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第22話 分け前

「二人ともお疲れ! 報酬を持ってきたよ」


 依頼完了の手続きを終え、僕はギルド内の休憩スペースにいるルカとフレイのもとに向かった。


「テオ君、お疲れ様! なんだか、悪いね……全部手続きをやってもらっちゃって」


 先に休憩スペース内のテーブルに陣取っていたルカが申し訳なさそうに言ってくる。


「気にすることなんてないよ。こういう手続きは冒険者見習いの大事な仕事だし。……はい、これ」


 特に僕は気にせず、ルカの前に小さな革袋を差し出した。


 中には、今回の依頼の報酬が入っている。


「ん」


 軽く頷いて、ルカが革袋を受け取った。


 彼女はそのまま革袋を逆さにして振る。

 すると、テーブルの上に銀色の硬貨がチャリンチャリンと音を立てて降り注いだ。


 銀貨十枚。


 これがゴブリン三体討伐の報酬だった。


 もっとも、元の依頼では銀貨七枚だ。


 けれども僕は依頼では討伐対象がゴブリン三体だったところ、このうち一体がホブゴブリンがいたことをギルドに報告し、戦闘終了後に回収した魔石を提出したところ、三枚上乗せしてもらえた。


 これは、ギルドの依頼に対する評価が誤っていたことになるので、適正な報酬額に修正されたためだ。


 ギルドの依頼は内容はかなりアバウトなところがあるけど、金勘定についてはそこそこ律儀だ。


 もっとも冒険者に対するお金の誤魔化しは、信用の失墜に直結する。


 冒険者ギルドは未踏破ダンジョンが発見された時や魔物の大量発生時などで国からの依頼があったりと、人手が必要な場合に冒険者の数を揃えないといけないから、駆け出し冒険者とはいえ理由なく無碍に扱ったりはしない。


 まあ、持ちつ持たれつ、というやつだ。


 ちなみに駆け出し冒険者だとこういう交渉ごとに不慣れなことが多いので、ルカじゃなくて僕が手続きをしたのは、そういう意味でも正解だった。


「じゃあ、これはテオ君の分ね。はい、フレイも」


 言って、ルカは銀貨を数枚掴むと僕とフレイに手渡してきた。


 ……ん?


「ねえルカ。僕の取り分、多くない?」


 僕はもらった硬貨をルカに見せた。


「……多くないよ?」


 何を言ってるの? という表情で、僕を見るルカ。


 いや……これはどう考えてもおかしい。


 今僕の手には、銀貨が四枚載せられている。


 銀貨は全部で十枚。


 僕が四枚で、フレイは三枚。残る銀貨は三枚だ。


「僕は冒険者見習いだよ。これじゃ多すぎる。取り分としては、普通は一割か、よくて二割が普通だよ。だいたいルカは、路銀を稼ぐ必要があるだろ」


 僕は、故郷に帰るためにきちんと路銀を用意している。


 しかも、前いた『貫きの一角獣』はダンジョン攻略ばかりしていたから、実のところお金の心配は全くない、といっていいほどだ。


 もちろんお金は大切だし、たくさんあるに越したことはない。


 けれども、今はルカの路銀を稼ぐために依頼を受けている。


 わざわざ多く受け取る必要はない。


「我も、お金ならたくさん持っておるのじゃ。ルカが必要なら、お金は返すのじゃ」


 フレイが同調する。


「ちょ、ちょっと待って二人とも!」


 銀貨を返そうとする僕とフレイを、ルカが慌てて止めた。


「それでも、私としては、二人にこのお金を受け取ってほしいの!」


 ルカは真っ直ぐな目で僕とフレイを見たあと、続ける。


「これは初依頼で稼いだお金だから。三人で力を合わせて得た、初めてのお金だから。だから、みんなでちゃんと分け合わないと、ダメ。ダメ……なんだ」


 なるほど。


 ようやくルカの考えが分かった。


 このお金は「仲間の証」というわけだ。


 だから金額も等分。


 そういうことなのだろう。


「分かった。じゃあ、このお金はもらっておくよ」


「よく分からんのじゃ」


 フレイはまだ首をひねっている。


「それはね……」


 このままだとフレイが受け取ってくれなさそうなので、ルカの話を補足してやる。


「おお、そうか! つまりこれは、お金の形をしておるが、お金ではないのじゃな! なるほど、ならば受け取らぬわけにはいかんのう」


 天啓を得たようにパッと顔を明るくさせ、格言じみたことをいうフレイ。


 本当に分かったのだろうか?


 ともあれ、フレイがお金をルカに返す様子はなさそうだ。


 でも、まだ一つ疑問がある。


「なんで僕だけ4枚なの?」


 このパーティーは、ルカだけが冒険者だ。


 取り分が公平になるようにしたとしても、彼女が4枚取るべきだと思う。


「テオ君が、このパーティーで一番仕事してるでしょ。だからそれは当然じゃないかな」


 何を言ってるのかな? みたいな目で見られた。


「でもそれは……まあ、いいや。ありがとう」


 さすがにこれ以上反論するのは、空気が読めないヤツのすることだ。


「ん!」


 それに、ルカの満足そうな顔を見ていると、銀貨の一枚を押しつけ合うなんてバカなことをする気は失せてしまった。


「じゃあ、次の依頼はどうする?」


「今度はもっと強い魔物の討伐がいいかな! それか、ダンジョン探索とか! 私、まだダンジョンは入ったことがないんだよね」


「ダンジョン! 我もダンジョンがいいのじゃ! 血湧き肉躍るのじゃ!」


「さすがに、まだ早いと思うよ……」


 とはいえ、スキルの検証のためにどんどん強い魔物と戦っていく必要がある。


 そのうち、ダンジョン攻略に着手する日も来るだろう。

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