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終末のデッドマン  作者: 大隅スミヲ
おわりのはじまり
12/74

Dead Man Walking(1)

 車の運転は好きだった。

 何時間運転していても飽きることはない。

 それにお気に入りの音楽を掛けていれば、渋滞にはまっていてもストレスが溜まるということはなかった。


 現に渋滞にはまってから三十分が経過しているというのに、矢作健一はまだ苛立ちを覚えたりはしていない。

 それどころか掛かっている音楽に合わせて鼻歌を歌っているほどだった。


 カーナビゲーションには渋滞を知らせる赤い線が表示され、点滅を繰り返している。

 あとどのくらい進めば、この渋滞から抜け出せるのだろうか。

 そう考えたりもしたが、べつに急いでいるわけでもないので、矢作は気にしないことにした。


 矢作の運転する車がいるのは、二車線の幹線道路の中央分離帯よりだった。

 前には背の高いトラックがいるため渋滞の先がどうなっているのかはわからない。

 ただ、わかっているのは先ほどから車が一ミリたりとも動いていないということだけだ。


 どうなっているんだ。

 矢作がようやく疑問を感じはじめた時、スマートフォンが着信を告げるメロディーを奏でた。

 せっかく音楽で気分を盛り上げているところなのに、それに水を差す不届き者だ。


 ディスプレイに表示されている番号は会社のものだった。

 どうせ、課長あたりが電話をしてきたのだろう。

 そう考えて、矢作は着信を無視した。


 どちらにしろ、運転中のスマートフォンの操作は禁止されている。

 一度は鳴り止んだスマートフォンだったが、その数十秒後に再び鳴りはじめた。


 しつこい奴め。

 それも矢作は無視をする。

 しかし、今度は鳴り止まなかった。


 まあ、停車中だからいいか。

 矢作はそう判断して、スマートフォンをハンズフリーのスピーカーモードに切り替えてから、通話ボタンを押した。


「矢作、いまどこだ?」

 電話の相手は想像したとおり、課長だった。

 聞いた途端に仕事のことを色々と思い出し、溜息が出る。


「どこって、車の中ですよ。ちょうど渋滞に捕まっちゃっています。事故でもあったんですかね、さっきから全然進まないんですよ」

「なんだよ、お前知らないのか」

「知らないって、何がですか。もう三十分以上、渋滞に捕まっているんですけど」

「無理だよ、無理。その渋滞は終わらないから、車を路肩に置いて歩いた方がいいぞ」

「えっ、どういうことですか、それ」

「なんだよ、質問ばかりだな。説明するの面倒くさいから、音楽を止めてラジオつけろ。どこの局でもいいからよ」


 矢作は課長の言葉に従い、カーステレオをラジオに切り替える。

 きょうは金曜日なので、FM局にすればお気に入りのラジオ番組がやっているはずだ。

 洋楽、邦楽、ロック、ポップス、演歌、クラシックなどジャンルを問わずに様々な音楽が掛かり、その曲を紹介する老年DJの軽快なトーク……

 が聞けるはずだったが、聞こえてきたのは女性アナウンサーの緊張した声だった。

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