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終末のデッドマン  作者: 大隅スミヲ
ひとびとのせんたく
34/74

Radio intercept(2)

 断続的に続いていた発砲音が突然止まった。

 辺りに静寂が訪れる。


 タクミも思わず足を止めて息を殺した。

 腕時計へ目をやると、集合時間まであと5分を切っていた。


 もう、神社に続く石階段は見えている。

 心臓破りの階段。そう呼ばれる108段続く階段だ。


 デッドマンたちは階段ぐらいであれば登れるようで、心臓破りの階段はデッドマンたちで渋滞を起こしていた。

 この石階段を登らなければ、神社にたどり着くことはできない。しかし、この状況で石階段を進むのは無理があった。


 どうしたものか。タクミは石階段で渋滞を起こしているデッドマンたちを見下ろしながら、考えていた。


 タイムリミットはあと3分。


 その時、上空からバタバタという音が聞こえてきた。ヘリコプターだ。

 タクミが空を見上げると、そこには自衛隊のプロペラが二つある輸送用ヘリコプターの姿があった。


 デッドマンたちも音に釣られて、上空を見上げている。

 そこへ一斉に銃弾が浴びせられた。


 階段の上からの一斉射撃。

 機関銃を持った自衛隊員たちが膝立ちになって、デッドマンたちに銃弾を浴びせる。

 デッドマンたちは次々に倒れていき、階段の渋滞は一瞬にして解消された。


「こっちだ、早く来い」

 屋根の上に立っているタクミに気づいた隊員が声をかける。

 タクミは屋根から飛び降りると、神社へと続く階段を駆け上がった。


 これでこの地獄のような場所とはおさらばだ。

 タクミは心臓破りの階段を一段飛ばしで駆け上がっていく。


 その時だった。足に痛みを覚えた。


 タクミが足を止めると、そこには自分の足に噛みついているデッドマンの姿があった。

 慌ててタクミはデッドマンを振り払った。

 その力はあまり強くなく、すぐにデッドマンは離れ、階段を転げ落ちていった。


「大丈夫だ。大丈夫」

 タクミは自分にそう言い聞かせるように、ひとり言を呟くと、再び階段を駆け上がった。


 神社の境内には自衛隊のヘリコプターが着陸しており、その周りを機関銃で武装した自衛隊員たちが固めていた。

 どこにもデッドマンの姿は見当たらない。


「大丈夫か。よく来たな」

 先ほど声をかけてくれた自衛隊員が話しかけて来た。

 自衛隊員はタクミの怪我をした足に消毒液を掛けてくれた。


 タクミはデッドマンに噛みつかれたことは、隠した。

 来る途中にガラスで切ってしまったのだと嘘を吐いた。


 無線で伝えられていた集合時間となり、ヘリコプターは境内から飛び立った。

 集合場所に現れたのは、タクミのほかにも3組ほどいた。

 1組は4人家族であり、父親が金属バットでデッドマンたちを殴り倒しながらここまでやって来たのだと語っていた。


 急に気分が悪くなった。


「どうした、顔色が悪いぞ。乗り物酔いか?」

 先ほどの自衛隊員が声を掛けてくる。


 大丈夫です。そう伝えたつもりだった。しかし、ろれつがうまく回らなかった。

 足がジンジンと痛かった。熱を持っているのか、ものすごく熱く、体がだるかった。


 だんだん考えることが出来なくなってきていた。

 頭がぼうっとしてくる。

 まるでインフルエンザに罹って高熱を出した時のようだ。


 体が震えた。

 自分ではどうすることも出来ない震えだ。


 急に空腹を覚えた。どうしようもないぐらいにおなかが空いていた。

 なにか食べたい。なにか食べ物はないのか。


 誰かが、おにぎりを差し出してくれた。


 ありがとう。

 そう言いながら、タクミはおにぎりを差し出してくれた人の腕に噛みついた。

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