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『妖精騎士の物語 』 少女は世界を変える  作者: ペルスネージュ
『デビュタント』

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第192話 彼女は騎士学校入学の準備を進める

第192話 彼女は騎士学校入学の準備を進める


 デビュタントという名の市中引き回しの刑を無事終え、彼女は次の段階に進むことになる。騎士学校への入学期間中、リリアルの業務に関して、魔術師一期生中心に役割を持たせ自律的に行わせなければならない。


 対外的なこと、学院としての運営に関しては祖母と歩人中心に行うことになるであろうし、必要な場合、姉経由でニース商会が協力することになる。

 

 それ以外の、冒険者・薬師としての業務、王都の孤児院・施療院に関しての仕事は魔術師一期生が彼女の代わりに役割を担う事になる。


 


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




「妥当よね」

「ええ。二期生の選抜・入校後の分業もこのような形になるわね」


 魔力と冒険者としての経験である程度役割を分けることにしている。彼女と伯姪もその中で別れることになるだろう。


 冒険者としての役割は青目蒼髪を主体とし、これに赤目蒼髪、赤目銀髪を中心に編成するものとする。


「男の子が班長、女の子二人がその補助かしらね」

「前衛のリーダーと後衛のリーダーという感じかな。弓手はいないと思うけれど飛び道具使いだから、妥当でしょう」


 弓ではなく弓銃か魔装銃を二期生には装備させる予定である。


 薬師・錬金術師としての役割は碧目栗毛を班長とし、副長を藍目水髪にする。能力的には藍目水髪なのだが、性格と面倒見からするとこうせざるを得ない。灰目赤毛と碧目赤毛がここに加わる。


「この子達は薬師見習の子含めて薬草畑や素材採取の活動をメインで仕事を受けてもらうわ」

「じゃあ、魔力大班の子たちはどちらに含めるつもり?」


 彼女の結論は……三人で分担して彼女の仕事をこなしてもらう事である。魔術師見習の教育やフォローを茶目栗毛・黒目黒髪・赤毛娘にしてもらう事になる。


「ある時はお婆様の侍従や侍女の仕事、ある時は討伐隊の補助、日々の業務に関しては薬師組と打ち合わせをして教育の講師助手を頼む形ね。それと、警備隊長も誰が院長不在時の上長か明確にした方がいいでしょう」


 彼女の祖母は教育のフォローは出来ても、討伐の指揮は出来ない。茶目栗毛が狼人と連携して事件発生時に対応すると決めておく方が良いだろう。


「なら、私たちが不在時でも彼らだけで回せそうね」

「そうしていかないと……私が無理よ。それに、人数が増えていけば、自然と役割は決まってくるでしょう。今でも、遠征の時はそんな感じだもの」

「確かにね。二期生入校に向けて進めなきゃね」


 という事で、今後は慣れる為にもこの役割をしばらくは進めていくことになるのである。





 学院の内部の事だけでなく、今後の事には様々な業務を進めていかなければならない。その一つが、東の村をはじめとするリリアル領の様々な取り組みや、リリアルに所属する孤児院卒の子たちの育成である。


 騎士学校入校前に、姉とニース商会絡みの仕事も進めていかねばならない。


「この籠可愛いでしょ?」


 姉は商会で扱っているという籠を見せる。大きさとしては野菜を入れたり、ちょっとした小物や着替えを入れておくのに丁度いいかもしれない。


「東の大国では『竹』っていう植物を割いて編むらしいんだけどさ、こっちにはないんだよ。なので、似たような性格の『柳』で編んでもらったのね」


 元々の柳の枝の色のもの、着色して茶褐色のもの……これは虫除けの効果を付与しているのだろうか。


「軽くて使わないときには、こうやって大きさを少し変えて重ねて仕舞えるんだよ」


 同じ形で少しずつ小さなものが入った四角い籠を姉は彼女に見せた。


「リリアル系列の村の内職用にどうかなって。柳は川べりに植えたり、湿地に植えると根を張って地面を締める効果があるんだよ。すぐ育つしね。それと、焚き付けにもなるから、薪も節約できるんじゃないかな」


 良いことづくめである。村の現金収入にもなるし、織物のように道具も必要ない。川筋も安定するし、冬の薪も少なくて済むなら申し分ない。


「まずは……リリアルの薬師の子たちに覚えて貰って、薬入れとか……どうかな」

「素晴らしいアイデアだわ。可愛らしいし、それを教える事で人と繋がる事もできるのですもの。リリアルの子たちに必要な技術ね」


 柳は挿し木で増やせるので、余り育てるのに手が掛からないという。それも魅力なのだろう。





 姉曰く、それだけではないのだという。


「法国の埋立地の国がすっかり左前なのは知ってるでしょ?」


 東方貿易を独占した一大海運国家だった海に浮かぶ城の如き都市国家。サラセンとの対決で艦隊を失い、東の帝国も滅亡した結果、その国は一時期の大国としての存在を失ってしまった。船・商品・港何もかもだ。


