたのは、三年ほど前のことだ。ある研究員が発見した、ウイルスの変化。研究者たちはそのウイルスを変異種と名づけ、研究を重ねてきた。

 感染第二波がやってきた。第二波では、感染爆発が予想されたが、それよりも先に明智の所有する製薬会社ペンタグラムは、変異種に対応できるワクチンの開発に成功し、その感染爆発を未然に防ぐことができた。


 そこまでは良かった。


 まさか、人類の敵はウイルスではなく、人類であったとは誰も考えていなかったのだ。

 それは反ワクチン派を名乗る武装組織であった。連中は、ペンタグラム社のワクチン接種会場などを襲撃し、次々とワクチンを奪い去っていった。時には、ワクチン製造工場が襲われることもあり、ペンタグラム社はこれに対抗すべく、自社傘下にある警備会社PSSペンタグラム・セキュリティ・サービスを投入して、武装警備員たちにワクチン工場や接種会場を守らせるようになった。


 その時から、ペンタグラム社と反ワクチン派の戦いがはじまったのだ。

 反ワクチン派は、ペンタグラム社から盗み出したワクチンとデッドマン・ウイルスをかけ合わせたりして、より強力なデッドマン・ウイルスを生み出そうと考えていた。奴らは終末思想の集まりなのだ。

 国の機関は当てにはならなかった。第一波の時点で、警察組織は崩壊している状態だったし、自衛隊は国外から押し寄せるであろう脅威に対応する準備で手一杯だった。

 だから、PSSを使って反ワクチン派をどうにかするしかなかったのだ。

 反ワクチン派が生み出した、新たなるデッドマンはワクチンの効かないデッドマンだった。そして、そのデッドマンはワクチン研究施設を襲うのに使われ、大きな被害をもたらした。

 いや、それだけではない。そのデッドマンの誕生により、人類は再び危機を迎えることとなったのだ。

 新たに誕生したデッドマンは、爆発的な勢いでその感染者数を増やしていき、あっと言う間に第一波を超える被害をもたらした。


 そして、東京から人が消えた。


 いや、消えたのは東京だけではない。首都圏はもちろんのこと、大阪、京都、博多、仙台、札幌などといった主要都市からも人は姿を消した。

 おそらくデッドマン・ウイルスおよびニュー・デッドマン・ウイルスの登場によって世界的に人口は減少してしまったはずである。特にその中でも日本が人口減少のトップクラスといえるだろう。



 少し離れたところが、一瞬明るくなった。

 何かの爆発か、自衛隊による攻撃がはじまったのだろう。


 数日前のニュースで自衛隊がデッドマンを東京から駆逐するために戦車部隊の投入を決めたと発表されたばかりだった。

 自衛隊の東京派遣に反対する市民団体もいたそうだが、そういった連中は裏で反ワクチン派と繋がっていると見なされていた。そのため、そういった抗議行動に出ても、世間からの目は冷たく、誰も賛同しないという状態だったそうだ。

 いまは軍事行動云々といっている場合ではない。人類の危機が迫っているという状態なのだ。


 対デッドマンとしては、ターンオーバーという特殊な形でデッドマン・ウイルスを克服した連中がいる。

 彼らについてはまだ研究中で詳しいことはわかっていないが、元デッドマンであるのだが、デッドマンに対して強烈な敵意を持っているということだけはわかっている。

 その数は未知数であり、明智が知る限りでは10人程度しか確認は出来ていなかった。

 彼らのことを研究者たちは《《裏返り》》と呼んでいる。

 一見すると普通の人間なのだが、デッドマンを前にした時のみ、その本性を現す。裏返りたちは、デッドマンにとって驚異的な存在であることは確かだ。ただ、彼らの数は少ない。

 もっと裏返りの数が増えれば、デッドマンたちの数を一気に減らすことができるのだろうけれども、どうやって彼らが誕生したのかなど謎が多いため、彼らの数を増やすというのは現段階では難しいことだった。


 ビルのガラスが小刻みに震えた。

 遅れて遠くの方から爆発音が聞こえてくる。

 双眼鏡を使い、その方向を確認すると自衛隊の戦車部隊が展開していくのが見えた。

 おそらく、デッドマンの巣とされている秋葉原にある商業施設を破壊するつもりなのだろう。


 東京はデッドマンと人類の戦場となっている。

 人類が勝つのか、それともデッドマンが勝つのか。

 それは明智にもわからない。

 ただ、明智はこのビルの最上階から、その行方を見守る権利を手に入れていた。

 誰もいない東京で、ただ一人の見守り人なのだ。

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