Police officer(3)
「お台場にあるテレビ局が燃えてるってよ」
生活安全課の村西が刑事課の部屋に入ってくるなりいった。村西は生活安全課員らしい、コワモテで陰では顔面凶器というあだ名で呼ばれている男だった。
「当たり前だけど、だれも出動しねえぞ」
村西の声に樋渡が言葉を返す。
「そんなこと、わかってるよ。情報として、みなさんの耳に入れておいてやっただけだよ」
笑いながら村西は言って、机の上に紙袋を置いた。
その紙袋に海藤が目ざとく反応する。
「ムラさん。なんすか、これ」
「差し入れ。この店、流行ってんだろ。いや、正確には流行っていたんだろ……か」
紙袋の中身はアイスクリームだった。台湾で流行っているアイスクリーム屋のもので、ものすごく甘くておいしいと、ネットで評判だったやつだ。
「まだ行列が出来ていたぜ。デッドマンたちの行列だったけれどな」
村西は甲高い声で独特な笑い方をする。
この店は、感染爆発前であれば3時間待ちの行列が出来るほどだった。
味もおいしいが見た目がおしゃれということもあって、若い女性を中心に大流行したのだ。
「不思議なもんで、デッドマンになってからも行儀よく行列を作っているのな。あれって、本能的なものなのかな」
紙袋の中身をみんなに配りながら村西がいう。
「まあ、おれが近づいたら行列は乱れちゃったけどさ。おかげで、拳銃を発砲することになっちゃったよ」
「えー、マジっすか。弾足りました?」
「大丈夫だったよ。ほら、おれって射撃うまいから。ヘッドショットで最低限の弾薬消費さ。それにヤー公どもの事務所から奪ってきたコルトXM177もあるからな」
「え、あれってモデルガンじゃないんですか」
「マジモノよ。今度、海藤にも撃たせてやろうか」
普通であれば異常な会話であるが、これが日常の会話となってしまった世界なのだ。