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太陽と月  作者: 高槻博
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カッコよすぎると彼女と彼と彼女

僕と彼女の謎の喧嘩?も終わり、彼女も僕も1日の欠席を挟んんで満をじして登校する。

まず僕が初めにしなきゃいけないのは八雲くんへの謝罪だ。彼には本当に悪いことをしたと思っている。彼の善意を僕は自分が今は話したくないという自分勝手な理由で何も告げることなく逃げ、部活で疲弊する彼を夜中まで待たせてしまった。雨宮さんにも同様に謝罪をしなければと思った。


「おーい!太陽くん〜!!」


人通りの多い横断歩道越しに彼女は大きな声で僕を呼んだ。僕だけではなく、僕の周りを歩いていたサラリーマンだったり、OL、他校の高校生もあまりの声の大きさに後ろを振り向いた。元気なことは大きに結構だが、時と場合、場所は選んで欲しいもんだ。この時僕は知らないふりをするという最適解を導き出し、彼女の声で振り返った人たちとなんら変わらない態度で前を向き、歩き出した。1歩また1歩と歩いているよサラリーマンでもOLでも他校の高校生でもない、素早い足音が耳に響く。僕はその音から逃げるように速度を上げる。こんなところでいきなり走り出したら悪目立ちして仕方ないのでとにかく早歩きで歩き続けた。しかしこの足音は歩きの速度の音じゃなく、とんでもない速さで僕を追撃してきた。振り返って確認することはしなかったけれど足音の正体は言うまでもない。僕も観念してスピードを普通の徒歩のスピードに切り替える。それに呼応して追撃してくる足音も遅くなるかと少しは思ったけれど、そこはさすがブレーキ機能が仕事をしていないだけはある。なんら変わらない足音で、いやなんならもっと速い足音で追撃してきた。予想の範疇だったけれど僕の予想を超えたのはこの先だ。みるみる近づいてきたその足音はスピードを緩めることなく、僕に突撃してきた。


「おはよう、太陽くん?」


不敵に笑う彼女はやってやった顔だ。


「おはよう。朝から何するの。」


「それはこっちのセリフ!朝から無視される身にもなって!」


それなら朝から人通りの多いところで叫ばれる身にも、朝から突撃される身にもなって欲しいくらいだ。


「ごめんごめん。」


彼女が突撃してきたせいで僕は予想以上に周りの目を集めてしまい、結果としては最悪になってしまった。


「おはよ、日向くん。」


「おはよう雨宮さん。」


雨宮さんはどうやら彼女のスピードには合わせてなかったようで遅れて登場してきた。物事を後回しにするのは良くない、これは僕の人生の教訓だ。早めにもう1度例のことを謝罪することにした。


「雨宮さん昨日は本当にありがとう。」


「もう!いつまで引きずってるの?私も悪かったしおあいこでしょ?しみったれた話は昨日で終わり。OK?」


「うん。わかった。」


「え!!昨日雫と太陽くんなんかあったの?」


「ん?月には内緒だよ?ね、ひなーたくん?」


「もちろんだよ。」


僕らがふざけて彼女を除け者にすると彼女は「この浮気者!!!」と言って僕のことをボンボンボンボン叩いてきた。浮気者と言われる意味も叩かれる意味も全く理解できないけれど、ここは僕のスルー能力でうまく回避した。

学校に着き、教室に入るとすぐさま八雲くんの姿を探したけれど、まだ朝練から帰ってきていないようだった。

八雲くんは予鈴スレスレで教室に入ってきたので朝礼が終わり次第、謝罪に出向いた。


「八雲くん昨日と一昨日の件、色々雨宮さんに聞きました。改めて本当にすいませんでした。」


「お、日向おはよ。別に謝ることじゃねーよ。俺も1回連絡してからにすればよかったなしな。まぁ元気そうで何よりだ。楽に行こーぜ。」


彼の言葉に胸がスッと軽くなった、僕にはなく、この先も持つことはないであろう、八雲くんのかっこよさに僕はただただ尊敬の意を表したいと思った。はたから見たら臭い台詞だったんだろう、雨宮さんはそれを見ていたようで、彼の行いを見逃さない。その目はまるで水を得た魚のようだった。


「なになに、ハゲのくせにカッコつけちゃって笑。楽に行こーぜ。あー私も言ってみたい。言っていい?言っちゃうよ?」


「あー!もうやめろ!散れ散れ!」


「えーいいじゃんツルピカ親分♩」


「なんかあだ名増えとるわ!次言ったらタダじゃ済まさねーぞ笑」


「まぁまぁそんなこと言わないでよ。楽に行こーぜ。あ、言っちゃった爆笑。」


八雲くんと雨宮さんの会話は雨宮さんが主導権を握り、完全に会話を誘導され、楽に行こーぜと言える流れに持ち込んでいた。


「この貧乳女め!お前だって昨日日向のこと食べるんじゃなかって勢いで怒ってた癖に!この鬼ババァ!」


ボコん。


「ん?なんか言った?笑」


「何もおしゃっておりません。」


八雲くんも負けじと雨宮さんをいじろうとしていたけれど雨宮さんの壁パンチと冷たく笑いながら放った一言によって、あっさり屈服した。やはり女子は怖い。その中でも雨宮さんは怖いと思った。

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