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終末のデッドマン  作者: 大隅スミヲ
おわりのおわり
59/74

Turn Over(4)

 地下へと続く階段を降りていった藤巻の目の前に現れたのは、ふたつのドアであった。両方とも鉄製の頑丈なドアとなっており、片方には非常口のマークがついている。

 藤巻はまず非常口マークのついている方のドアを開けてみた。

 ドアの向こう側、そこは地下駐車場であった。

 駐車場ではけたたましく火災報知器のベルが鳴っている。

 揺れの原因はここには無さそうだ。

 そう判断をした藤巻はドアを閉めて、地下一階の踊り場へと戻った。

 もうひとつのドア。そちらに手をかけてみたが、ノブはまわらなかった。ドアの脇には、なにやら電子装置のようなものが取り付けられている。よく見てみるとカードリーダーという文字が書かれていることがわかった。どうやら、こちらの扉はカードが無ければ開けることは出来ないようだ。

 仕方なく、藤巻は地下駐車場を進むことにした。

 地下駐車場は人の気配もなければ、車が走る音もしなかった。

 耳障りな非常ベルの音だけが、辺りを支配している。

 警備員はいないのだろうか。

 そんなことを考えながら歩いていると、駐車場の通路に倒れている人影を発見した。

 辺りを見回して、他に誰もいないことを確認してから、藤巻はその倒れている人へと近づいていく。格好からすると倒れているのは警備員のようだ。こちらの警備員はPSSの警備員とは違い、武装はしておらず警備会社の制服を着ている中年の男だった。


「大丈夫か?」


 藤巻は声をかけてみたが、警備員は反応しなかった。

 警備員は目を見開いたままであり、瞳孔からは光が失われていた。

 死んでいるのだ。

 よく見ると首に血がついており、歯型が残されていた。その歯型は明らかに人間のものであり、噛み付いたのはデッドマンであろうということが予想できた。

 噛まれたけれども、感染はしなかったのか。

 藤巻は疑問を覚えた。

 デッドマンに噛まれると感染をする。それは誰もが知っていることであった。

 しかし、稀に感染しないものもいるのだ。

 なぜ、噛まれても感染しないのか。それはまだ誰にもわかっていないことだった。

 おそらくこの警備員はデッドマンに噛まれたことでショック死したのだろう。

 藤巻はそっと手のひらで警備員の顔を撫でるようにして、警備員の見開いたままだった瞳を閉じてやった。

 そして両手を合わせて合掌をする。藤巻は無宗教であったが、それは関係なかった。こんな時くらいは手を合わせてやろう。それが藤巻の気持ちだった。

 合掌をして目を閉じていると、少し離れたところから気配を感じた。

 ヒタ、ヒタ、ヒタ、ヒタ。

 裸足でコンクリートの床を歩く音が聞こえる。

 こんな場所を裸足で歩くのは、藤巻かデッドマンくらいだった。

 合掌をやめて目を開いた藤巻は、体中の血がたぎるような感覚に襲われていた。

 闘争本能に火がつく。まさにそんな感じだ。

 気がつくと、走っていた。

 駐車されている高級国産車の間から姿を現したデッドマンに駆け寄った藤巻は、勢いそのままに飛びヒザ蹴りを繰り出していた。

 藤巻の膝はデッドマンの顎を捕らえ、デッドマンは勢いよく後方へと弾き飛ばされる。

 勢いよくデッドマンの体は駐車されている高級国産車のフロントガラスに突っ込み、フロントガラスには大きな窪みとひび割れが生じる。

 車に取り付けられていた防犯装置が作動し、ハザードランプを焚きながら、甲高いクラクション音が鳴りはじめ、衝突の反動から運転手を守るためのエアバッグが作動し、無人の運転席に勢いよく飛び出す。

 藤巻は車のボンネットに飛び乗ると、フロントガラスにめり込んでいるデッドマンに対して馬乗りになると、その首を渾身の力を込めた両手で絞めつけた。

 ミシミシという音とともに、デッドマンの首の骨が折れる感触が手に伝わってくる。

 そして、デッドマンが動かなくなったことを確認すると、藤巻はボンネットから降りて、次の獲物となるデッドマンのことを探しはじめた。

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