公園でのひと時
「あれはなんの茶番なの?」
「わからないけどやっぱり彼女は普通じゃないよ。」
「どこの部分を指して言ってるの?ベンチで寝てること?ベンチで光合成してること?初対面であろう小学生にベンチで寝転がって人生相談してること?」
「欲張っていいのなら全部かな。」
面白おかしく話したけれど、あれは彼女の凄いことでもある。僕が彼女の凄いと思うところはその器量の大きさでもポジティブシンキングでもなく、人を寄せ付ける力だ。ただでさえ人を寄せ付けてクラスでも男女問わず人気の彼女が小学生まで集めたとなると笑うしかない。きっと僕があそこのベンチで光合成と宣い寝転がっていても声をかけてくる人はいないだろう。あそこに人が集まったのは彼女だからだ。僕らしくない理由であるけれど僕は確信していた。
「お姉ちゃんは大きいのにおバカさんだね!」
無邪気な瞳をしたある小学生が彼女にいった。
「なにをぉ!生意気言ってると食べちゃうぞ!」
彼女はベンチから立ち上がり両手を挙げながら爪を立て、よくある悪者のポーズになってみせた。
「だってそうでしょ?悪いことしたならごめんなさいすればいいんでしょ?」
誰もが知っている結論を導き出したある少女がそういった。それに乗っかるように他の女の子たちも彼女に問いかけた。
「そうだよ!ごめんなさいすれば許してくれるよ!」
ガヤガヤと色んな声が聞こえてまともに声が聞き取れなかった。
「皆の衆!静粛に!」
ウジウジとしていた彼女はベンチにあぐらになって座り、手を叩き小学生を沈めた。
「そう!ごめんなさいすればいい話なんだよ!でもみんなもあと数年したらわかるよ、大人になると当たり前の常識が身につく。だけどそれと同時に子供の頃できてた当たり前が少しだけしづらくなっちゃうんだよ!忘れちゃうんじゃなくて、しづらくなっちゃうの!」
「えー意味わかんなーい。」
僕も意味がわらかない。この意味がわからないは彼女のいっている意味がじゃなくて、この話を小学生にまじまじと話しているかをだ。
「たしかにそうだわ。月もいいこと言うね。」
眉間をよせ気難しい顔をしていると雨宮さんが感心したようにいった。
「感心してる場合じゃないでしょ。」
「そうなんだけどねぇ。もう少し聞いててもいいかなって。つまり月ふうに言うならば日向くんは大人になるにつれて得るコミュニケーション能力だったり、人との輪を置き忘れ、小さい頃は出来てたピュアな心だけは置いていってしまったわけだ。大人であって大人でない。それが日向くん。すごい!」
やはり今回の件のこと根に持っているんだろうか。雨宮さんにしては珍しく毒を持っている言い方を多くされている。
「あ、冗談だよ?」
「ほんとにですか。笑」
「ほんとだよ?」
「それは何よりです。」
雨宮さんは冗談といったけれど僕自身全くそう思えない。だって僕は大人になって得るものを拾い忘れており、だからと言って子供が持っている純真をもっているわけでもないのだから。
「ちょっといつのまにかいなくなっちゃったけど。」
僕が先ほどのベンチを見るとそこに小学生の姿も彼女の姿もなかった。
「どこにいったの?」
「さぁ?」
「いついなくなったの?」
「日向くんが悲しみに浸ってる最中に。」
「次からはもっと早く言ってよ。」
「御意。」
「まさか彼女が暴れて無理やり連れてったとかじゃないよね?」
「惜しい!」
僕は慌てて彼女を探し出そうと僕が隠れていた茂みから勢いよく飛び出すとわざと後付けしたかのように雨宮さんは「小学生に引っ張られていなくなったんだよ?」と言った。僕の反応を見て楽しもうとしたんだろう。そんな雨宮さんの策に僕はこれ以上ないくらいハマっていた。




