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丘に眠る記憶  作者: jeff
4/6

 ___第4話___

 佐伯俊夫の研究室では香水によるストレスへの影響を調べていた。

医学的にもアロマテラピー等ですでに実証されているが、GLの研究室では

さらに人間や動物を臭いで制御する実験をしていた。古代より惚れ薬など

医学的な信憑性は別として、香りとして楽しむ以外の目的を与えられてきた

香水だが、ここではその効果を実証するため様々な実験が繰り返されていた。

ペールー支社では主に動物の本能的行動の制御を研究していたが、そのデータの

検証が今回のテーマである。

これにはエスペランサ政府からも補助金が出ており香水の平和利用を

最終開発目標に開発が進められていた。この日は赴任初日という事もあり所長の

エリックと打ち合わせを兼ねた食事をする事になっていたのだが、家族に話すのを

すっかり忘れていた。

「もしもしお父さん?わたし・・・ゆかりよ。今日は家族皆で食事するって言ってたのに

嘘つきなんだからー お父さんに渡したいものがあったのよ。書斎の机に

置いとくからね。 じゃあおやすみー」

ピアスからメッセージが自動で流れてきた。ゆかりは小さい頃から父親の

研究室によく遊びに来た。休みの日も俊夫が留守の時は外出するが家に居ると

一日中引っ付いているタイプの子供だった。17歳になった今でもこうして

時々仕事場にメッセージを送ってくる。上が二人とも男の子で甘やかされて育った

せいもあるかもしれないが、俊夫にとっては目に入れても痛くない娘であった。

「佐伯さん、行きましょうか?今夜はとっておきのディナーを用意しましたよ

肉料理はお好きですよね。いいワインが届いたので開けましょう。2080年物の

ラトゥールですよ」所長のエリックは57歳の白髪の紳士だアイルランドとフランスの

混血で男から見ても2枚目である。身長はそれほど高くは無いが176cmの俊夫より

2~3cmは高そうである。研究室を出てエレベーターで70階のターミナルへ出た。

この階は海底面と接しておりアクリル製の天井は深度1500mのライトアップされた

海を映していた。暫くするとオートトラムが近づいてきた。グリーンのLEDライトが

綺麗である。このトラムはアトランテの30本ある主要柱、兼ビル郡を結ぶ高速リニアだ。

最高速度は140キロだが車両の最後尾が切り離されホームに入ってくるだけで

メイン車両は一度も止まらずに走っている。1周約36kmを周回する車両は5本あり

ほぼ3分間隔でホームから追尾車両が発車する。

「それにしても凄い都市ですねアトランテは。ここなら何かあっても安全そうだ」

「佐伯君、やはり君も今回のアフガン・カンボジア戦争は飛び火すると思うかね」

「はい。中国がおかしな動きをしているようですよ、多分長期戦になれば必ず

アメリカと中国はまずい事になるのではないかと・・・」二人は前の車両に

移動した。二人が移動すると扉が閉まり追尾車両が切り離された。

暫くすると次の駅から出た追尾車両が追いついてきた。赤いシグナルを点滅しながら

ドッキングを完了すると何人かが本車両に移って来る。それと入れ替えに佐伯たちは

追尾車両に乗り第27タワーで降りた。

「センタービルから第27タワーまでだと5分程なんですね」佐伯はそういいながら

ドームの壁を走るオートトラムを眺めていた。



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