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6話 買い物

十勇士を名乗った刀の男の魂は黒かった。


(強い者が綺麗な光の玉という訳ではないみたいですね........)


フィルは先の戦闘で傷ついてはいたが、幸い動脈を傷つけられたりはしていなく、浅い傷が多い。

しかし、早速貰ったばかりの制服が所々切られてしまていた........


水で傷を軽く洗い、応用魔術で過酸化水素を生み出し水と合わせる。過酸化水素を3%程まで薄めたら消毒液(オキシドール)の完成だ。傷口にかけ消毒をする。


その後直接圧迫止血法を用いてフィルは応急処置を済ます。


ガーゼとか包帯は持ち合わせていなかった為、コートの生地を切り、高温の純水を生成し加熱消毒して代用する。



「そう言えば十勇士って言ってましたね、なんなんです?」


応急処置が終わるとフィルは十勇士について聞く。


「倭国のお偉い様の暗殺部隊っすね、倭国の中でも腕利きで有名っす!」


「そうね、実際強かったわね。フィルじゃなくて私だと風と鋼鉄化の相性が最悪で厳しい戦いになったかも........でも逆にケリーなら金属に変化されても電動率が上がって雷がより効果的に効くから楽に勝てたかもね」


(アーシャは厳しい戦いと言った。負けるとは言わないあたり何か奥の手があるんですね........)


「あー、ちなみに本来なら対象の首を持って帰るんだ。俺の魔道具の水晶で死体を国のやつらに見せている上で、奴の刀『緋月』を回収出来ているから今回はいいがな」


「魔道具って便利ですね」


(首を持って帰るのは少し嫌だなぁ)


そんなことを会話をしながら王都レライアへと走る死の涙であった。




王都に戻り城に戻ると夜になっていた。暗殺報酬として金貨を10枚貰う。そのうち他の隊員は1枚ずつ金貨を貰っていった。


「今回はフィルのデビュー戦っすからね、報酬はフィルが多くて当たり前っす!」


「傷ついた制服は後で魔道具研究室に持って行って修復して貰うから、後で私に渡してね」


その後アーシャの部屋の場所を教わった。


「あー、お疲れ様。報告はおれが走りながらしといたからフィルは治療室にでも行け。緋月はそのままお前が貰って良いそうだ。

あと明日はフィルは休みだ。街で普段着る服でも買っとけ。変装して暗殺する時にも使える服もな」


緋月は普通の刀より長めの刀だ。ヒヒイロカネという希少金属により打たれた特殊な刀で、緋月の名に相応しい赤黒い綺麗な刀身をしている。

錬金術師の改造により魔力を込めると斬撃を飛ばす、刀身を伸ばす、白炎を出すことが出来る不壊の刀だ。


「分かりました、有難く頂戴致します。」


(........使いこなす為に訓練が必要ですね)


「あー、あとこれをやる」


そう言ってレイから渡されたのは黒い懐中時計だった。


「あー、初任務で死ぬ者は多いからな、任務終了をもって正式に死の涙の一員と認める。黒時計はその証だ。国内なら身分証として使えて、それを見せれば死の涙の一員と分かる。売るなよ?」


そう言われた。持ち運び出来る小型の時計は精巧な技術が必要な為高価だ。けどこれが身分証の代わりになる訳だからたしかに売れない。


そして、フィルは皆と別れ治療室に行く。


「あらあらまあまあ、昨日の今日でまたこんな怪我をしたの? 気をつけないとダメよ?」


「はい........すみません」


「ん、素直でよろしい!」


そう言うとマリーはくったくのない笑顔を向ける。

そんな会話をしつつマリーは相変わらず凄い速さで治療をする。


「はい終わり! じゃあまた来てね〜」


(また来る時は傷ついた時なんですが........)


「はい、ありがとうございました」


マリーの天然を味わい、ボロボロの服に着替えてアーシャの部屋に行き制服を渡す。それから自室に戻ると一日の終りとして風呂に入りベッドに横になる。


(うん。ベッド気持ちいい........)


微睡みを味わいながら眠りにつくのであった。




翌日目が覚めるとボロボロの服と靴に緋月という装備で、金貨1枚と黒時計と部屋の鍵を持ち城下街へと向かう。


(昨日頂戴した緋月と黒時計は、常に持ち歩くべき物だ。出来るだけ早く持ち歩くのに慣らした方がいいですね........)


金貨1枚しか持ってこなかった理由は、金貨6枚というのは大金だからだ。


銅貨5枚もあれば1食食べれる。

銅貨10枚で大銅貨1枚になる。

銅貨が100枚で銀貨1枚になる。

銀貨1枚あれば宿に最低1泊は泊まれる。

銀貨が10枚あれば大銀貨1枚になる。

銀貨100枚で金貨1枚になる。その為金貨なんて普通に暮らしてるとほとんど使わないものだ。


(暗殺者って稼げるのですね........まぁ命懸けですしね........)


そんなことを考えながら歩いていると服屋を見つけた。店に入ると店主がフィルを見てあからさまに嫌そうな顔をする。


(まぁボロボロの服を来た刀を持った子供が1人で来たら冷やかしとかとか、物取りとかと思いますよね........)


