僕の考えと彼女の敬語と子供達の陰謀と言う名のイタズラ
「それで彼女はどこに連れてかれたの?」
「さぁ?あの様子だと遠くにはいってないんじゃない?月のあの感じだとすぐ仲直りできそうだし私は帰るねー」
「え?なん、あ、うん。」
なんでと言う言葉が僕の口からでてきそうだったけど雨宮さんだからここまで付き合ってくれたんだと常識を見つめ直した。
「さぁー疲れたから帰ろ!帰り?気をつけてね?特に家に入るときはね。」
「家に入るとき?」
「あ、なんでもないよ、ごめんごめん!」
意味深なことをいうだけいって雨宮さんは足早に帰宅した。なんだか違和感を感じた僕だけどそんなこと気にはしてられないと足早に家帰った。家の鍵を開け、扉を開けると彼女が正座をして座っていた。
「おかえりなさいませ。」
彼女は正座の状態で頭を下げ、まるで土下座をしているようになった。
「、、、、、」
バタン
僕は幻覚だと思い、1度扉を閉めた。1度深呼吸してからもう1度扉を開けるとまるで同じ映像が流れているかのように彼女は頭を下げた。
僕はもう1度扉を閉める。玄関にある表札を確かめ、自分の家だあることを確認する。
うん。僕の家だ。
意を決して扉を開けるとまたしても彼女が頭を下げて僕を迎えている。僕は彼女に押し切られる流れとなって「ただいま。」と言った。明らかにおかしい流れだったのにも関わらず1度流れに身を任してしまったもんだからツッコムにツッコメなかった。
「いつまでそこに座ってるの。椅子に座りなよ。」
彼女は1度頷くと椅子に腰をかけた。
「ツッコミどころは色々あるけど、とりあえず不法侵入だよ。」
「あ!!」
え、なにその、あ、は気づいてなかったの?天然なのは知っていたけどそういう次元の話じゃない。言い方を乱暴にするならただのバカだ。
「どうやって入ったの?」
僕が問いただすと彼女はベランダの方を指した。ベランダの方を見ると彼女といた女子小学生数名が隠れていた。
「まさか登ってきたりしてないよね?」
「杏ちゃんの家から来ました。」
「杏ちゃん?」
「太陽くんの隣の家に住んでる小学生です。あのおさげの子。」
「それで隣の家のベランダから僕の家に侵入してきたと?」
「はい。」
彼女は僕が怒っていると勘違いして完全に萎縮してしまっていた。勘違いしないで欲しいのは僕は怒ってない。怒ってるとしたら学校での騒動なんかではなくて、不法侵入したことに関してだ。そして僕自身のセキュリティーの甘さに対してもだ。
「あのさ、」
「ほんとにごめんなさい!学校でも勝手に怒って勝手にいなくなって、太陽くんは目立つこと苦手なのに騒ぎ立てちゃって。ダメだってわかってるのに我慢できなくて。」
僕が喋り出すのを彼女は遮り、全力の謝罪をしてきた。
「だからさ、」
「だからどうか嫌いにならないでください!」
僕の話をまったくもって聞こうとしないのか聞こえていないのか僕のターンがまるで回ってこない。
「とりあえず喋らないで。僕が話せない。」
僕がひと言そういうと彼女はわかりやすくシュンとした。枯れた花のように。
「まず、勘違いしていることだけど僕は学校でのこと全く怒っていない。むしろ嬉しかった。僕が知らない女子と踊ることを避けるっていう配慮があったんだろうけど君があそこまで僕と踊ろうとしてくれたことが。僕じゃ恩田くんに反論するなんて出来なかったからスッキリしたよ。君がいなくなった後、理沙さんと後藤くん?っていう人が僕のところに来てペア解消の案に反対っていう方に変えたって言ってきたよ。正直いうと僕からしたら反対意見に変えたところで結果は覆らないのに何してるんだろうって気持ちが優ったけど、渋々賛成に手を上げてた時より、2人は笑顔だった。それはまさしく君の功績だ。だから怒ってないよ。だからその敬語もやめて鳥肌が立つからさ。あともう余計な謝罪もいらないからさ、いい加減いつも通りの君に戻りなよ。そうでないとこっちも調子が狂うし。」
「うん!わかった!わかった!わかったよぉー!」
僕が言いたいことを言い終えると彼女はさっきまで枯れた花のように落ち込んでたのが演技なんじゃないかと勘違いさせるほどにみるみる元気になっていった。僕はその雰囲気に容赦なく水を差す。
「でもそれと不法侵入の話は別だよ。」
「ヴッ」
彼女は声にならない声を出し、石化したかのように固まった。




