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太陽と月  作者: 高槻博
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謝罪をし続けた日、謝罪をされ続けた日

半ばパシリにされた僕は彼女を含む子供達が待つ自分の家へ帰宅する。明らかに意味深な状況だけど嘘1つない、状況がこれだ。


半分呆れながらも自宅の家を開ける。


「おかえりなさい、あ、な、た、♡」


僕を迎えたのは彼女を含めて7人により気色の悪い出迎えだった。内心引いた手前、彼女を除く子供達にはそんなところ見せるわけにもいかないので、優しく「ただいま。」と一言帰した。


「ほらね!喜んでくれたでしょ?」


彼女は子供達にとってやってやった顔で語り出した。


「はい!師匠!」


僕が出かけてるものの数十分の間に彼女は子供達を従えていたようだ。


「そもそも喜んだ覚えなんてないんだけど。」


そういうとあからさまにシュンとした顔を見せる小学生を目にし、水を差したと後悔する。


「うそうそ、冗談だよ。ほら、おやつ買ってきたから食べよ。」


「もう太陽くんったら素直じゃないんだからーー!」


僕は彼女が遊園地で学校の先生になりたいと言っているのを思い出した。だけど現状彼女に先生は無理だろうと思った。特に小学校の先生には。おそらく彼女はなめられるだろうと僕は予想した。


「どう私のこの慕われようは?私は小学校の先生に向いてるんじゃないかと確信しちゃったよ!」


僕の考えとは裏腹に彼女は全く逆のことを考えていた。

このポジティブシンキング少しは見習いたいものだ。

彼女に関心の目を向けていると子供達が僕に対して、いや、おやつに対して熱烈な視線を送ってきていることに気づいた。そんな微笑ましい視線に負け、僕はすぐさまおやつを用意した。


「はい。どーぞ。」


「いいんですか?」


なにを今更と心の中では思ったけれど「どうぞ。」と優しく言った。


「いただきます!!!」と声を揃えて、手を合わせ行儀よく食べる小学生はそこらの高校生より知能指数が高いんじゃないかと思った。


「おいしい?」


僕が小学生に対してそう問うと彼女を含めた全員が「うん!」と気持ちよく答えてくれた。そんな気持ちのいい返事に対してさらに甘やかしたくなったダメな僕はジュースを出そうと冷蔵庫に足を運ぶと彼女も一緒にこちらにきた。


こちらに来るなり「はい!」といってお金を渡してきた。


「??」


「これおやつ代と買い出しありがとう代!」


お金を出すなら買い出しに行くときに出せばよかったのに。と思った。


「太陽くんのことだからお金ならもっと早く出せばいいのにとか思ってるかもだけど私の考えとしてこういう時は男の人を立てる!だけどお金はしっかり払う!なの!だから受け取って!ほら!」


世の中の常識としたらこういうのは普通なのかもしれない。だけど僕が男だからといって僕だけが払ったように見せて払ってもらうなんて真っ平御免だ。それならお金を受け取らない方を選ぶし、受け取るなら子供達にもちゃんという。


「受け取らないよ。それで君が何かしら嫌な気持ちになったり、不満なら今度機会があったとき僕にお菓子でも買ってよ。」


そういうと純粋無垢な彼女は笑顔を見せ、グットポーズをしてきた。ジュースを出し、おやつを食べ終え、時刻が夕方ごろになったので子供達を帰そうとするとベランダから侵入してきたことによって靴がないことに気づく。だけどそんなの気にしないのが子供。裸足で隣の玄関まで向かっていこうとした。子供達にとっての小さな小さな悲劇はそこから始まった。僕の家の玄関を開けると、杏ちゃんの母親がちょうど買い物から帰ってきたところだった。杏ちゃんの母が杏ちゃんを問いただすと一片の嘘なく、ことの事情を話した。話し終えると、僕と彼女に深く深く頭を下げ、「本当にご迷惑をおかけしました。また遊んでください。笑」と子供達を連れ、帰っていった。後に聞いた話だけれどこのあと子供達はそれぞれの母親にこっぴどく怒られたそうだ。こうして謝罪ばかりし続け、謝罪ばかりされ続けた日は幕を閉じた。

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