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5話 緋月

港町コトルへは6時間かからないくらいで着いた。


レイは水晶を取り出すとなにやら誰かと会話をし始める。会話が終わると、


「あー、刀の男はリベラを出てコトルに行く街道を歩いて行ったが........まだコトルへは着いてないらしい。こっからはリベラへと続く街道を歩くぞ」


リベラからコトルは40km。時速5kmで歩き続けて8時間程だ。


(もう少し待てば刀の男は着く頃ではないか?)とフィルは思ったが........


「街道で戦えれば街の中でやるよりいいし、街中に入らないで待ち構えるには........この格好は目立ちすぎるからね」


アーシャがそうフィルに言うと苦笑いをする。


「あー、そういう事だ、もし対象らしい人物がいたら逃げられないようにダッシュで急接近しろ。あと戦うのはフィル一人だ。全力で殺して見せろ」


街道を走って行ると、1人で歩いている者は3人いた。その度に加速し急接近する。


急接近された者は突然「死の涙」と噂の抹殺部隊に囲まれ死の恐怖を味わった。

そうこうして4人目。時間にして2時間かからないくらいの時に刀を腰に携えた男が街道を1人で歩いているのを発見し、急接近し部隊で囲む。


「........おたくらは何もんですかい?」


「あー、腰の刀に黒髪に倭国の服。間違いなく対象だな。殺れ」


フィルがレイの言葉を受け水刃を7つ放つ。


「刺客ですか、問答無用ってことですかい!」


そう言いながら刀の男も斬撃を放ち相殺した。


「斬撃を飛ばす、、その刀の力ですか?」


「そうですね、これだけじゃないですが、ね!」


そう言うとフィルと刀の男は剣で斬り合う。


フィルの今使っているバスタードソードははっきり言って安物だ。魔力を纏わせているとはいえ、相手は業物の刀を錬金術でさらに高めた代物だ。


それに加えて相手も刀に魔力を纏わせている。バスタードソードはあっという間にヒビが入り折れてしまった。


「勝負ありじゃないですかい?」


「仕方ないですね」


そう言うとフィルは折れた剣で己の指を切った。

その血で血液魔術を使い血水刀を作り出す。


「その刀、頂きます」


再び剣戟が始まる。

ウォーターカッターの如くの切れ味の斬撃を与えてもその刀は折れない。それどころかヒビすら入らない。


「血の刀ですかい、たしかにさっきより剣の重みが違いやすね。でもこいつはヒヒイロカネを使った『緋月(ひづき)』という特別な業物。易々と壊れたりはしないです、よ!」


「ヒヒイロカネですって!?」


アーシャが驚きの声をあげた。ヒヒイロカネは生きた金属と言われオーラを纏った伝説の金属である。


自分の実力に自信があるのだろう。


(おしゃべりな奴ですね)


そうフィルは思っていたら、急に緋月の刀身が伸びフィルに襲いかかって来た。


「くっ!」


躱しきれず首を少しを切ってしまう。

あと少しで頸動脈を切られていただろう。

戦闘中に敢えて喋ることでフィルに少しの油断を作ったのだ。


(この男、かなり戦闘慣れをしていますね)


「あー、不壊な上に魔力を込めると斬撃を飛ばしたり刀身を伸ばせるのか。厄介だな」


「フィルずるいっす!オレも戦いたいっす!」


「今ので仕留め切れないとは、、やりますねぇ」


フィルは首から出た血を魔力で生み出した水と合わせ、4本の血水刀を宙に作り出す。


「あまり時間をかけたくないので........死んでください」


フィルはそう言うと4本の血水刀と共に魔装を全力で展開し突撃する。


刀の男は驚いた。フィルの魔力により生み出された魔装がとんでもなかったからである。


しかし、フィルの手数や威力が増えても捌き切る自信が男にはあった。

普通に斬り合えばフィルと男では戦闘の経験、太刀筋に差があったからだ。

計5本の刀をまるで舞うかのようにいなすその男の 剣と体捌きは綺麗であった。


しかし、長くは続かない........


「な!?」


「お返しです」


フィルの血水刀の刀身を伸ばしたのだ。

伸びた血水刀により右肩を刺された男はそのまま隙を突かれ、5本の刀の勢いに負け、捌けなくなる。


「ありがとうございます、『緋月』といいましたか、有難く貰い受けます」


「そう簡単に緋月を渡す訳には行かないんです、よ!」


その瞬間金属音が辺りに響く。

本来なら血水刀に切られる筈の身体が、フィルに硬い手応えを与える。


「忍術『鋼鉄化 』。これを使うと反則的でしてね、あまり気が乗らないんですが仕方ありません」


(なるほど、これが忍術ですか........)


男は自身の魔力で自身の皮膚を鋼鉄に変えたのだ。


そして今度は刀の男が攻撃に出て再び斬り合いが始まる。

フィルも5本の血水刀を使い受けるが、刀の男が回避や防御を全くしなかった事により意表を突かれる。

致命傷にはならないようになんとか躱すが、身体に幾つも剣を受けてしまう。


さらに


「これで終わりです」刀の男がそう言う。


男が刀に魔力を込めると刀から白い炎がでる。


フィルは危険を察し、鋼鉄だろうと切る威力の水刃を放ちつつ、全力で水の魔装を展開する。


男は水刃を白い炎を纏った緋月で切り伏せ、さらにフィルへと攻撃するが、水の魔装と血水刀によりなんとかフィルは防ぐ。



「........強いですね」


「あなたも強いですよぉ、私これでも倭国で十勇士と呼ばれる存在なんですが........」


ヒヒイロカネを使用した刀剣「緋月」は、錬金術師の改造により強い魔力を刀に纏わせると白炎を放つ。

白炎は超高温の火な上に光属性と火属性の複合魔術だ。


そんな奥の手を使ったにも関わらずフィルを殺せてない事に刀の男は驚いた。


フィルは鋼鉄化と白炎を見て、血水刀と原初魔術だけの攻撃で出来たら勝ちたかったがそうも言ってられない相手だと認識する。


フィルは辺り一体に水蒸気を発生させる。


「目くらましですかい、そんなもので私を倒せるとお思いで?」


「違いますよ、こうするんです」


氷雪魔術『絶対零度(アブソリュートゼロ)』により刀の男の周りの水蒸気が一斉に凍る。


もともと絶対零度(アブソリュートゼロ)程の魔術なら男を凍らせることは出来るのだが、念には念を入れて水蒸気を先に展開することで凍らせるスピードを上げたのだ。


「さようなら」


それが刀の男が最後に聞いた言葉だった。

一瞬で刀の男が凍り。1つのデカい氷塊が出来上がる。

念には念を。その氷塊に向かいとてつもない魔力を込めた水刃をフィルは放つ。


氷塊ごと刀の男の身体は真っ二つになる。

絶対零度により血すら凍り、血は流れなかった。

フィルは緋月の周りだけ氷を溶かし緋月を回収すると


「任務完了しました」


そうレイに言う。しかし........


「あー、満身創痍だな。........だが帰るまでが任務だぞ」


そうレイにフィルは窘め(たしな)られるのであった。


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