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第14話 古竜の正体

「今のは……」


 何だ、と考える間もなく。


 今度はルカの居た場所から、ごう、と魔力が(ほとばし)った。


「うわっ!?」


 反射的に腕で顔をかばう。


 凄まじい量だった。


 溢れ出るそれを、視認すらできるほどに。


 こんな魔力の奔流を、僕は今まで見たことがない。



 光が薄れる。



 その奥に、暴風に風を巻き上げられたルカが見えた。


 髪色は黒から白銀(しろがね)に。


 赤竜を睨み付ける朱色の双眸から光の粒子が溢れ出し。


 めきめきと音を立てて頭部から立派な角が生え。


 背中からは赤竜に似た皮翼が――



 ちょっと待て。



 ……頭に角? ……皮翼!?



「……へっ!?」



 ルカも異変を感じたのか、自分の身体を一瞬見て、バッ! とこっちを向いた。


 驚愕の表情をしている。


 多分僕も今、同じ表情をしていると思う。


「な、なにこれ……テオ君、これ、前と同じスキル?」


「同じだけど……」


「なんで犬耳と尻尾じゃなくて、角とか翼が生えてるの? 私」


「むしろ僕が聞きたいんだけど!?」


 いや、一体どうなってるんだ。


 さっきの僕の現象と関係があるのだろうか?


「……なんじゃそれは。なんじゃその力は。ドラゴンですらそのような魔力、見たことないぞ。さきほどの我がブレスを消し去った術といい、お主ら、何者だ」


 赤竜がなぜか僕たちを見て言った。


 完全にドン引きした眼をしている。


 でもね、赤竜さんや。


 それはスキルを使った僕が一番聞きたいんだ。


「テオ君、今もしかして、ブレスを消さなかった?」


 ルカが僕を見て怪訝な顔をしているけど、説明しているヒマはない。


 それより、ルカの外見変化だ。


 確かに僕のスキル《牧羊犬》――謎の文字列によれば、《守護者》とやらに進化したらしい――は、スキルの効果付与に伴って外見の変化が伴う。


 ……でもこれまでは、《牧羊犬》の名のとおり犬の要素だった。


 けれども《守護者》とかいう新スキルで変化したルカは、まるで……数千年まえに世界中で暴れ回り、当時の文明を滅亡に追い込んだと言われる『魔人』の姿そのものだった。


 もっとも僕もギルドの座学で想像図を見たくらいで、実物を見たことはない。


 魔人はずっと昔に滅びたとされているからだ。


 それはともかく。


 今の彼女からは、今までとは比べものにならない凄まじい量の魔力が溢れ出だしている。


 けれども、僕から彼女へ供給される魔力は以前と変わりがないようだ。


 赤竜がたじろぐほどの威圧感を醸し出すルカの魔力量は、彼女自身のものだ。


 さきほどの変な声といい、ルカの姿といい、今までなかった現象だ。



 いや……。


 そういえば、一つ思い出したことがある。



 昔、『貫きの一角獣』が自分たちの実力をよく把握していなかった駆け出しのときに、レベル違いのダンジョンに潜ってしまいパーティーが死の危機に瀕したことがあった。


 そのとき僕は仲間に護られて無事だったけど、レナートを始め他のメンツは瀕死の状態だったりとか致命の一撃をもらう寸前にいきなり強くなったり、今まで使っていなかったスキルを使い出したことがあった。


 そのときは皆して「何かよく分かんねーけど強くなったぜ!」で済ましていたから、非戦闘職の僕は「そんなことがあるものなんだ。戦闘職すげー!」と流してしまっていたけど……


 まさか、これが僕の『それ』なのだろうか?


「でも、ものすごい力だよ! これなら、やれるかも! あとさっきよりカッコイイし!」


 片刃剣を構えたまま、ものすごく嬉しそうな顔をするルカ。


 ちなみに剣は淡く発光し、周囲にはゆらゆらと魔力の残滓が漂っている。


「ルカ、気分は大丈夫?」


「全然平気だよ、むしろ最高かも!」


 ルカが叫ぶ。


 たしかに特に苦しそうだったり狂気に飲まれてしまっているような様子はないけど……


 まあ本人が大丈夫だと言うのなら、僕としては今言うべきことは特にない。


「じゃあフレイ、いくよ!」


「ま、まてまてぇい! そんなの、反則じゃぞ! 絶対強いやつじゃろうが!」


 ルカが赤竜に向き直ると、とたんに赤竜が慌て出した。


 けれども、ルカはそこで手心を加えるタイプではないらしい。


「待たない!  ――仕掛けてきたのは君だからね! せあぁっ!」


 裂帛の気合いが辺りに響く。


 次の瞬間、ドン、と地が膨れあがり――弾けた。


 ルカの突進による衝撃が、蹴りつけた地面を吹き飛ばしたのだ。


「せああああああああああああああああぁぁぁぁっ!!!!」


「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃッ!!??」


 ルカと赤竜の(意味の違う)絶叫が入り乱れる。


 まるで矢のように突き進んだルカが、一瞬で赤竜に肉薄する。


「――《唐竹割り》っ!!」


 スキルらしき言葉を叫びながら、魔力を帯びた片刃剣を勢いよく振り下ろした。


 次の瞬間。



 ゴッ――――



 衝撃が地を揺るがした。


 地面がまるで緑の絨毯をはぎ取ったかのようにめくれ上がり、衝撃波が周囲の土砂ごと草花を吹き飛ばす。


 赤竜は必死の形相で体をひねり、これを躱そうとするが――間に合わない。




「ちょ、待っっっ……ぎにゃああぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!?」




 …………ぎにゃあ???


 断末魔? にしてはずいぶんと情けない悲鳴を上げ――


 まっぷたつに切断された赤竜が――ぽん、と弾け飛んだ。


 ……弾け、飛んだ?


「えっ」


「へぁっ!?」


 次の瞬間。


 まるで何かで拭い取ったかのようにさぁっと霧が晴れ、陽光が辺りを照らし出した。


「これは……」


「あれっ!? ここ、元来た道じゃない?」


 気付くと、周囲の焼け野原は青々とした草原に変わっている。


 一部、ルカの攻撃で抉り取られた地面が痛々しいけど、赤竜の放ったブレスのあとは跡形もなく消え去っている。


 草原には見覚えがあった。


 道が岩場になる直前の場所だ。


「ううううぅぅぅ……ちょっと調子に乗りすぎてしまったのじゃ……」


 赤竜のいた場所には、青色の物体が怯えたようにプルプル蠢いていた。


 大きさは、まるまる太った野ウサギくらいの大きさだろうか。


 ともあれ、人間でも竜でもない、それは。


「もしかしてフレイ、それが本来の姿なの……?」


「うわああああぁぁん! もうちょっとでこっちが消し飛ばされるところじゃったのじゃ! 怖かったのじゃぁーーーーっ!!!!」




 身体を震わせ泣きじゃくるそれは……スライムだった。

「おもしろかった!」

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