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終末のデッドマン  作者: 大隅スミヲ
ひとびとのせんたく
38/74

SAMURAI(3)

 藤巻はこの隙をついて、さらに西側地区を進んだ。


 途中、何人かのデッドマンに出くわしてしまったが、持っていた鉄パイプでデッドマンの頭を叩き潰し、その場をしのいだ。

 日本刀と違って、鉄パイプではデッドマンの首を落とすことは出来なかった。

 しかし、藤巻のような達人となると鉄パイプであってもデッドマンの頭を潰すことは可能だった。

 頭を潰されたデッドマンは動きを止めて、そのまま動かなくなった。


 藤巻は俳優であると同時に、日本古武術の家元でもあった。

 流派名などはなく、藤巻家に代々伝わっている武術なのだ。

 藤巻の曽祖父は幕末に名を馳せた志士でもあり、京都であの新選組と斬り合ったことがあると伝え聞いている。


 そんな家に生まれた藤巻は、幼い頃から祖父や父に武術を仕込まれて育った。

 学生の頃は少し道を踏み外したこともあったが、教えは守り、毎日の稽古は欠かすことはなかった。

 高校卒業後に俳優を志し、様々なオーディションなどを受けた。

 演技経験のない藤巻はことごとくオーディションで落ちたが、その運動神経の良さがある監督の目にとまった。それが仮面ソルティだった。

 子供向けのヒーローもの。そう侮っていたが、やってみるとアクションは本格的であり、スタントマンは用意されておらず、スーツアクターまでも自分自身でやらされた。撮影中は怪我が絶えなかった。

 爆発の際、火薬の量を間違えたために、藤巻と敵役のスタントマンが吹き飛ばされるといった事故もあったが、藤巻の要望によって撮影は続行された。

 仮面ソルティは、子どもたちの間で大人気となり、変身グッズなどが飛ぶように売れた。


 その後、藤巻はアクション映画などに出演し、一時期はハリウッドでアクション俳優兼アクション指導監督として活躍していたが、50歳になった時に活躍の場を日本へと戻した。


 渋いバリトンボイスに日本人離れした感性がウケて、いまやバラエティー番組などに引っ張りだこ。まさに順風満帆と呼べる人生。

 しかし、そんな藤巻もいまはデッドマンだらけのショッピングモールでひとり戦っているのだった。


 コーヒーショップYAMADAの看板が見えてきた。

 しかし、その前には5人ほどのデッドマンたちがうろついている。

 40代ぐらいの夫婦と20代ぐらいの若いカップル。そして、4、5歳と思われる子どものデッドマンだ。


 大人のデッドマンならともかく、子どもを鉄パイプで殴るというのは、気が引けた。

 なんとか戦わずにこの場を進むことは出来ないだろうか。

 辺りを見回しながら、藤巻は思案した。


 しかし、5人のデッドマンの前を通る以外にコーヒーショップYAMADAに行く道はなかった。


「仕方ないか」

 そう呟くと、藤巻は鉄パイプを構えて5人のデッドマンたちに突っ込んでいった。

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