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第5話 スキル

 ガタン! ガラン!


 天井がゆれ、音が鳴る。


 どうやら屋根に登ったらしい。


 そういえば武器が載っていると言っていたな。



 どうやら彼女もやる気らしかった。



「いくぞおおおぉぉっ!!!」


「ちょっと待ってよ、ルカ! 僕も行く!」


 奇声を上げて馬車の屋根から飛び降りた彼女を、慌てて呼び止める。


「ちょっとテオ君! 危ないから中に入っててよ! 君、前衛職じゃないでしょ!?」


「…………っ!」


 ルカは彼女の身長ほどもある片刃の剣を肩に担ぎ、キッ! と僕を睨み付けてきた。


 だけど、それで気圧されるほど僕もヤワじゃない。


「確かにそうだけど、一人でどうにかなる相手じゃないだろ! 相手は第一級賞金首なんだぞ!?」


「そんなの分かってるよ。でも、この状況をどうにかするには……私が突撃するしかないじゃん!」


 ルカが剣を担ぎ直しながら、泣き笑いの顔で遠くを睨み付ける。


 剣の柄を握りしめる細い指は力が入りすぎているせいか真っ白で、小刻みに震えている。



 きっと彼女一人では、『鬼喰い』には勝てない。



 ルカがここで逃げても誰も責めることはできない。


 それでも彼女は、戦うことに決めているようだった。


 理由は分からない。

 

 だけど彼女の覚悟は、痛いほど伝わってきた。


 僕も彼女と同じ方向をを見る。


 ちょうど『鬼喰いのジェイル』が倒された冒険者たちの装備を剥ぎ取っているところだった。


 どうやらすぐに手を出す気はないらしい。


 護衛のいない馬車なんぞ、いつでも狩れる。


 余裕綽々の態度から、そんな意思が感じ取れた。


 完全に舐められている。


 確かにこっちの戦力は、【羊飼い】で冒険者見習いの僕と、駆け出し冒険者のルカだけ。


 馬車の乗客は御者ふくめ完全に非戦闘員だ。


 数に勝っていたとしても、勝ち目は薄い。


「ていうかルカ、真っ向から突っ込む前提なんだ……乗客を護りつつ、街から増援が来るまでの遅滞戦闘とか考えなかったの? それとも、実は突貫が君なりの足止めのつもりだったとか?」


「て、チタイセントー……? それ、何の魔術?」


「…………」



 僕は頭を抱えた。



 ……ダメだ。この子、脳筋だ。


 そもそも『遅滞戦闘』なる単語はおろか、概念すら知っているか怪しい。


 一応、冒険者検定の座学で習う戦術の基本概念だけど……


 ルカは自分の天職を【剣士】と言ってたけど、本当は【狂戦士(ベルセルク)】とかなんじゃないのかな?



 ……まあ、さっきルカはずっとソロだって言ってたからな。


 それならば、パーティーの戦術に疎くても仕方ない。


 そういうことにしておこう。


「僕も一緒に戦う。少しでも勝率を上げたいし。でも僕はルカみたいな戦闘力はない。だから僕は、僕なりの戦い方をする。いいね?」


「……わかった! 一人で寂しく戦うより、誰かが後ろで応援してくれてた方がいいもんね。でも、私がやられたらすぐに逃げてよね?」


「いや、精神論じゃないんだけど……」


 ていうか、仮にも共闘する相手を見捨てて逃げるわけないだろ……


 まあ、こういう場合は論より証拠だ。


 それにもちろん、戦う以上は僕も負けるつもりはない。


「ルカ、これを持って」


 僕は懐から護符(タリスマン)を取り出した。


 あちこち錆の浮いた、一角獣が彫られた金属製の護符だ。


「これは?」


「ただの護符。だけど僕のスキルをルカに付与する触媒は、今はこれしかなくて」


「そうなんだ?」


 いまいちピンと来ない顔をしているルカ。


 まあそれも当然だ。


 僕の天職【羊飼い】は、もちろんただの職業じゃない。


 ルカやレナートの【剣士】、ヴェロニカの【魔術師】みたいに圧倒的な力はないけれど、それでも僕が生まれた時に天より授かった能力だ。


 つまり、【羊飼い】は固有の『スキル』が使える。


「僕のスキルは、どれも発動条件が微妙なんだけど……これで多少は戦いが楽になると思う」


「わかった、じゃあお願い!」


 決断早っ!


 まだ説明すらしていないのに、この子は人を疑うことを知らないのかな?


 いや、ここは彼女の決断力がスゴいということなんだろう。


 ……決して脳みそまで筋肉で出来ているから……ではないと思いたい。


 まあ、どのみち今は時間が惜しい。


 詳しい説明なら、この状況を切り抜けた後でいくらでもできる。


「それじゃあ」


「うん!」


 吸い込まれそうな、圧倒的な朱の瞳が僕を見返してくる。


 それを真っ直ぐ見据えながら。




「僕と契約して、僕の『犬』になって欲しいんだ。――《牧羊犬》」




「うん! ……………………………………………うん?」



 ルカは頷きかけてから、一瞬怪訝な顔をして……


 みるみるうちに彼女の顔が真っ赤になった。




「うえええええぇぇぇっ!?!?!? ちょ、待ッ――」




 彼女の絶叫と物凄い形相は、逆巻く暴風とまばゆい光の中に消えていった。

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