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太陽と月  作者: 高槻博
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後ろ向きな体育祭開幕します。

全校生徒の前に校長が立ち、長々と話し続けること30分以上、すでに僕は、いやほぼ全校生徒は疲弊していた。その校長の話の95%は聞き流していた僕だけど残りの5%で聞き取った言葉の1部分に「風が吹いているとはいえ、気温は高く、まだまだ熱中症になる恐れがあるので各自水分補給をこまめにとりましょう。」というのがあった。生徒のことを考え、熱中症にならないように善処しようとするならばこんな無駄な話をダラダラとしない。それがあくまで保護者の前での常套句であることをひどく痛感した。ジッとしていることが苦手な彼女は僕の隣でウズウズとしていた。長時間立ちながら話を聞いているので、地面がグラウンドで砂ということを差し引いても今すぐ座りたいという気持ちになった。そんなことを考えていると校長先生の話も終わりにさしかかっていた。


「少しだけ長くなってしまいましたが、より良い体育祭にするために節度を持って全員で盛り上げていきましょう!」


校長先生のキメ顔から放たれたそのセリフに誰もが思った。


何が少しだけ長くなってしまいましたが、だよ。と。

周りからは「本気で長く話したらどうなんだよ。」「風でカツラ外れろ。」などと散々に言われていた。


選手宣誓等も終わり、開会式終了の合図がでるとみんな各自、自分たちの椅子の場所へと戻っていった。椅子にたどり着くとみんな「はぁー。」と大きくため息をついた。


しかしそんなみんなのため息や疲れは体育祭競技が始まると嘘のように晴れ、これ以上ないくらい盛り上がっていた。


知ってる人が出る競技なら多少なりとも見ていて楽しいんだろうし、同じクラスの人くらいわかっていたら心の中で応援できるのだけど、知らない人ばかりなのでそう簡単じゃなかった。


「日向くんは午前中何出るの?」


基本的にクールキャラの雨宮さんはどうやら前線でこれ以上ないくらい声を上げ声援を送っている彼女についていけなかったようで椅子に戻ってきていた。


「借り人競争と綱引きくらいかな。」


「借り人競争は嫌いな人とか、好きな人とか出たらめっちゃ迷うよね。」


選択肢のカードに嫌いな人なんて選択肢を入れる人はいないだろうけど、もしいるのならそれは誰に声をかけるか非常に迷う。


元来僕は人を苦手になることはあれぞ、嫌いになることはそうそうない。だって深く関わってない人に対して、苦手な印象を持つことはあっても嫌いと確定づけることはないからだ。けれど僕はこの場合、引いたカードの中身が相手にバレないのなら、とりあえず恩田くんを呼び出すだろうと思った。


「好きな人ってなって迷ったら私を引っ張ってくことを許可してもよろしくてよ?」


雨宮さんは冗談風にお嬢様口調でそういった。


「その場合は周りにカードの中身が知られないようにしないとね。」


「ん?そうだね、特に月には。」


「彼女?彼女には知られても大丈夫でしょ。」


「んー、まぁ日向くんに理解しろって方が難しいか。うん。そうだね。」


含みを持った言い方で自己完結されると僕が反応に困る。


「なんていうか、好きな人というカードを引いて雨宮さんを連れて行った日には身の程を知れとか、調子乗ってるとかいわれて、男子生徒に目の敵にされそうだよ。雨宮さんモテるからね。」


「あらまぁ、天然褒め上手だこと。笑」


またしても謎のお嬢様言葉を放ちながら雨宮さんは静かに笑った。


前線でワイワイと盛り上がってるのと比べると全く比にならないけど僕ら2人も少しだけワイワイと盛り上がっていた。


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