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太陽と月  作者: 高槻博
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男らしさなしからぬ男らしさを持つ女

不運が続く体育祭で僕に1つ目の試練が訪れた。八雲くんが選手として走り、雨宮さんが八雲君のお題の借り人として来た以上、僕が借りれる人は彼女or観客に絞られた。今までの題材から見るに友達を連れてる人か観客を連れてる人の2択だ。僕と同じレースとなった恩田くんは僕への敵意から条件さえ合えば間違いなく彼女の元へ向かうだろう。僕としてはそれを阻止しなければならない。まぁもし僕のお題が観客の人を連れてくるものだったらどちらでもいいんだけど。そんな自分勝手で都合の良いことを考えているから不運がのしかかるんだろうと思った。


呼称されてからリレーのレーンに着くまで恩田くんとの会話はなく、特に絡んでくる様子もなかった。何事もなく、スタートのピストルがなり、僕はこのレースの明暗を分けるカードを1枚とった。そこには幸か不幸か「高校に入ってから最初にできた友達。」と書かれていた。僕の中のそのお題の模範解答は間違いなく彼女だ。そこに少しの嘘もない。雨宮さんも八雲くんも彼女がいたからこそ仲良くなれたのだから。少し考えたあと僕が彼女に目を向けると彼女と目があった感じがした。そして僕は彼女に向かって走り出す。けれどここは僕の予想通りで僕より早く、恩田くんが彼女の方へ走っていた。遥かに早く僕より到着した彼は彼女に向かって何かしらの交渉を行っている。普通なら呼ばれたら即座に反応し、走り出すものだけどそうはならなかった。僕が恩田くんに追いつき、2人の会話が鮮明に聞こえるようになる。


「月、お願いだから一緒に来てくれ!」


「だからちょっと待ってって!私は太陽くんと走りたいの!太陽くんのお題に私が適してなかったら走るから!それが嫌なら他当たってって!」


最悪だ。僕の考え得る中でこれ以上最悪の展開はないと思った。


「あー!太陽くん!遅い!遅い!日も暮れちゃったよ!はーやーく!」


彼女はお祭りという謎のテンションからか言葉にならないほどテンションが上がり、絡み方が中年の酔ったおじさんになっていた。


「それでそれで!お題は何?」


「なんでもいいでしょ。」


「んじゃ、行こっか!」


「あ、うん。」


彼女は僕の手を強引に引っ張って走り出した。


「なんでわかったの?」


「ん?勘だよ。なんか目があった気がした!」


お題も聞かず勘という不確定要素でこんなに強引にいける彼女が男らしいと思った。


「よーし!このままゴール突っ切るよ!」


「あ、ちょっとストップ。」


「なになに!」


僕は無言で2つに折られたお題の紙の下半分だけを見せた。


「えーーー!お姫様抱っこ!?」


僕も彼女の元に走っている時に気づいたのだが、どちらかがどちらかをお姫様抱っこしながらと補足で書いてあった。僕は運営に対し、どんだけふざけた補足をつけるのだろうと不満を抱えた。


「よし!どんとこい!」


彼女は意外にも両手を広げて準備万端だった。だけど頰の色には見覚えがあり、雨宮さんに負けじと真っ赤だった。

僕は彼女の首のあたりと膝のあたりを持ち上げた。


「重っ。」


僕が咄嗟に思った心の中の声が言葉になっていた。


「重っ。ってなに!このデリカシー無し男!」


僕の囁きとは異なり、彼女はグラウンド全体に響き渡る声でそういった。その瞬間観客や僕らを知らない生徒からは歓声と笑いの声が聞こえた。僕はそれらの声を背にノロノロとノロノロとまたノロノロと走り出した。


「遅い!なにしてるの!1着になれないよ!」


僕の先にいる他のクラスのペアーを指差して彼女はそう言った。


「もうこうなったらなりふり構ってられないね!降ろして!」


彼女の謎の発言に首を傾げたい所だけど、彼女の謎の気迫に押し負け言われた通り彼女を降ろした。すると彼女は僕の背後に回った。


「まさかじゃないけど。」


「ご名答!そのまさかだよ!恨むなら非力な自分を恨んでね!」


彼女は僕を軽々と持ち上げ、全速力で走り出した。


恥ずかしい。その一言だ。


全速力で走る彼女はミルミルと前のペアーを追い上げ、ゴールしてみたらぶっちぎりの1位だった。周りからは「いいぞー!謎の怪力少女〜!」「もやし少年ドンマイ!」など讃えられた??。


「無茶なことするね。」


僕が彼女にそういうと「私はご存知の通り負けるのが1番嫌いなの、だけど私のことくらいは抱っこできるようになってね?笑」と笑いながら言われた。

それから先に走り終えていた雨宮さんと八雲くんにも迎えられたが、どちらにも散々馬鹿にされた。雨宮さんにはお題の内容など聞かれたけど、僕は頑なに答えなかった。


「そーゆー雨宮さんはなんのお題で八雲くんから借り人にされたの?」


「さぁ?聞いたけど教えてくれないんだよね、どうせゴリラ女とか貧乳女とかその辺じゃない?」


僕がいうのもなんだけどそんなデリカシーに欠けるお題はないと思った。


のちにゴールした恩田くんは僕らをひどく睨み、それは行事ごとには似つかわしくない表情だった。


「なにあれ、感じ悪。」


それに対して雨宮さんは1人怒りをあらわにした。

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