「お金ならあります、安心してください」


そう言い金貨を出すと店主は驚いた。


「坊主そんな大金素手で持ってて大丈夫か? ちなみに、盗んだんじゃないよな?」


今度は店主は色んな意味で心配をするのだった。


「大丈夫です、誰からも盗んでませんよ。ただやっとの事でこなした仕事の報酬が金貨だったので........金貨しか持ってないんです」


「そうか........疑ってすまないな。どんな服をお探しだい?」


店主にとって金貨程の金があるならフィルは上客でしかない。その為、普通ならまだ怪しい子供を言及せずに態度を変える。


「うーん、普通に街中を歩けて動きやすい服ですかね。あ、あと貴族に会っても困らない服も1着欲しいです」


「あいよ、少し待ってな」


そう言うとオーソドックスな長袖やTシャツ、半袖の襟のあるシャツや長ズボンに肌着や下着。それに白ワイシャツ、ネクタイ、ベルト、靴下、普段靴、革靴、スーツ、貨幣袋などを店主が持ってきてくれた。


「あ、すみません、スーツと革靴は今はないですが持っているので不要です」


そして試着をしていき、着心地やサイズに問題なかった服を纏めて購入する。銀貨40枚分くらいになった。最後に着た服と靴を着たままにし、最初に着ていたボロボロの服と靴は処分してもらった。


「また服や装飾品に困ったら来ますね」


「あいよ!ありがとな!」


店主としても纏めてこれだけ買ってくれる客はありがたかった。


手荷物がいっぱいだった為、フィルは部屋に1度置きに戻る。貨幣袋に全財産を入れ、また城下町に向かう。


次は冒険者っぽい装備を買いに行く。変装任務の時のことを考えてだ。あの死の涙の制服程ではないにしろ、装備はしっかりしたものを使いたい。

というわけで城を出る前に門番の騎士に良い防具屋さんがないか聞く事にする。


「すみません、レライアで良い防具屋さんをご存知ありませんか?」


「あぁ? 坊主、どっから城に入りやがった」


「........元々何年も城に居ましたよ、これ見たら分かりますか?」


フィルは黒時計を騎士に見せる。


「!? た、大変失礼致しました!」


すると門番の騎士の態度が一変する。


(死の涙って地位的には騎士より高いのかな?)


「大丈夫です、それよりもう一度聞きますが、レライアで良い防具屋は知りませんか?」


「それならドワーフがやってる防具屋があります。こじんまりとしてるけど1品1品の質が良いです。

あとはオマール商会がやってるレライア名物のオークションですね。

月初めに1回だけあるオークションなんですが今日がその日なんです。基本高いですが普段見れない品を見れますよ」


オークションは昼からあるらしい。それまではドワーフの店に行き、昼食兼朝食を食べてからオークションに向かうことにした。


そうしてドワーフの店に着くと、これまた露骨に嫌な顔をされる。


「ガキにはうちの防具は早い、最低でも5年後に出直してきな」


「お金ならあります、防具が仕事で必要なんです」


「あー? 冒険者ってことか? こんなガキが冒険者なんて世も末だな」


冒険者は魔物を狩る仕事を生業とする職業で、

ランクが高いと傭兵のように護衛の依頼もある。

冒険者は試験に受かれば誰でもなれるが、一定の実力じゃないと死んで終わる為、それなりに厳しい試験となっている。


「防具に頼るつもりはありません。でも防具を持ってないと舐められます。一々絡まれたくないんですよ」


フィルは最もらしいことを言い魔装を発動させる。魔装を見せるとドワーフの顔色が変わる。


「........お前さんとんでもねぇ魔力だな........あー、悪かったな。で、どんな防具が欲しいんだ?」


「冒険者っぽく見えるもので........さっきは防具に頼るつもりはないと言いましたが、どうせ買うならそれなりに防御力もあって動きやすい方が良いので」


「冒険者っぽいとなるとフルプレートアーマーは論外だな。予算は?」


「金貨5枚」


「そんだけありゃ充分過ぎる。オーダーメイドだろうとも問題ねぇな。急いで必要か?」


「そうですね、次の休みがいつか分からないので出来たら今日買いたいのですが」


「となるとオーダーメイドは無理だな........だがオーダーメイドじゃないなら安く済むぜ。これなんてどうだ? ワイバーンのレザーアーマーとレザーブーツだ。丈夫で軽いぞ。」


紺色のチョッキのようなレザーアーマーだった。見た目もシンプルでフィルの好みだった。

レザーブーツも履いてみると思ったより軽く、動きやすい。


「とても良い装備ですね........おいくらですか?」


「レザーアーマーは銀貨50枚、ブーツは銀貨20枚だな、買うなら今日中にサイズ調整するぜ」


決して安くはないが必要経費だと納得出来る値段だった。むしろ物にしては安くないか?と思うほどである。


「買います。他には何かありますか?」


「盾は使うか?」


「あ、荷物になるので盾は不要です」


「ん、そうか........あとはマントだな。マントは毛布代わりにも使えるし、日差しを遮ることも出来るから冒険者の必須アイテムだ。

グレイトスパイダーの糸で作ったフード付きマントはどうだ? 火には弱いがかなり頑丈で強かだ」


黒いマントだった。火は水の魔装で消せるし問題ないだろう。


「それも買います。いくらですか?」


「銀貨30枚だ」


「あ、あとこの刀剣を腰に掛けたいのですが、刀を掛けられる帯刀ベルトってありますか?」


「ほぅ、すげぇ刀だな........。おっと悪いな、つい見入っちまった。今店にある帯刀ベルトを調整すれば掛けられるように出来るぜ」


「分かりました、それもお願い致します。帯刀ベルトはおいくらですか?」


「あー、帯刀ベルトはサービスしてやるよそんなに手間かからねーし、良いもん見せて貰った礼だ」


「良いんですか? ありがとうございます........ そしたら金貨1枚ですね。買いますのでこれを」


そう言いフィルは金貨1枚を渡す。


「分かった。俺はグランだ。サイズを調整しとくから夕方以降にまた来な!」


「はい、よろしくです」


(良い買い物が出来た)


素直にそう思うフィルだった。


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