「でね、それまで独占してきたガラス作りの技術も流出させちゃったんだよ。今では連合王国も帝国も勿論、王国でもガラスの工房ができていてね。木を燃やすよりも石炭? 炭みたいな石って、鋼を作る時に使うあれを使うと、すごくいいみたい」


 そのガラス工房で作られたある物で、ある商品を王都に運びたいらしい。


「ワインって作り立てが一番おいしいじゃない。樽に入れておくとどんどん味が悪くなってさ。その樽だって木を切って組むからお金がかかるわけ。でね、ワインをガラス瓶に入れて保管すると傷まないんだよ」

「……錬金術では当たり前のことをワインでするわけね」

「正解!!」


 姉曰く、瓶でワインを運ぶにはガラスが割れないように保護する必要があるというのだ。その為に、籠を編む技術で瓶を包んでしまいたいのだという。確かに、平べったい底を持つワインの瓶にそのような編みこみをすれば、多少の揺れでもぶつかって割れる事は無くなるだろう。


「その為に、籠を編める人を育てたいわけね」

「ワインを売る人、瓶を作る人、その瓶を割れないように籠編みする人、それを荷馬車で運ぶ人って、囲い込めたら大きく稼げるかなって」


 姉は何時もの悪だくみを考え付いた時のキラキラした目で彼女を見ている。確かに、それは大きな商売になるかもしれない。兎馬急便も売り込みたいところだ。


「肝心の……ワインに当てはあるのかしら」

「ブルグント公爵だよ」


 ブルグント公爵の領地では古の帝国時代からブドウ栽培、ワインの醸造が修道院中心に行われてきている。ブルグント産は王都でも主流のワインだ。他にも帝国産、王国南部のガスコ産、シャンパーニュも有名な産地ではある。


「だから、これが成功すると、これまたニース-ブルグント-王都のラインが強化されるわけだよ。お姉ちゃんが張り切るわけもわかってもらえるでしょ?」


 ガラス工房に近い村で作成するとなると、東の村あたりが対象になるのだろうか。規格が同じなら、ある程度編み上げておいて最後のフィットだけを残しておくなんてことも可能かもしれない。


「だから、柳の籠も大事なんだよ。よろしくねー」


 姉は言いたいことだけ彼女に伝えると、さっさと次の話題へと話を進める。





「柳の他にイチイの樹も植えたいんだよねー」


 樫は良い木だが、成長に時間が掛かる。柳同様、育ちやすく役に立つ木を村々で育ててほしいのだ。


「イチイは弓の素材になる密度の高い木で育ちも早く良い木だよね。丈夫な家具なんかにも使われる」

「トネリコは斧の柄なんかにも使われる撓りに強い木で、荷車の台車になんかも適しているよね。あと、よく燃えるから端材も役に立つ」


 成長には30年ほどかかるようだが、植えた木すべてが最後まで成長するわけではない。若木の間に間引かないといけない木もあるだろうし、育ち過ぎる前の素材も必要であるので、数年後から使える木材と言えようか。


「では、柳の次はイチイとトネリコを植えていくことにしましょう」


 イチイはサクランボのような実のなる細い葉のつく木であり、教会の敷地に植えられることが多いという。


 村の周辺に計画的に植林することで素材の採取が計画的にできるようになる。自衛の為にもそうした計画は必要となる。森で伐採するだけではいただけないのだ。





 自領を含め、廃村や離散した村を回復させるために、新しい工夫も必要となる。都市と村の違いは様々あるのだが、最大の違いは農村に住む人間は都市に入る場合、お金を支払わねばならないということだろう。


 都市を維持するには農村とは比較にならない資金が必要であり、その為に住人は様々な税を支払っている。農村に住む人間にはそれが賦課されていない分、入場時に課税されるのだ。


 故に、農村に住む人間は行商人を通して売り買いする方が効率が良い。わざわざ都市に足を運ばずとも売り買いができるからである。


「兎馬車の行商人ね」

「そうそう。籠を買い取るだけじゃなくって、必要なものを頼まれたり、荷物を届けたり。冒険者ギルドの出張買取みたいなものはどうかなって」

「それで、薬師がいない村には、村長のところに置き薬を預けるんです。

訪問する都度、使った分だけお金をもらって薬を補充するのはどうかなって」


 なるほど、薬師や治療のできる魔術師がいない村がほとんどであり、昔はいたと言われる「魔女」の姿も見なくなって久しい。あれは、素材が取れるそばに住んでいた未登録の薬師たちなのだろう。


