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4話 抹殺部隊

久しぶりに熟睡したフィルは朝早くに目覚め、お風呂に入りボーッとして集合時間まで過ごす。


(風呂とベッドがある部屋の為だけでも、抹殺部隊に所属出来て良かったですね)


と、そう思うのであった。


そして昨日言われた通りに、最初に抹殺部隊の隊員に出会った部屋へと向かう。部屋に着くと煙草を吸っている見覚えのあるいかついおっさんと、ケリーがいた。


(........室内で煙草を吸わないで欲しい........)



「おはようっす!フィル」


「おはようございます、ケリーさん........あと........」


「あぁ、ゼンだ。よろしく」


いかついおっさんがやっと名前を教えてくれた。


「ゼンさん、よろしくお願いします」


「フィルは礼儀正しいな、訓練生の前は貴族の子だったのか?」


「いえ、小さい頃から訓練生でした。訓練生で元貴族の娘だった子に敬語を教わりました........」


「........なるほどな」


訓練生は礼儀作法までは教わらない。その為ゼンも少し不思議に思ったのだろう。


「えっと、それで隊長とアーシャさんは?」


「朝の集合の時はアーシャが隊長をいつも起こしに行ってるっす! あ、あとこれ着とけって言ってたっす」


渡されたのは黒いフード付きコート、黒いスーツ、黒ワイシャツ、黒の革靴だ。


「これは魔力耐性のある服と靴で、丈夫なのに伸縮性もあって案外動きやすいんすよ。温度調節の魔術も備わっていて、魔力を通すと強度も上がるっす!」


「これめちゃくちゃ高価なものなんじゃ........そしたらまだ時間あるので着替えてきますね」


部屋に戻り着替えてみると、たしかに着心地が良く動きにくさは感じない。フィルが集合部屋に戻るとレイもアーシャも揃っていた。


「あー、皆揃ったな。じゃあ移動を開始する。目的地は港町コトルだ。移動しながら任務について説明するぞぉ」


眠そうな声と共にレイがそう言うのだった。


「あー、今回の抹殺対象はトロイア国の息がかかった倭国の男だ」



倭国は「忍術」を使う国で、

「忍術」は魔力を使い自身の身体や武器に変化を与える術だ。


獣の様な爪に変えたり、

身体を金属のように固くしたり、

髪を針に変えたり、

眼を魔眼に変えたり、

武器に原初魔術のような5属性を付与したり出来るらしい。


特に魔眼持ちは強力らしく、出会ったら逃げろと教わったくらいだ。


「あー、自国の武器「刀」をトロイアの錬金術により強力な武器に仕上げたそうだ。これがきっかけで倭国とトロイアが同盟を結ぶようになったら不味い。その為刀を持った男を殺し刀を奪えとの事だ」


「その男がコトルにいる事が分かってるんですか?」

フィルがレイに質問をする。


「あー、正確にはコトルにはまだいない。倭国へは船を使わないと行けないんだが、トロイア国は陸地しかない国だからな。刀の男は港があるイオニア国に入って来たのだ。イオニアには複数港町があるが、トロイアから来て1番近い港街はコトルだ」


「昨日の段階では任務の内容が分かってなかったのですか? この内容なら昨日の段階でコトルに向かった方がよかったと思うのですが」


「あー、リベラからコトルには8時間かかる上に対象は国境の街リベラで昨夜1泊している。そもそもコトルの領主には話が通っていて、コトルについてもその男は船に乗れない」


「男についての情報伝達が早いですね」


「情報を共有できる魔道具があるからな、

もともとその男を抹殺しようとしている中で対象がイオニア国に入ってきたんだ。そりゃ情報伝達も早くなる」


(その男は自分が狙われるとは思わなかったのかな?それとも狙われても大丈夫と思ったのか........)


