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太陽と月  作者: 高槻博
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小学生にしか相談できないこともある?

彼女の家に雨宮さんと向かっていた僕はふと彼女の誕生日の日に雨宮さんと彼女の家に一緒に向かったことを思い出した。あれから2週間ほどしかたってないけどだいぶ前のことのように感じてきた。


「あれ今日何曜日だっけ?」


「木曜?かな。」


「あーじゃあ私たちお巡りさんに見つかったら補導だね。」


「それもそれで貴重な体験だね。」


「お!日向くんにしては珍しいこと言うじゃん!」


「どういうこと?」


「日向くんならそれだけは嫌だから高校生の下校時間になるまで家で待機してよう。とか真顔で言いそうじゃん?」


「その気持ちがないと言ったら嘘になるけど、僕の中で立ててる優先順位に従ってるだけだよ。」


「その優先順位が日向くんらしくないって話。」


「なるほど。」


「それだけ月を心配してるってことなんだろうけどね。きっと月も喜ぶよ。」


「僕はドン引きされることまで視野に入れてるよ。」


「全く日向くんは鈍感だなぁ。」


「どういう話の流れで僕は土管になっちゃたわけ?」


「あはは笑わせないでよ。腹痛い。爆笑」


「僕は土管じゃないって言っただけなんだけど。そんなに笑うポイントある?そもそも土管扱いされてること自体不毛だと思ってるよ。」


「どうして土管になっちゃったかなんて私が知りたいよ笑」


自分で土管と言っておいて、自分で笑って、土管という理由さえもわからないなんて謎だけが深まっていった。僕からしたら名付け親の雨宮さんが知らないなら僕に理解なんてできるはずがない。


「さぁもう着くよ。紐で縛られたくなかったらしっかりしてよ!」


「え、紐で縛るのは僕が逃げたらでしょ?」


「さぁ?女っていうのは嘘ついてお胸を大きくするのである。」


「じゃあ雨宮さんはこれ以上ないくらい正直者じゃないか。」


「それセクハラだよ?」


「今のはツッコミを入れてくれっていう気持ちが伝わってきたんだけど。」


「やっぱり日向くんは面白いね!つまり貧乳は嘘をつかない。貧乳こそ正義だよ。」


「全国のでかい女子に謝ってきた方がいいんじゃない?」


「大丈夫。この世に悪は栄えないからね。」


「話が大それた方向に行ったね。」


彼女の家の前に着き、インターホンを押そうとすると彼女の母親がでてきた。


「あら、雫ちゃんと太陽くんじゃない。どうかしたの?」


そういうと真っ先に雨宮さんが口を開いた。


「おばさんこんにちわ!月って今いますか?」


「あの子今日はなんとなく休みたいって言ってて、月がそんなこと言うなんて初めてだから1回くらいそういうことあってもいいかなと思って休ませてあげたけどどっかに出かけちゃったわよ。てっきり2人と遊んでると思ってたんだけど。」


そんなフワついた理由も深く詮索しないあたりが血の繋がりを感じた。


「ありがとうございます!今日は失礼します!では。」


「いつでも遊びに来てちょうだいね。」


その言葉を最後に僕と雨宮さんは頭を深く下げ、その場を後にした。僕的に驚いたのは彼女の母親が僕は私服で学校に行ってないこと雨宮さんはジャージ姿で学校に行ってないことに全く触れもしなかったことだ。そこには彼女の母親なりの気遣いがあったのかもしれないも僕は察した。


探すあてのない僕たちはとりあえず彼女捜索を始めた。近くのスーパーを探したり、図書館を探したりしたけど彼女の姿はなかった。ダメ元でスーパーの裏にある空き地にきてもみたけれど、やはり姿はなかった。雨宮さんは空き地によくある土管の中を覗き込む始末だ。


「流石にそこにいたら驚きだよ。」


「いや、月のことだから1人でかくれんぼでもしてるのかなって。」


「そんな一面もあるなら僕は彼女のことを永遠に理解できなさそうだよ。」


「さすがに普段はそんなことしないけど今はウジ虫モード入ってるからね。これも全部日向くんのせいだよ。」


雨宮さんは冗談って言ったんだろうけど、僕なりに重く受け止めていたということもあって、心に大きなダメージを負った。


「冗談だよ?」


「知ってるよ。」


空き地ですらダメ元で来たのに他に探すあてもない僕らは足を止めた。なんとなく視線を泳がしているとランドセルを背負った小学生の姿が目に映った。いつのまにか小学生の下校時間になっていることに気づき時間が経つのが早いと感じた。


「小学生かわいいね。」


雨宮さんは僕な視線の先にいる小学生に気づいたようで僕に問いかけてきた。


「うん。かわいいね。僕が小学生の頃とかもっと無愛想だったよ。」


「なにそれ、ちょっとみてみたいかも。」


「企業秘密だよ。」


「それよりなんか小学生集まってるね。」


「そうみたいだね。」


僕らの視線の先かにいた小学生6人はは空き地の向かいにある公園のベンチで何かを囲むように立っていた。僕らは気づかれてないように近くを覗き込むとそこには衝撃の光景が目に入った。


彼女がベンチで横になっていた。


これには雨宮さんも驚いたようで開いた口が塞がらない状態だった。この時の僕も相当間抜けな顔をしていたと思う。咄嗟に茂みに隠れた僕たちは小学生の会話を聞いていた。


「ねぇねぇお姉ちゃんは何をしてるの?」


「光合成をしてるんだよ。」


「光合成はね、簡単に言うと元気を溜めてるの。」


「お姉ちゃん元気ないの?」


「そうお姉ちゃん元気ないの。」


「私たちがお悩み相談してあげます!なんでも話してください!」


小学生に気を使われている彼女をみて吹き出しそうになったけれど、あんな女子高生側から見たらただの変人か不審者でしかないと思った。


「お姉ちゃんはね、大事な友達を傷つけちゃってショックを受けてるの。」


このとき僕は思った。雨宮さんも思っただろう。本当に小学生相手にお悩み相談始めちゃったよ。と。

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