「王都や領都まで簡単に来れない村もあるし、必要なときって身動き取れない場合もあるしね」


 大雨、大雪、魔物の不意な発生……必要なときは、薬や薬師の助けを求められない。薬草が見つかるかどうかも分からないし、即薬にできるかどうかもわからない。


「古くなった薬は施療院で使っちゃえばいいし、損はしないと思うんだよ☆」


 それもその通りかもしれない。村は現金がないことが多いので、その為に、素材の採取や内職や孤児の受け入れで協力してもらう事を交換条件にすることも考慮に入れるべきだろうか。


 王国内の商業のネットワークを王都中心に張り巡らせていくことは経済的な面だけでなく、政治的にも重要なのである。帝国などがその典型的な姿だが、商人や宗教人を中心とする都市と、その間に存在する農村と小領主の城とが個別に存在しており、両者は別世界なのである。


 大領主であれば、居城の周辺を都市として育成し囲い込むことも可能だが、下位の貴族ではそれは不可能であり、帝国内では大領主と都市住民の勃興と、小領主・農村の衰退という二極化が進んでいる。それは、程度の差こそあれ王国でも似ているのである。


「都市だけでは生きていくことは不可能なのにね」

「そうそう。商人が存在しなくても死なないけど、農村はそうじゃないからね。だから、都市の商人が偉そうにしているのを外していかないとね。あいつら、原神子教徒で潜在的には敵だからさ」


 彼らは自分の利益を最大化することこそ神の意志に適うなどと嘯いている。汝が隣人である都市の外に住む者を蔑ろにし、その根をはる大地である王国を蔑ろにするものも少なくない。


「だから、行商しちゃうぞ!」

「ええ。安価に手に入る農村で買いたたいて、自分たちのテリトリーで高く売る転売なんて許さないわ」


 ニース商会が介在することで、近隣の都市から買い付けに来る地元の商人に依存せずとも適切な価格で必要な物を入手できるのであれば、地元の商人も無茶は出来ない。はず。


「こっちは王家の後ろ盾があるリリアル学院の魔術師や薬師がいるからね。行商も手伝ってもらうからさ」

「兎馬車でGo!!……という事かしら。王都周辺から始めて、少しずつ範囲を広げていけるようにしたいわね」


 恐らく、王都の次は南都周辺がその範囲となるだろう。


「でさ、上手く回れば他の地域も『うちもやらせてくれ』って下っ端が言い始めるじゃない。ギュイエ公領やヌーベ公領もその範囲に入ってくると、崩し甲斐があるよね」


 武力ではなく、経済的に締め上げていく、上からではなく下から声を上げさせ突き上げていく……王家の望んでいることはそう言う事であろうと姉妹は推測するのである。


 


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 先日、姉から依頼のあった『魔銀扇』に関して、試作品が仕上がってきているのでそれを実際、確認させる事にした。思った通り……


「魔銀製の煽具……何に使うのかしら?」

「あー メイスの代わり……かな?」

「……姉さん、夜会に魔物は……出ないとは限らないわね。王妃様や王女様の護身用に必要という事ね」

「あ、ついでに私たちの分もね☆」


 煽具とは、神国の貿易で東方の国からもたらされた折り畳みのできる「神国の煽具」のことだ。広げれば30cm程の半径で半円に近い広がりの『扇』となる。貴族の間、特に女性に人気のアイテムである。


「あれで口元を隠して目線だけ相手に送って……みたいな使い方が流行りなんだよね」

「言いたいことをはっきり言わない貴族にとっては便利な道具ね。でも、金属で作るのは重たくなるじゃない」

「骨だけ魔銀製で、間の部分は魔装布を使えば問題ないと思うよ。レース編みするの骨かもだけれど」

「……孤児院の内職に出せるかもしれないわね『それだ!!』」


 魔銀の骨は職人が作る必要があるし、糸もリリアルで用意することになるだろうが、レース編みする分には問題ないかもしれない。


 鉄製の扇も武具として存在するというが、はたして魔銀製の扇はどれほどの重さになるのだろうか。


「扇ぐには重たそうじゃない」

「魔力通せば大丈夫にならないかな。出来れば、風が吹いてくるみたいな術式組み込んでくれるといいね。温風冷風切り替え付きだとなおよしだね」

「……聞いてみるわ」


 魔道具めいてくるので、老土夫が付与できるかどうかによるだろうが、数が少なければ王宮の宮廷魔導士に王家から依頼すればいいだろう。姉の趣味の武具が益々増えていくのかと思いつつ、彼女自身、少々楽しみであったりする。






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― 新着の感想 ―
[一言] 樫とイチイの成長速度は逆じゃないかな。
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