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拝啓異世界の皆様へ  作者: ポプラ
第一章 魔物使い
3/43

3 実力は派手に豪華に見せつけよう

 少年が右手を突出し、バルトは腰にある剣を鞘ごと抜いた。


「おいおい、ふざけているのか」

「こっちはいつでも大真面目だぜ」


 バルトは呪文の詠唱をするわけでもなく、ただ右手を前に突き出した少年を不思議に思ったようだ。

 少年は黒髪黒目、中肉中背。始まりの街では見ない顔だ。スキルもステータスも知らない田舎者である可能性は高い。そんな人間ができることと言えば魔法だけだと思ったのだが。


「仕掛けてこないならばこちらから行くぞ!」


 考えても埒が明かない。そう思ったバルトは基本の構えの斬撃を放った。Dランク冒険者の平均的なスピードの剣技だ。剣は鞘の中にあるし、最悪頭に直撃しても死にはしないと考えたに違いない。


「甘いぜ!」


 しかし、剣は少年に当たらなかった。

 回避や詠唱をした様子はない。迎撃したのだ。不可思議な力によって。


「俺の意思に反応してくれて助かったぜ。実は呪文限定で効果がありまーすとかだったら危なかった」

「何をふざけたことを。次、行くぞ!」


 バルトはもう一度剣を振るった。今度は上から振り下ろすと見せかけて横から払う技だ。

 魔法型の冒険者ならCランクでも目で追うことはできないだろう。


「さあ、どうなる!!」


 ガキンッ!!

 乾いた金属音がギルド内全体に響き渡った。そしてバルトは見た。少年の右手から、現在魔族の中で一番厄介とされている『ドラゴン』そっくりの影が現れたことに。


「危ねえな。それ、新米冒険者に向けていい技じゃねえだろ。まっ、いいけどさ。それより、今度はこっちから行くぜ」

「貴様、本当に人間か!!」


 バルトは鞘を投げ捨てた。そして腰を落とし、剣を斜めに構える。


「待てバルト! スキル何て使ったらあのガキ死んじまうぞ」


 バルトのパーティの内の一人が声を掛けるが止まらない。バルトの剣がだんだんと熱を帯びていき、赤く染まった。バルトの汗は剣に触れる直前に蒸発した。


「さっき言った通り俺から仕掛ける。出てこいドラゴン。そのまま剣を吹き飛ばせ」

「黙れ!! 今ここで、その実力を試してやる」


 少年の右手から鱗を持った化け物が実体を持って飛び出した。そしてバルトの灼熱の剣とぶつかる。

 一瞬だけ力が拮抗し、パキンと金属音が響いた。


「俺の勝ちだぜ」


 バルトは音と言葉を理解する前に壁に激突して気絶した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「やっと、勝ったぜ」


 火剣のバルトだっけ? あいつは強かった。熱した剣が折れたとき、俺の方にこないか心配したけど幸いにも無人の方向に飛んで行った。

 途中の剣捌きも早すぎてみれなかったけどドラゴンが自動で追尾してくれてよかった。

 でも、何で最後は実体化したんだろう。今はもう消えているし。


「嘘だろ。Eランクにすらなっていない子供が、Cランクのスキル持ちに勝ったのか」

「それより見たか。あいつ、一瞬だけドラゴンを召喚していたような」


 あちこちからざわめく声が聞こえる。さっきから気になっていたけどランクとステータスって何だろう。ゲームみたいなものかな。


「すみません」

「ひっ」


 青髪の受付嬢に話しかけたら怖がられてしまった。いくらなんでもその対応は酷くないか。


「聞きたいんですけどランクとかステータスってなんですか」


 そう言うと受付嬢は怯えた顔から驚愕の顔に変えた。


「そんなことも知らずに冒険者になろうとしたんですか。冒険者にはランクと言うものがあってE~Aまであります。初めはEランクで依頼をこなすとAランクまで上がります。例外として国のお偉いさんに認められるとSランクになるんですがまあ、ほとんどないと言っていいでしょう」

「そうなんですか。それで、ステータスと言うのは?」

「攻撃力、防御力、魔力、素早さを数値化したものです」

「HPとかMPは無いんですか?」

「へ? エイチ……何ですかそれ」

「何でもないです」


 首を傾げられてしまった。なんだ。全てがゲームの様にはいかないんだな。まあ、気絶とかもあるし、魔力も気合みたいなものだから数値化できないのかもしれない。


「おい、坊主。これを受け取れ」


 突如横から硬貨の入った袋を渡された。いったい誰が?


「俺たちはさっきの男の仲間だよ」

「襲われたんじゃ敵わねえし金は渡しとく」


 どうやらお金を渡してきたのはさっき戦った男の仲間みたいだ。仲間は気絶している男に肩を貸している人も含めて四人。そうか。パーティは四人ぐらいで組むものなのか。


「ありがとうございます」

「それじゃあな」


 男たちは逃げるようにその場を後にした。


「あ、これお金です。冒険者登録してください」


 俺は受付嬢にお金を渡したところで気が付いた。

 受付嬢の額に青筋が浮かんでいる。

 男たちが逃げるように去った理由がようやく分かったような気がした。


「手数料は受けとりました。名前を教えて下さい」


これブラックリストとかに乗る奴だ。でも名前を教えないと登録できない。くっそ最後の抵抗だ。偽名にしよう。


「リュートです」

「はい、登録できました。あなたは今日からEランク冒険者です」


俺はファンタジーな生活の第一歩を踏み出した。

おまけ

冒険者の強さ指標 (相性非考慮)

E(一般人)<D<<C<B<A<ドラゴン=S<魔王軍幹部

つまりバルトさんはそこそこ強い側だったのだ。

次回、パーティ作成


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