冗談半分と冗談という言葉の違い
声にならない声を出し、石化を図った彼女は微動だにせず、瞬き1つしなかった。
「ねぇ。」
呼びかけても彼女はピクリとしない。
「ねぇ。いい加減めんどくさいんだけど。」
それでも彼女はピクリともしない。
「次呼びかけて反応しないようだったら怒るよ。」
それでも彼女はピクリともしない。
「ねぇ。聞いてるの?」
「聞いてるよ!」
彼女は自ら石化をとき、何食わぬ顔で僕の問いに答えてきた。
「一体、どういう流れで僕の家に入ることになったわけ。」
「時は遡ること1時間前、、」
「そーゆーのウザいから手短に。」
「話し合った結果、家に入ることになりました。」
「極端すぎるでしょ。話し合いの内容や、過程を聞いてるわけ。君には微調整っていう機能が欠けてるわけ?」
「仕方ない。私の本気を見せてあげよう。私は公園のベンチで座っていました。すると、」
「嘘でしょ。寝てたよね。」
「え!!!なんで知ってるの!?!?」
「なんでもこーもない。見てたからね。」
「なんで見てたの!」
「僕の話は後でいいから、先に君が話してよ。」
「えー!じゃああとでちゃんと聞かせてね!」
「はいはい。」
「えーと、どこまで話したっけ?」
彼女の知能は鶏以下なんじゃないかと疑った決定的気瞬間だった。
「君が光合成と謳ってベンチで寝ていたところから。」
「え!それも聞いてたの!?なんで!!」
「話が全く進まないからそれも後にして。」
「はぁーい。それで私が光合成を図って寝てたら、女子小学生6人が来て、私の相談を乗ってくれることになったんだけど、私の相談は太陽くんを怒らせて嫌われちゃったって話だったのね。そしたら謝りに行こうってなって、どうせ許してもらえないよって私が言ったら、それじゃあちょっと捻りを入れてみようってことになって、考えながら、太陽くんの家にみんなで向かってたら、ここは私の家の近くダァ。って杏ちゃんが言い出して、それで太陽くんの家に着いたら、あ、私の家と一緒だ〜って杏ちゃんが言ったの。それでベランダから侵入して驚かせながら謝ったら許してくれるんじゃないかってなって、意外とすんなり隣の部屋に行けることがわかったから潜入を開始したの!そしたら太陽くんがいなくて、どうしようってなって、こうなったら帰ってくるのを待って帰ってきたら玄関の前で土下座してればいいんじゃない?ってことになって、この有様です!」
彼女は誇らしげにその長ったらしい説明をダラダラとした。ツッコミどころの多さに、僕は何から話せばいいか戸惑う。人が光合成をしていること自体謎だし、小学生に相談することも変だ。許してもらえないかもしれないからって捻りを入れて謝るという発想自体間違った方向に頑張ってしまっているし、捻りを入れた結果驚かせながら謝るという結果も怖い。挙げ句の果てに主人がいない家に居座り続け土下座を繰り出しているなんて変わり者の空き巣のようだ。様々な感情が入り混じったけど、一旦頭の中をリセットした。
「頭大丈夫?」
一度頭をリセットした僕が振り出した言葉はその一言だった。
「なにをををを!!」
「ごめんごめん。ちょっと直球過ぎたね。」
「まったくもう。太陽くんだから許してあげる!」
よし。じゃあ気を取り直して。
「いい頭の病院紹介した方がいい?」
「ツッコミ入れて欲しいんだよね?ネタだよね?私泣くよ?」
「ツッコミは入れても入れなくてもいいよ。そして半分ネタで半分本気かも。あと泣かれるのはごめんかな。」
「そーゆー太陽くんだってさ、怒ってもないっていうのに学校からいなくなっちゃうしさ、太陽くんも頭の病院行った方がいいんじゃない!!」
「僕もそういった意味ではおかしいかもね。」
「じゃあ一緒に行っちゃう???笑」
ノリノリで彼女は言うけれどそんなに楽しいところじゃない。それに冗談半分だと言いながらも本当にわかっているのか疑問に思うところがあった。彼女なら止めないと病院に行きかねない。
「君はまず不法侵入で警察に出頭するのが先だと思うけど。」
「ゲッ!そこはなんとか太陽様の慈悲をくださいませ。。」
「そもそも小学生にそそのかされるとか君が心配になるよ。いろんな意味で。」
「ちょっと私も自分のこと心配になっちゃった!」
会話もひと段落したところでとりあえずバレてないと思い続けていると小学生を中に入れようとする。何歩か歩き出したところで急にあることが心配になったので一応念を押しておくことにした。
「一応言っておくけど、警察も病院も冗談だから間違っても行かないでね。」
「私をバカにしてるのか!許してもらった以上警察には行かないし、病院も冗談だってわかってます!!!」
「うん。してるよ。」