「あー、ちなみに本来ならフルメンバーで挑むような任務ではないが、フィルの初任務だからな。今日は特別だぞ。あとこれも装着しろ」


白を基調とした、涙を流しながらも口元は笑っている仮面を渡された。フィルは言われた通りに仮面を着ける。


地下から出て、城を出て歩いていくと色々な人間からギョッとした目で見られ、ざわめきが生まれる。


「........想像通りですが、目立ってませんか?」


フィルが聞く。


「そりゃ目立つっすよ、俺達が動くってことは誰かが殺されるってことと同意っす!それは任務によっては国民の誰かのこともあるっすから」


「暗殺の時は変装するんですか?」


「あー、そうだな。任務によっては変装もする。見せしめとして殺す時は変装はしない」


「それに私達の部隊は有名だから騒がられるのよ。仮面の表情と抹殺部隊という性質から死の涙って呼ばれているわ」


「そうなんですね........死の涙ってイオニア国の中ですとどれくらいの強さなんです?」


「国宝魔術師の強さもピンキリあるけど、戦闘力だけなら私達は同等クラスと言われてるわ。任務で国に仇なす国宝魔術師を殺すこともあったけど、その時は全員で確実に仕留めたわね」


「死の涙は国に仇なす者や不利益になる者を殺す集団っす。国宝魔術師や魔術騎士団の人間も国に仇なすならその対象になるっす。その他の人間なら大抵は1人で余裕で殺せるっすよ」


「あー、魔術騎士団の団長、副団長は中々強いぞ。戦ったことはないがな」


「圧倒的に強い者がうちの部隊に配属されるの。だからうちの部隊の隊員より強い人間はイオニア国にはほとんどいないわ」


「あ、あとアーノルド国王陛下は、色々なダンジョンを攻略した強者だって話っす!」


(いつの間にか実力としては大分上位の立ち位置にいたようです........しかし、国王はともかくとして、国宝魔術師と魔術騎士団の団長と副団長ですか。どれくらい強いんでしょう........)


そして王都レライアを出ると


「あー、こっからは走るぞ、馬なら楽だが馬よりも足に魔力を込めて走った方が早い。訓練にもなるし........馬も可哀想だしな」


レイがそう言うと、部隊は時速40kmくらいで走り出す。勿論馬の全速力はこれよりも早く、時速60kmくらいは出る。しかし馬だって疲れる。


2時間も全力で走らせれば心臓に負荷がかかり、死んでしまう事もあるくらいだ。人間は限界を超えて走り続けたりは普通しないが、馬は限界を超えても走れてしまう。その為馬での移動は死の涙はしない。


もともと動物の中で人間は長距離を走るのが1番優れている生物である。原始人はそれこそ走って追いかけ続けることで野生の動物を疲れさせ、疲れた所で仕留める。そんな狩りをしていたくらいだ。


「コトルまでは大体200kmってところよ。途中休憩したりはするでしょうけど、足に込める魔力は最低限にするのよ。コトルについたらヘトヘトで対象を殺せませんでした。なんてことにならないようにね」


アーシャがフィルにアドバイスをする。


体格や体調、携行品の重量や道程の環境によって左右されるが、一般的に徒歩の移動速度は、時速4~6kmであると言われている。


1日の歩行距離は、食事・休憩をを除いて8時間、30kmを距離の目安とすることが多い。しかしこの抹殺部隊は武器等を持った状態で時速40km程で軽く走ってみせる。そのことを考えると全員が異常者なのが分かる。


「あとこの制服が身体の温度管理をしてくれるから走ってても結構心地いいわよ」


(........この制服売ったらいくらするんでしょう? 訓練生の時のことから考えるといきなり待遇が良すぎて怖いですね)


「それだけこの部隊は強いし貴重な人材なのよ」


アーシャはフィルの考えてることを予想出来たのか、そう言うのだった。


そんな会話をしながら部隊は走っていく。

言うまでもなく、仮面をつけた黒装束の人間達が猛スピードで走る姿は異様な光景だった。


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